おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.01.31infomation

新野敏也さんから、1月15日「レーザーポインター映画教室」第2弾のレポートが届きました

昨年1月8日に開催した「新野敏也のレーザー・ポインター映画教室」が好評でしたので、引き続いて今年1月15日に第2弾を開催しました。

毎日お忙しくされている喜劇映画研究会代表の新野さんですが、当日のレポートをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。早速掲載してご紹介します。

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前夜から雪が降り積もり、交通網の遅延も相次ぐ中で、『レーザーポインター映画教室』は開催されました。

早朝に宿泊先の窓から外を覗くと、冬の京都の観光CMみたいな趣の街並み!しかし、はしゃいでいる場合じゃない!テレビでは外出を控えるように呼びかけている!いくら「歩く大寒波」を自称する僕でも、こりゃまるっきりシャレにならない事態だと痛感して、ご予約された方々には大変に申し訳ない…今日はほとんどの人がご来場できないだろう…と心底焦りました。

会場へは11時頃に到着したのですが、僕自身が途中の歩行もかなり危ない状態だったので、お客様が一人でも来られたならば、とにかく面白いモノを見た!珍しいモノを知った!と思って頂ければイイなぁ、大雪の中でも来た甲斐があったと言って頂ければ嬉しいなぁ等と、自分の努力よりも天の神様に祈るような感覚で開場を待ちました。

ところがところが、開演間近になってビックリ!ご予約の方々はほぼ全員ご参加、さらには学生さんも多くご来場、著名な研究者や音楽家、活弁士の方々も電車の遅れと足元の悪い中をわざわざ神戸・大阪・奈良から駆けつけて下さいました。もう、感謝感激アメアラレ大雪!この場を借りて、改めてお礼を申し上げます。誠に有り難うございました。

 

このように感慨深い状況ではありましたが(東京を出発する約2時間前に個人的な事情でかなり動揺もしていたもので!?)当日のお話が舌足らずのままスタートしたと猛省しております。今さら悔やんでも手遅れですが、せめても、この手記がご掲載の機会を頂戴しましたので、補足となりますが(そして未見の方々には、この日この場で何をやっていたのか多少なりともご理解頂けますように)再度イベント内容を説明させて頂きます。

 

昨年の『第1回』では、19世紀末の、映画発明以前からの道化芝居の伝統について、舞台劇や写真術から映画(フレーミングの定義)が成立する過程について、そして映画が発展した経緯について(そこでコメディにおける演出、撮影技術、演技がどのように製作現場や市場に影響を与え、どのように新たな創作に貢献し現在に到っているか)等、映画創世期を軸に説明しました(つもりです)。今回はその次の時代、無声映画黄金期の1910~20年代を中心に、演技の変遷、撮影や編集の進歩について説明させて頂きました(つもりです)。

第一次世界大戦が勃発する前までは、フランス・イタリアが世界の映画市場を押さえて、ヨーロッパの舞台で活躍していた道化師たちがスクリーンに活躍の場を移し、仰々しいパントマイムで人気を博しておりました。それが戦争を境にヨーロッパ経済は混乱、スタジオは軍需工場への転換を迫られ、製作者と道化師たちも徴兵されて映画産業は衰退します。この時期にアメリカ映画が取って代わって世界中のスクリーンを席捲して、「仰々しいパントマイム」から「自然な所作」へと演技や演出が変化します。この実例をポリドールというイタリアのコメディアン作品と、2016年に発見された詳細不明のアメリカ映画「ブッシュ家のポンコツ自動車(仮題)」上映と共に、ちょっぴり解説させて頂きました。

続きましては、道化師の持つリズム感やテンポについてです。チャップリンやキートンがなぜ今日までも「喜劇の王様」として君臨しているのか等、実際の映像とその分解写真で説明しました。この時代のコメディアン(特に舞台から映画界に転向した人物)は、二拍子や四拍子のリズム感で演技をしている事、それに対してチャップリン、キートン、その師匠格のロスコー・アーバックル(デブ君)は、自在に変拍子を取り入れるセンスの持ち主で、一発芸の開始を予測させる間もなく、一連の動作の中でさりげなくトンデモナイ技を披露する事、涼しい顔であたりまえに演じる魔力等、実例をご紹介しました。

さらにアクロバット、今の時代では後継者や伝承者が不在となった超人的な技の数々、ワイヤー操演やCGなど映像制作のギミックを一切使わない前時代の恐るべき至芸を、実例と分解写真から、足捌きや演技のタイミング等をご覧頂きました。アクロバットとは、空中ブランコや綱渡り等、常人が真似できない特殊技術であって、痛みや憐憫の情を感じさせない超絶な体技で、客観的に安心して見られる芸である等をルピノ・レインという(今となっては忘れ去られた)コメディアンの主演作で説明しました。

そして、その対極にあるスタント(観客に感情移入させるアクション技術)と、映画的な構成要素、撮影方法を、モンティ・バンクスという(この御仁も今となっては忘れ去られた)コメディアンの主演作で説明、スタントとは痛みや憐憫の情を想起させ、状況を主観的に見せる技芸とスペクタクルの構成要素である事、さらに主演者と専任スタントマンの入れ替わるタイミング等をご覧頂きました。

次に、映画技法の進化として、スラップスティック喜劇(チャップリンやキートンの様式)とは対極に位置するシチュエーション喜劇の成立とスタントの応用について、ハロルド・ロイドの長編作品で解説しました。

ここで撮影のネタバラシやスタッフの写り込んだカット等を特別公開!ネタバラシにつきましては、僕にとって「ウッヒッヒ~、オレだけが知っているんだぞ」みたいに独善的な映画ヲタクの自慢ではなく、「90年くらい遠い昔に、演技を引き立て、最大限にハラハラドキドキ感を創出する画面構成を、先人たちが少ない時間と予算でどれだけ苦労して編み出したか」等、今の観客にご理解して頂くための貴重な事例だと考えております。現在主流のブルーバックによるCG合成に頼らない事では、役者の演技にも臨場感や緊迫感が漲る点や、ワンカットに最大限の効果をもたらすにはフレーム外でこんな工夫がなされたいたんだ!と再発見してもらいたく、敢えて「ヒミツ」を暴露しました。この撮影や編集の技法が連綿と受け継がれ、一層磨き上げられて、今日のアクション映画やサスペンス映画に発展したのだと忘れてはなりません(覚えていても意味がないかもしれませんけど)。

 

映画産業の新陳代謝によって古典映画が埋没するのは仕方ありませんが、スマホで手軽に撮影・編集も可能な現代、パソコンに精通していれば簡単にCG合成が可能な現代、液晶画面で安直に創作してネット動画に投稿し「ハイ、映画完成!」とも言える現代において、「しっかりとカメラのファインダーで画郭を決めて」「フレーム内に創作のすべてを注力して理想的なファンタジーを練り上げる」先人たちの卓越したアイデアと努力を改めて掘り起こしたい!それが僕の想いであって、このようなネタバラシまで公表した次第です。

また、チャップリン、キートン以外に、無声映画期には何千人ものコメディアン、喜劇専門のスタッフが存在しておりましたが、みんな時代を経て既に忘れ去られているのが現況です。そこで僕の喜劇映画研究会としては、「今では無名のコメディアンでも、見直したら恐るべき技量に感動した!」「こんなにヤバイ人たちが存在していた!」「100年くらい昔でもギャグが色褪せてない!」「トンデモナイ神技!」といった映画史に眠るコメディの数々をせめてもご参考までにお見せするのが使命、とばかりに今回は長時間にわたる上映と解説をさせて頂きました。特にこの日ご来場の若い学生さんには、古典映画のコメディをちょっと気に留めて、新しい創作や研究の一助として扱って頂ければ嬉しいです。

そんなこんな、この1月15日、当日の話し方ではチンプンカンプンなところも多々ありましたけど、昼から夜までを底冷えする雪の中で温かくお迎え下さいましたおもちゃ映画ミュージアムの太田教授と文代様、お集まり頂きました皆々さま、そして終演後の懇親会までも…どうもお騒がせ致しました!有り難うございました!今後ともどうか宜しくお付き合い下さいませ!

(喜劇映画研究会 新野敏也)

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レーザーポインターだけではなく、手描きのイラストも使って、「90年くらい遠い昔に、演技を引き立て、最大限にハラハラドキドキ感を創出する画面構成を、先人たちが少ない時間と予算でどれだけ苦労して編み出したか」(寄稿文から)を解説する新野さん。

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国内外でご活躍のミュージシャンも駆けつけてくださいました。写真向かって右は、パーカッショニストの渡辺亮さん。昨年もお越しいただきました。左はウード奏者の常味裕司さん。この日は以前生演奏付きで『モロッコ製の女給』を上映されたときの映像を見せていただきましたが、常味さんのウードの音色はこの作品にぴったりでした。

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向かって右から、活動写真弁士の大森くみこさん、クラシック喜劇映画研究家でライターのいいをじゅんこさん、私、新野さん、左端がピアニストの天宮遥さん

当日の様子は、私もブログで書きましたので、良ければご覧ください。新野敏也さまには、誠にありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。

そして、貴重な時間を割いて、大寒波の中来てくださった皆様に、心から御礼申し上げます。

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