おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.09.30infomation

秋の企画展示「大映京都の特撮技術『画合成』原画展」のお知らせ

朝晩涼しくなって、凌ぎやすい季節になってきました。今日30日をもって約半年ぶりに緊急事態宣言と蔓延防止等重点処置が全面解除となります。感染再拡大への警戒を怠ることなく、今できることを細々ながらも継続して、一歩一歩前に進めたらと願っています。

さて、昨日から始まった秋の企画展は「大映京都の特撮技術『画合成』の世界」です。当館には後述する経緯から、優れた美術で知られた大映京都撮影所特撮映画で用いられたマット画が小さいものも含めて86枚ございます。中には『大魔神』3部作(1966年)で用いられたとはっきりわかるものもあり、いつか展示をして広くご覧頂きたいと思っていましたところ、タイミング良くイギリスのアローフィルム社から大魔神ボックスセット「THE DAIMAJIN TRILOGY BLU-RAY」が7月12日に発売されるという情報が入りました。発売に際し、連れ合いがイギリスからオンラインでインタビューを受けることになり、その内容がそのディスク2に収録されています。DISC TWO – RETURN OF DAIMAJIN -  My Summer Holidays with Daimajin, a newly filmed interview with Professor Yoneo Ota, director of the Toy Film Museum, Kyoto Film Art Culture Research Institute, about the production of the Daimajin films at Daiei Kyoto。で

アローフィルム社には、今度展示するマット画の写真と画コンテの一部(数点)をお貸ししました。

さらに、大映作品を継承している(株)KADOKAWAからも、9月24日に4Kで修復されたBlue-ray「大魔神封印函」が発売されました(なお、新たに画コンテが見つかった「妖怪百物語」も「妖怪封印函」として同時発売)。当館からは『大魔神怒る』の画コンテをお貸ししました。

数々の名作を世に出した大映でしたが、1971年に倒産。その折りに、京都の撮影所にあったものが大量に廃棄され、シナリオや美術資料類なども散逸してしまいました。そんな状況の中で、スタッフの人たちが、自分たちが関わった作品のものだけでも、何とか保存しようと残されたものの一つがこの画コンテと「画合成」の原画でした。連れ合いが高校生の夏休みに『大魔神怒る』の撮影アルバイトで、ロケーションなどに参加した思い出の作品だったことから、スタッフの方から頂いたものです。

今回、アローフィルム社「大魔神」BOXの特典用に数点の画コンテを提供したことを(株)KADOKAWAの担当者に伝えたところ、これまでの「大魔神」BOXでは、『大魔神』『大魔神の逆襲』の画コンテはすでに用いられていましたが、『大魔神怒る』の画コンテだけがなかったのだそうです。それで同社が新しく販売する「4K修復版BOX にもぜひ」ということで提供しました。表紙が新しくデザインされて、今回の特典に付いています(上段左端)。

上段中央は台本。特典デイスク(上段右端)には①静止画=スチールやスナップ、ポスターやロビーカードなどの宣伝材料、「大映ニュース」や台本などの制作物、レコードやプラモデルなどのグッズなど、静止画500枚以上収録②画コンテ集③設定資料集④動画資料集=撮影・公開時の様子を映したメイキング映像、大魔神四方山話、ノンクレジット特報&予告などの貴重な映像を収録、と盛り沢山な内容です。

1984年にレーザーディスクで発売されたのを端緒に、2001年12月5日、徳間ジャパンコミュニケーションズよりDVD「大魔神封印函 魔神降臨」が発売されました。改めて見ると、ブックレットの資料協力者に連れ合いの名前も書いてありました。

2009年6月26日発売のBlu-ray BOX「大魔神最終保存版!」。この時の映像特典は「キャメラマン森田富士郎に聞く~大映京都の特撮を支えた男~」と特報、予告編。封入特典として復刻縮小版大映作品案内と写真右上の3Dはがき。

最新発売分の「大魔神封印函」の3巻には、それぞれ「キャメラマン森田富士郎に聞く~大映京都の特撮を支えた男~」のインタビューの他に▼『大魔神』(1966年4月17日公開)の特典は大魔神スーツアクター橋本力氏へのインタビュー▼『大魔神怒る』(1966年8月13日公開)の特典は作曲家伊福部昭氏へのインタビュー▼『大魔神逆襲』(1966年12月10日公開)の特典は特撮監督黒田義之氏×撮影監督森田富士郎氏×映画監督原口智生氏の対談が収録されています。

狭い展示会場ではありますが、そこに4種類の『大魔神BOX』を展示しています。CGもない時代、創意工夫を凝らした大映京都撮影所映画人たちの入魂の作品が、55年の時を超えて今もなお国内外の人々の心を捉えています。

『大魔神怒る』の1場面。

今回展示するマット画。とても細かく描かれています。B2の額に入る大きさです。写真のように見えますが、全て手で描かれた絵画。

『大魔神逆襲』の1場面。画面中央より左側の岩場を子ども達が登っていくのが、おわかりでしょうか?

その画面で用いられたマット画。

『大魔神怒る』の1シーン。

そのシーンの特撮で用いられたマット画です。

他にもいろいろあるのですが、大映のどの作品に用いられたのかがよくわからないので、ご覧になっておわかりでしたら、ぜひお教えください。

残念ながら映画のクレジットには、これらの画を描いた画家のお名前が載っていません。大映には、何人かのこうした画家が力を貸しておられたようですが、本業以外の頼まれ仕事には名を伏せられたのでしょうか? 今回の展示で、こうした縁の下の力持ちだった人たちのことが少しでもわかればいいなぁと思っています。お客様からの情報で作品名や画家のお名前がわかり55年前の功績を讃えることになれば開催した意味もあるでしょう。

会期は11月28日までと長く設定しました。ご来場を心よりおまちしております!!!!!

【後日追記】

実際の大魔神約5㍍と着ぐるみの大魔神180㎝の差、約2.5:1の縮尺で技術デザインやセットが設計され、背景も作り出されました。カメラスピードも2.5倍の高速(スローモーション)で撮影と、リアリズムに徹しました。その大映京都映画人たちが心血を注いだ特撮技術の一端を間近でご覧頂ければ嬉しいです。

 

 

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