2018.12.31infomation
1月5日から、国産アニメパイオニアの一人、北山清太郎について資料ミニ展示をします!
2018年もあと数時間となりました。今年も皆さまに大変良くしていただき感謝でいっぱいです。昨年は国産アニメ誕生100年ということで、これまで私共にとって余り縁がなかったアニメーション関係の人々との出会いが重なり、今年はさらに多くのアニメーション関係の人々と嬉しい出会いが続きました。
その出会いを大切にして、新春1月5日から国産アニメーションの草創期に活躍した北山清太郎をテーマに資料展示を行います。2月10日には、3人の登壇者によるトークイベントも計画しました。
「北山清太郎作品と活動写真興業取締規則」のタイトルで研究発表をして下さる新美ぬゑさんは、昨年4月6日~7月2日に京都国際マンガミュージアムで開催された「日本アニメーションことはじめ~『動く漫画』のパイオニアたち~」(当館共催)で大活躍。この企画展は評判になり、その年の秋、川崎市市民ミュージアムで巡回展も開催されました。関連して4月23日に当館で「凸坊新画帖からアニメへ」を開催した折り、初めて登壇して下さいました。こちらでやや詳しく報告を書きました。『日本初のアニメーション作家北山清太郎』(2007年)の著者である津堅信之さんも登壇者のお一人でしたので、北山についての言及があります。良ければぜひご覧ください。
今回の展示の主役「北山清太郎」のお孫さんにあたる安田彪(たけし)さんとは、昨年7月1日京都国際マンガミュージアムで開催された「『なまくら刀』公開100周年記念祭」でお会いしたのが最初。当日上映したおもちゃ映画の字幕の文字がおじい様の字体に似ている」と話されたのが特に印象に残りました。草創期のアニメーションや資料はほとんど残っていないこともあり、当館でおもちゃ映画を紹介する時には、いつも「草創期のアニメーションのことについてはわからないことが多い」が口癖のようになっていましたから、北山のお孫さんと親しくご挨拶できたことは望外な喜びでした。
安田さんは『日本アニメ―ション映画史』(渡辺泰、山口且訓共著、1977年)を偶然図書館で見るまで、おじい様がアニメを作っていたことを一切知らなかったそうです。家族には全く映画についてお話されなかったようです。それからの安田さんは、国会図書館に通うなどして懸命に北山について調べ、お母様の安田節子さん編『日本アニメーション創始者 北山清太郎傳』の改訂版を6版まで出し続けられました(2008年11月)。既にそれから10年の歳月が過ぎ、今も新しい資料が見つかっています。いつかはそれらの新しい資料も含めた最新版を出したいお気持ちでしょう。私家版の在庫はなく、今回は安田さんの手元に残るその貴重な1冊も展示しています。
安田さんは、他のどなたよりもおじい様のことを知って貰いたいと願っておられます。昨年9月9日に「木村白山って、何者?」をした時、想像以上に好評を博しました。「もっと日本のアニメの草創期に活躍した人々について知られても良い」との感触を得て、安田さんに協力を要請し、快諾を得ました。多くの資料は安田さんからお借りしますが、初期の北山作品が載っている『幼年世界』につきましては、大阪府立中央図書館国際児童文学館さんのご協力を得ました。他にプラネット映画資料図書館、新美さん、そしてもう一人の登壇者谷廣和哉さんからもご協力いただきました。
まだ高校2年生の谷廣さんは、主に聞き役を担当してくださいます。例えばこちらの記事のように、既に何度も当館HPで彼の凄さを書いていますので、彼の登場を楽しみにされている方もおられるでしょう。今年3月に初めて谷廣さんにお会いした時から「新美さんに紹介してあげる」と約束をしていて、それが2月10日にいよいよ実現します。「精一杯頑張ります」と谷廣君から頼もしいメッセージが届いています。春から否が応でも大学受験勉強に邁進せねばならない彼の節目になればというのも、企画した理由の一つ。
つい先ごろ西村智弘さん著『日本のアニメーションはいかにして成立したのか』(森話社)が出版されました。10月6日の「渡辺泰トークイベント」の席で、私は谷廣さんに「『日本アニメーション映画史』を更新していってほしい」と挨拶しましたが、この本はその翌月の11月9日に出版されたわけで、ちょっと驚きました。パソコンも使わずアナログな資料との格闘で編まれた『日本アニメーション映画史』のご苦労は如何ばかりだったかと思いますが、これからの時代は異なります。若者二人には、自分たちの切り口で日本アニメーション史研究を開いていって欲しいと願っています。
トークイベント3日後の2月13日は、北山清太郎没後74年の命日。1917年日本アニメ誕生時の先人たちの苦心に思いを馳せながら、皆様と充実した時間を過ごせれば嬉しいです。お申し込みを心よりお待ちしております。