2024.08.15infomation
「初期の映像装置“ミュートスコープ”を再生してみよう」を2回シリーズで開催します‼
9月21日と12月1日の2回シリーズで、若手研究者の力をお借りして、「初期の映像装置“ミュートスコープ”を再生してみよう」(2024年度全国科学博物館活動等助成事業)を開催します。
聞き慣れない“ミュートスコープ”という言葉に、「いったい何なの?」と思われた方も多いでしょう。最初に載せたチラシの中心にあるのが“ミュートスコープ”のリールです。直径255ミリもあり、連続した白黒の写真約850枚(1枚が7㎝×4.8㎝)が回転式名刺フォルダーのように円形の芯に取り付けられています。それをハンドルで回転させながら、覗き穴から見ると連続写真がパラパラ漫画のように回転して、絵が動いて見えるという道具です。
ただし、手元にあるのは、この大きなリールだけ。随分前に連れ合いがネットオークションで購入したもので、その時の情報が何も残っていないのが惜しい。「これをどうにか動かして見てみたい」と思い続けていたところに出会ったのが、今回講師を務めて下さる「映像玩具の科学研究会」主宰で、プリミティブ・メディアアーティストの橋本典久さん。明治大学総合数理学部講師のほか、過去には東京芸術大学、武蔵野美術大学、東京大学などで研究員や非常勤講師を務めておられます。
橋本さんは、視覚装置などの原理や仕組みの面白さに根付いたシンプルで力強い作品を展開しておられ、近年は初期視覚装置のレプリカ制作や、日本における“驚き盤”の起源の調査もされています。11月3日まで開催中の「いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ」@東京都写真美術館の関連イベントとして、9月7日13~16時、シンポジウム「メディアの過去と未来をつなぐ」にも登壇されますし(当日10時から無料整理券配布、先着190人)、日本各地で子ども向けワークショップもしておられます。
2021年5月9日に連れ合いが組立式おもちゃ映写機「VITASCOPE」を徹夜で組み立てたことをFacebookで書いた折り、「自分も同じ模型を持っている」と書き込んで下さったことからご縁が始まりました。初めてお会いしたのは2022年6月9日。その時に3Dプリンターを駆使して作られた“プラキシノスコープ”(35ミリのフィルム缶にコンパクトに収納可)を手土産に頂き、今年1月5日にも手作りの不思議な光学玩具“アノーソスコープ”を寄贈頂きました。それらはPart2のチラシ下部分に写真を載せましたし、他にも立体ビューアーやミュートスコープの写真も載せました。これらの光学玩具はPart2実施日の12月1日に参加者の皆さんに体験して頂きますので、今のうちから予定表に書き込んで楽しみにお待ちくださいね。
これは当館所蔵の金属製“ミュートスコープ”(商品名はNews Paper Movie Machine。アメリカ製)で、大人の掌にのるぐらいの大きさです。“ミュートスコープ”はウィリアム・K・L・ディクソンとハーマン・カスラーが発明し、1894年にカスラーが特許を取得しています。今から130年前のことですね。発明王エジソンが作ったキネトスコープは一人が覗いてフィルムに映っている映像を見る道具でしたが、こちらは金属製の板にプリントされた写真をハンドルを回して動かして見ていた道具。さて、橋本さんが9月21日に完成して披露して下さるのはどのようなミュートスコープでしょうか、拝見するのがとても楽しみで、今からわくわくしています。
◎9月21日(土)14~16時の「ミュートスコープリールを再生する!」について、橋本さんからのコメントを以下に紹介。
………2023年4月、島津製作所創業記念資料館に“驚き盤”の調査に行った際、おもちゃ映画ミュージアムにもご挨拶に立ち寄った。その時、「ミュートスコープのリール部分だけがあり、どうにか再生する装置ができんやろか?」と相談を受けた。「数年前にリュミエール兄弟のキノーラのレプリカを作ったことがあるので、簡単に再生するぐらいならなんとかなると思いますよ」と言った翌日、リールが自宅に届いた。(いくらなんでも早すぎやしないか?)実物はイギリスのブラッドフォードにある国立科学メディア博物館などで体験していて、作ってみたいと思っていた。9月にお披露目会をすることが先に決まったので、この夏はミュートスコープに捧げることに決めました。さて、間に合うでしょうか?制作の裏話などをお話します。
さらに東京工芸大学の馬場一幸先生にもお越しいただき、開発中の映画フィルムの簡易再生装置の紹介も行います。押入れの奥から古い8ミリ映画フィルムが出てきたけれど映写機は無いというとき、スマートフォンを利用して手軽に見られるようになることを目指すそうです。橋本は装置部分をお手伝いします。………
◎12月1日(日)14~16時の「マニアックな初期映像装置を体験してみよう!」についても、コメント紹介。
………ソーマトロープ、フェナキスティコープ、ゾートロープはご存知かもしれませんが、フェナキスティコープを発明したプラトーが作った“アノーソスコープ”やライトドローイングの実験はご存知でしょうか?これらの装置や実験は古い文献に図が稀に掲載されている程度で、体験型の展示を行っている施設は世界中を見てもほとんどありません。私はここ10年ほど初期映像装置のレプリカを作成しており、これらの初期映像装置の魅力やその仕組みの面白さ、奥深さに魅了されてきました。私がこれまでに作ってきたレプリカ装置を全種類展示、体験して頂ける機会となります。特にアノースコープは、なぜこんなふうに見えるのだろうかと考え始めると、何時間も頭を抱えることになると思います。しかもインターネットを探しても答えはほとんど出てきません!
今回も東京工芸大学の馬場一幸先生にお越しいただき、スマートフォンを使った簡易フィルムビューワーの完成披露、デモンストレーションも行う予定です。もし9月にミュートスコープの再生装置が完成していなければ、この会でお披露目となります。…………
◎各回とも、先着25名(予約優先)。参加費は高校生~大人は1000円(入館料込み)、中学生は500円(同)、小学生以下は無料です。
たくさんの子どもたちや元子どもたちが、目を輝かせて科学の面白さに心奪われる時間となりますよう一生懸命取り組みますので、ぜひお知り合いにもお声がけ下さってご参加下さいますよう宜しくお願いいたします。