2022.06.15infomation
7月30日活弁と生演奏で上映 ヴァンパイア映画の古典『吸血鬼ノスフェラトゥ』
昨年12月18日に人気活動写真弁士坂本頼光さんをお招きして『忠臣蔵』を上映した折、「また頼光さんの活弁が聞きたい」という声をたくさん頂戴しました。その要望にお応えすべく7月30日(土)13時半から、再度、坂本頼光さんにお越しいただいて、『吸血鬼ノスフェラトゥ』を前回同様に天宮遥さんのピアノ生演奏付きで上映いたします。暑い季節なので、怖いお話が良いのじゃないかと選びました。
この作品はドイツで1922年にF.W.ムルナウ監督によって製作され、今年は公開から100年の節目。このことも今回の演目に『吸血鬼ノスフェラトゥ』を選んだ理由のひとつです。吸血鬼ドラキュラが映画化された初期の作品で、ドイツ表現主義、無声映画の名作と言われています。
さて、この作品が日本で上映されたのはいつなのかしら?と検索したのですが、結局よくわかりませんでした。こちらのサイトによると、ブラム・ストーカーの妻であるフローレンスから著作権侵害で訴えられて1925年に一度、フィルムの破棄命令が下されましたが、資料という名目で残されたフィルムがあり、それがハリウッドに渡ったようです。そこからフローレンスと上映交渉を行って、1929年に復活して公開されたという流れがあるそうです。訴訟案件だったため、鳴り物入りの公開が憚られたのかもしれません。日本での公開は早くても1929年以降だとサイト運営者は綴っておられます。
ちなみに、ブラム・ストーカー(1848.11.8-1912.4.20)は、1897年に出した『ドラキュラ』で有名な小説家。今もその名を冠したブラム・ストーカー賞はアメリカ・ホラー協会によって選ばれた、その年最も大きな業績を残したホラー小説に与えられています。
先のサイトによると、1919年の映画雑誌「活動倶楽部」でセネット=キーストン社の『バンパイア』(1916年、原題『Vampire Ambrose』)が紹介され、シルクハットを被り髭を生やしたバンパイア役(まだ“吸血鬼”の日本語訳が付いていません)のマック・スエン氏の写真(上掲)が載っているそうですが、『吸血鬼ノスフェラトゥ』に出てくるノスフェラトゥは、このような紳士的な雰囲気じゃなくて、禿頭でげっ歯類の様な牙を持っていて、薄汚く暗い雰囲気を漂わせています(下掲写真)。
さて、この作品を選んだ理由には、もう一つあって、フィルム寄贈者水上浩様との会話です。2019年8月25日に水上浩様から、58作品の8ミリフィルムを寄贈して頂きました。その時のことは、こちらで書いています。
水上様は、朝日新聞東京本社記者上田学さんが書いてくださった連載記事『わがまちのお宝館』をお読みになって、当館にお声がけくださいました。もともと映画が大好きだったそうですが、戦争中は敵国の映画は見られず、戦後は一転してそれらの映画が次々公開され、加えて新作も見られる状況になったことがとても嬉しかったそうです。自分だけが楽しむだけでなく、仲間にも見せてあげようと自主上映会もしてこられました。
ひとつひとつきちんと手作りされたケースが素敵ですし、深い映画愛を感じます。そうした中から選んだ一本が『吸血鬼ノスフェラトゥ』です。
1作品ごとにメモが書いてあり、これは『吸血鬼ノスフェラトゥ』のもの。足がお悪いと聞いてはおりますが、7月30日にお招きして、戦中、戦後の映画鑑賞の様子など思い出話をお話ししていただければと思って計画しました。
今回の上映にあたり、坂本さんに出演をお願いしたところ、実は昨年8月7日にも国立映画アーカイブ「こども映画館2021年の夏休み」のプログラム「夏はホラー!怪奇と幻想の美を味わおう!」でこの作品を活弁されたそうです。子どもたち対象の活弁上映でしたが、「皆さん真剣に聞いてくれて、手ごたえを感じた」と仰っていました。
残念ながら当館ではお子様料金を設定していなくて同一料金にはなりますが、老若男女問わずどなたでもお越しくださいませ。プロの語りと演奏で観る無声映画の面白さをぜひこの機会に体験していただければ嬉しいです。先着25名で予約優先です。万一予約されていてもご都合が悪くなった場合は、できるだけ早い目にご連絡をお願いいたします。
なお、当館は古い京町家を改修して使っていますので、隙間が多く、冷房していても不十分です。恐縮ですが、できるだけ涼やかな服装でお越しくださいませ。皆様のご協力を宜しくお願いいたします。
【6月15日夜追記】
いつもお世話になっている日本映画史家の本地陽彦先生からメールが届き、以下のことが書いてありました。
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「吸血鬼ノスフェラトゥ」は、確か製作当時は日本では上映(公開)されなかった、かと思います。
私も若い頃、いわゆるゴシック・ロマンスの小説にはまりまして、その頃、『幻想と怪奇』、とか『幻影城』という探偵小説復活の雑誌の創刊が相次ぎまして、全部創刊から購入しておりました。ホラー・ブームと呼ばれる時代の前で、懐かしい想い出、です。
そういえば、私のところのフィルムにも、「カリガリ博士」の9.5ミリの全長版があります。自分でも見たことが無いのですが・・・
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早速「うちでデジタル化して、上映会をしましょう‼」と返信メールをお送りしました。無事実現の暁には、改めてご案内いたしますね。