おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2025.04.18column

時代劇は死なず

夕べFacebookで、16日に観てきた映画、デラックス版『侍タイムスリッパー』のことを書きました。SNSをされていない方にも読んでいただければと思い、コピペして以下に載せます。

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昨日は9時10分開始の映画『侍タイムスリッパー』のデラックス版を鑑賞しました。引っ越しのドタバタで劇場版を見逃していたのでちょうどいい機会でした。京都映画賞の授賞式で安田淳一監督が城陽市内でコメ農家をされていることを知って、実家と同じだと親しみを覚え、「これは観なければ」と思っていたことでもあり、劇場版より長い作品を大きなスクリーンで観ることができて何よりでした。そして期待通り、大変良い作品でした💗エンドロールに、いったいぜんたい何回安田さんの名前が出てきたことでしょう。予算がない中、監督、脚本のみならず一人何役も背負って大変だったでしょう。でも、こうしてみんなに支持されて超特大のハナマルですね💮

「『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』(2016 年)をつくられた中島貞夫監督に見せてあげたかったなぁ」と思いました。どんなに喜ばれたことでしょう。否、先生の魂も劇場のどこかでご覧になっていたかもしれません。主役の山口馬木也さん、良かったです。そして殺陣師関本役の峰蘭太郎さんも良かったです。昨年入れ墨絵師毛利青二さんの展覧会をしたとき、同じ富山出身だと知りました。役で毛利さんに背中に絵を描いてもらった時の写真をブログ /blog/column/24633.html で掲載したところ、人づてにお聞きになって、とても喜んでくださり、そのお礼を言いにわざわざ再来館いただいたとてもまじめで誠実な方です。
映画の中で主人公の新左衛門が往年のスターから相手役に指名されたのを断ったと知った師匠の関口は「斬られ役の人々の中に一枚看板を願わぬ者はいない」というような意味の言葉をいう場面を観ながら、昨年喜んでくださった峰さんを思い浮かべていました。峰さん、いい演技でした。きっと観客の皆さんの記憶にも刻まれて残るでしょう。
安田監督、名作を作ってくださって本当にありがとうございました👏👏👏
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再掲載しように思ったのは、1通の哀しいメールを受信したことが大きいです。それは、大阪芸大映像学科卒業生V80の中島康さんからのもので、卒業生のV6伊藤信幸さんが、かねて患っていた悪性リンパ腫により、治療の甲斐なく3月28日に永眠されたという知らせでした。闘病中だと聞いてはおりましたが、こんなに早く逝ってしまわれるとは思ってもいなかったので、残念で仕方ありません。

彼が大阪芸大1年の時に撮ったドキュメンタリー映画『浪人街・予告編~1976年夏 東映京都撮影所』は、当館で2年間週替わりで上映し続けた「First Pictures Show1971-2020 」でも上映しましたが、先駆けて2019年の京都国際映画祭でも10月19日に京都シネマで上映しました。その年、9月27日に伊藤さんが来館され、連れ合いと一緒に懐かしい思い出話に花を咲かせていました。それから6日後、「上映会のお知らせを書くので、可能なら何か文章を寄稿してほしい」といつもの無茶ぶりを発揮してお願いしましたら、さっそく書いて送ってくださいました。その折のことは2019年10月4日付け新着情報で書いているのですが、伊藤さんのことを偲んで、彼が送ってくださった文章とスチール写真を再掲します。

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『浪人街・予告編~1976年夏、東映京都撮影所』の頃 43年前の夏、 1976年の京都は相変わらず暑かったです。 その年の春に大阪芸術大学に入学した私は、当時キネマ旬報で 竹中労氏の連載する「日本映画縦断」を貪るように読んでいました。 昭和3年に公開された山上伊太郎脚本・マキノ雅弘監督「浪人街」の 再映画化の動きが誌面上で始まっていたからです。 私の属した映像計画学科(現・映像学科)の教授に映画評論家の滝沢一氏がおり、 講義が終わる度に滝沢氏に、「浪人街」再映画化の最新情報を聞きに行っていま
した。そんな日々から、映画の撮影所に対する憧れもあり、関係者にインタビュ
ーした8ミリドキュメンタリーを作りたいと申し入れ、滝沢氏も快諾されました。 合計3回、撮影所に通い、今となっては貴重なインタビューを記録する事ができ ました。 当時の映画人の方々の映画への情熱は、43年の歳月を経ても失われなかった。そ の情熱が、今回、2019年に行われる京都国際映画祭での上映へと繋がった、と思 います。

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一緒にお送りいただいたスチール写真の中から、いくつかをご紹介。

マキノ雅弘さん(1928年『浪人街』監督)

『浪人街』で主役を務めた南 光明さん。

リメイク版『浪人街』の深作欣二監督

高岩 淡さん(プロデューサー兼企画、当時の東映京都撮影所所長で後に社長)

中島貞夫監督(リメイク版『浪人街』ではプロデューサー。8㎜映像から)

赤塚 滋さん(カメラマン。後に大阪芸術大学教授)

千葉真一さんを取材する伊藤さん。千葉さんにとっては、初の時代劇作品になるはずでした。

ピラニア軍団の志賀 勝さんを取材する伊藤さん。カメラは大阪芸術大学生の花井信也さん。

竹中 労さん(映画評論家、プロデューサー。8㎜映像から)。「日本映画縦断」執筆中。

大学に入学して間のない学生たちのインタビューに、真摯に、そして丁寧に答えてくださっ
た皆さん。とりわけ深作欣二監督が「今、映画を製作する意味」を同じ創作者として学生た
ちにこたえる姿が印象的です。長くネット上に公開されていたのですが、そのまま埋もれて
しまうのをもったいなく思い、今回の深作欣二監督特集に合わせて上映することにしました

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と書いています。2019年10月19日の上映会には、中島貞夫監督らと一緒に伊藤さんも登壇
されています。今頃は病気の痛みから解放され、天国で中島先生と映画の話を楽しんでおら
れることでしょう。

訃報を伝えてくださった中島さんによれば、映像資料として価値が高いため『浪人街・予
告編~1976年夏、東映京都撮影所』は、国立映画アーカイブに収蔵されることが決まった
そうです。この知らせを生前の伊藤さんご自身はご存じだったのかしら?なお、伊藤さん
の卒業制作『行きずりの男』も2021年9月15~19日の「First Pictures Show1971-2020 」
で上映しています。本当に若くして亡くなったのが惜しい。

伊藤信幸さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。合掌

 

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