おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2017.12.31column

「持永只仁展」のスナップ写真からいくつか

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アニメーションを勉強しておられる女性。8月のイオンモールこども向けワークショップでお手伝いしてくださったので久しぶりの再会。その時見本用ソーマトロープに優しい絵を描いてくださったのが印象に残っていたので、「ミュージアムを介して知り会った小説家さんが初めて書いた子ども向けの本『くまのココ』に挿し絵を描いてみませんか?」と声かけをしました。「とりあえず1枚描いて見せて欲しい」と要望しましたが、まだ届いていません。楽しみは年が明けてからになるのでしょうか。彼女との会話から思い付き、落書き帳に「持永展」の感想を書いてもらうことにしました。もっと早くに始めれば良かったのですが…。彼女以降の来館者にも感想を書いていただき、人形展示の協力をして下さった持永伯子さん、12月2日に人形を取りに来られた川本プロの福迫福義さん、12月12日に訪問した岡本忠成夫人のさと子さん、『少年と子だぬき』『おこんじょうるり』、そして展示した2体以外の『死者の書』に登場する人形も製作された人形作家の保坂純子さんにもご覧いただきました。

奥で人形を熱心にご覧になっているのは、エスエススタジオの二人、桜井瑛士さんと白川莉茄さん。「川本さんの『道成寺』と岡本さんの『おこんじょうるり』を見て、パペットアニメーションを作ろうと思った」と実物の人形を見て感無量の様子でした。二人が作ってくれた募集中の『茶目子のクリスマス』第1号は、パペットアニメーションで特に海外からのお客さまに好評ですが、展示している驚き盤の功労者、秋山好正さんも現在製作中です。秋山さんは続編『茶目子のお正月』も製作中で、これが出来上がれば第1号になります。なお、富山県射水市にある大島絵本館のおおしま国際手作り絵本コンクール2017で、応募作255点の中から桜井さんの「枝まめたろう」が奨励賞受賞。誠におめでとうございます。

DSC03364 (4) - コピー左から赤ちゃんを抱っこした親子3人は、髙野真さんと文子さんと景(ひかる)くん。二人はムーガブーガというユニットを結成し、様々な活動を展開中。12月と1月のNHKみんなのうたで新曲『僕と魚の物語』(歌は男女ツィンヴォーカルバンドのSwimyさん)が放送中です。驚き盤を使った表現もあって手作り感満載の可愛らしいアニメーションです。なお、岡本忠成さんの『メトロポリタンミュージアム』も再放送されていますので、ぜひご覧ください。放送予定はこちら。ムーガブーガのお二人は、保坂さんも講師を務めておられる東京阿佐ヶ谷にあるラピュタビル内「アート・アニメーションスクールちいさな学校」の第1期生だそうです。

その右隣は岡本忠成さんが亡くなった後、川本喜八郎さんが意思を引き継いで作品を完成された『注文の多い料理店』上映披露会で手伝いをされた方で、当時の写真アルバムを持参して下さり、皆で見入っている様子です。岡本忠成さんの奥様、さと子さんから連絡をいただいて駆けつけてくださいました。その右隣は、今回の催しで『死者の書』メイキング映像をお貸しいただいたほか、ホームページでもチラシを掲載して応援をしてくださった東京にある桜映画社の舞木さん。今年8月の「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」にも参加して下さいました。その右隣は佐賀県からお越しくださった持永只仁研究者の西岡英和さん。4月23日の「凸坊新画帖からアニメーション誕生へ」と題した催しに初めて来館いただき、その時に持永さんについていろいろ教えていただいたことが、今回の「持永展」開催に結び付きました。恩人のお一人です。

DSC03382 (2) - コピーこの写真は最終日26日の様子。撤収のため3度目の来館をいただいた持永伯子さんを囲んで、たまたま居合わせたお客さまと一緒に、お話を聞きしました。右端の女性は東京藝術大学で油絵を専攻している大の大河内伝次郎ファンで、4度めの来館。「せっかくなら26日にいらっしゃい」とお誘いして、お母さまと一緒に来館いただきました。そのお母様(右から2人目)は、「持永さんの『赤鼻のトナカイ』を見て大きくなった」とおっしゃったので、伯子さんはとてもお喜びでした。

持永さん親子は4世代にわたって日中友好に尽力されています。持永只仁さんのお母様は東北電影製作所付属保育所の責任者、只仁さん夫妻は中国のアニメーション発展に寄与し、伯子さんは池辺晋一郎さん指揮「悪魔の飽食」(関東軍細菌戦部隊の犯罪行為を暴いた森村誠一さんの原作をもとに音楽化した作品)全国縦断コンサートのプロデューサーとして、そのお嬢さんは、その合唱の中の演技者として活躍されています。それだけでも貴い活動をされていていますが、もう一つ、お父様持永只仁さんについても、これからはもっと語り部として活躍していただきたいと、傍で接していて願います。戦後の苛酷な状況下でも、日中の映画人が協力しながら映画を作っていたこと、中国や日本で人形アニメ―ションのパイオニアとして多くの作品を生み出しただけでなく、優れた後進を育て、その影響を受けた人々が今世界中で大活躍されていることなどを、もっと多くの人に知って貰いたいと強く思うのです。

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ドイツに帰られる前のアニメーション作家、米正万也さんも駆けつけてくださいました。それから京都国際マンガミュージアムと川崎市市民ミュージアムで長期にわたって開催した「にっぽんアニメーションことはじめ~『動く漫画』のパイオニアたち展」を企画運営したAnimation As communication代表森下豊美さんも来て下さいました。

そして、いよいよ撤収作業に着手。22~26日と短期集中型の展覧会で、本当はもっと長くすればよかったのでしょうが、慣れないことでもあり、人形に万一のことがあっては大変と短くしました。それでも100人近くの方にお越しいただき、岡本さと子さんからいただいた人形作家保坂純子さんのお名前入り『おこんじょうるり』の絵葉書を1枚ずつプレゼントさせていただき、皆さまとても喜んでくださいました。

DSC03393 (2)『少年とこだぬき』の人形たちは、伯子さんの手で再び箱に仕舞われ、この夜関東へ帰っていきました。18日からの日々は、人形大好きな私に取って至福の時間でした。展覧会をするまでは何気なく見ていた人形アニメ―ションでしたが「大変な手間がかかり、根気がいる仕事だなぁ」と今さらながら思いました。特に自転車。上手く、自然な様子で、前に向かって車輪が走っているように見えるように撮ることは、簡単そうだけど実は頭も手先も使う大変な作業。

無事に展示を終えて、森下さんも一緒に、伯子さんとささやかな打ち上げをしました。その時森下さんから「今、パペットアニメーションの波が来てます‼」と教えて貰って、早速16日夜に『KUBO―二本の弦の秘密』を観てきました。昔の日本を舞台にしたアメリカの映画。大変に良くできた作品でした。12月30日たまたまNHK「投稿DO画」を見ていたら、『KUBO―二本の弦の秘密』のコマ撮りアニメーションを担当したKevin Parryさんの作品が紹介されました。彼は「全てCGで作る人もいますが、必ず実物を混ぜると、見ている人が信じやすい」と話しておられました。もう一つ来年2月10日に公開される『ぼくの名前はズッキーニ』もストップモーションアニメで、アヌシー国際アニメーション映画祭2016長編部門でアヌシー賞を受賞した作品です。次々人形を用いた作品が上映されるのは素晴らしいことです。先に『KUBO』『ゴッホ』の二つのアニメーションについて書いていますので、良ければご覧ください。

 

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