おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

八月の万華鏡 / いのうえきよたか監督作品 2020年8月12日(水)~16日(日)10:30~

八月の万華鏡

1979年、いのうえきよたか監督作品、映画、8mm、パートカラー、スタンダード、55分

受賞歴(招待上映を含む)

1979年度、映像計画学科・卒業制作グランプリ

あらすじ

昭和二十年の夏、菊子は5才。日本は破局に向って、油蝉のごとく狂い鳴いていた。寒村の少女にとって、そんな狂騒は、午後の昼寝のようにけだるい反面、逆光の太陽のように鋭く突き刺さってくるものであった。満州に行っているお父さんに、買ってもらった万華鏡。クルリと回せば色模様。菊子の周囲を、様々な人生が駆けぬけて行く。真の出征・康子の妊娠・気狂い義二の失踪……。そして八月十五日。何が終ったのか……何が始まるのか。菊子が駆ける道は、熱く、熱く、焼けている………。

制作意図

老人にも若き日々はあった。恋に涙も流した。もっとさかのぼれば、母の乳房をむさぼる赤ン坊だった。人生という時間の流れの中で、若さに何の疑問を持たないボク達も、確実に年老いて行くのだという縦の視点。もうひとつは、時代の境目を横に切る視点。昭和二十年八月十五日に、そんな両者の接点を置いてみた。これは、接点を描く映画である。そこから時間は流れて行く。例えば、埃のかぶった古いアルバム。時間を様々に切りとったアルバム。人々の思いが入りくんだそれらは、まるで万華鏡のようだと思う。これは、アジテーション映画ではない。アジらない、アジテーション映画である。ひとつの確かに存在した時代の一瞬をまず知ること、知ってもらうこと。三十数年前に戦争があって、日本が負けたという事実。その接点から、それぞれの中に何かが生じてくれば、作者として幸福だと思います。主人公は菊子。菊子の菊は、天皇陛下様の菊の御紋の菊です。

キャスト

抒元央江、松本学、安田めぐみ、土屋康子、内山伊知治、山本じゅん、原しま、安田真佐子、富士瞳、宮城加代子、内山梅子、坂倉すなえ、坂倉貫事、安田君、保田君、坂倉君、内山浩良、関順一、坂倉道也、内山繁雄 

スタッフ

制作:グループ汝蛇・地蔵舎、原案・監督・編集・音楽:いのうえきよたか、脚本・進行:原えり子、撮影・録音:林渉、照明・スチール・撮影補・小道具:林稔充、同時録音・小道具:河本浩志、同時録音・小道具:木内克幸、撮影補:高橋誠、音楽:藤川るみ子・ナニワエクスプレス、協力:ワタベスタジオ

コメント

1979年。林渉くん・林えり子さんと共に誕生させた卒業制作「八月の万華鏡」も、今年で41歳となりました。制作意図に記したように「-接点を描く映画―」に、さらに41年という歳月が加わったわけです。歳月の流れと発酵作用は、良く似ていると実感する昨今。はたして歳月という名の発酵が加わって、予想もしない旨みを醸し出しているのか。はたまたカビまみれで、腐ってしまっているのか。そんなあらたなる縦の視点に心躍らせつつ、横の視点で見れば、41年が経ち、戦後も早・75年目になろうとしていますヨ ―菊子さん……。

 

 

 

朝日新聞(1979年8月29 日(水)夕刊)「見直される映画興行」(下)滝沢一(映画評論家)より、”新機軸の開発が必要”の見出しのあと、

・・・「学校や職域での8ミリ、16ミリの製作熱もいよいよ加速している。私の学校(大阪芸大)でも今年の卒業製作に「八月の万華鏡」という小傑作が作られた。敗戦直後の農山村スケッチともいうべきものだが、戦争の記憶の風化に対する省察や、戦争犠牲者への鎮魂のテーマを作品の底に沈めて、重い感動があった。これは8ミリ映画だが、小さな映画館にぜひかけてみたい作品であった。これからはアマチュア作品にまで興行の視座をひろげたい。」・・・

映像学科が出来て、初めての傑作が出来たと話題になった作品。「戦争の時代を知らない世代が、どうして、あの八月十五日の空気感を描けたのか・・・」と、依田先生も絶賛だった。

 

 

【THE FIRST PICTURES SHOW 1971-2020開催趣旨】

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