おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.07.22infomation

8月11日、映像を通して平和を考える~Part1

終戦記念日を前にして、「平和を考える」連続シリーズの1回目として、8月11日(日)13時半から、「映像を通して平和を考える」というイベントをします。昨日の参議院選挙の結果がでて、思うところは色々ありますが、為政者がもくろむ憲法改正の国会発議に必要な3分の2議席を占められなかったことは良かったです。

最近では、録画しておいた「やすらぎの刻~道」を見るのが日課に。生きるために満蒙開拓団として大陸へ渡った人々、戦地へ行く前に家族に別れを告げに来た次男、その心中を察して「ふるさと」を歌いながら見送る兄弟妹、、、その後の日本の現代史を知るものとして、再び戦争に駆り出されることがあってはならないと強く思います。

今回の講師は、滋賀県長浜市にある高月観音の里歴史民俗資料館学芸員の西原雄大さんで、「近代記録映像から災害・文化・戦争を考える」の題で発表していただきます。2月11日、休館日でしたが訪ねて来られたので、所蔵している映像などをご覧に入れました。中でも記録映像、ニュース映像が上映後切り売りされていた映像をご覧になり、日本軍が中国大陸に侵攻しているものに大変詳しくご存知だったことに驚きました。「これは凄い、以前勤めていた滋賀県長浜市の浅井歴史民俗資料館に所属軍人の遺族から寄贈された資料の中に上海陸戦隊の写真があったので見たことがありますが、動いている映像は初めて見ました‼」と仰って、装備や服装、映っている背景などについて解説して下さったので、びっくりしてしまい、その場で「再びこういう映像が作られることがないよう、皆さんに映像からわかることをお話くださいませんか?」とお願いしました。所蔵しているこうした記録映像は「戦争を恰好良く描いて、脚色された映像だが、戦争はそんな恰好良いものではない。何で戦争が続くのか、あらゆる貴い命が失われていき、負の連鎖が終わらない。今こそ、平和を問うことが大切」ということで、浅井歴史民俗資料館で関わっておられる平和教育の話もしていただきます。

アニメーションにもプロパガンダとして作られたものがあり、揶揄した表現が何を指すのか、ご覧になって直ぐに見抜かれました。2017年に来館されたシカゴ・フィルム・ソサエティの方から「戦時中のアニメーションでは日本人を牛乳瓶の底のような眼鏡をかけて、出っ歯に描いていた」と教えてもらったこともあり、今さらながら古今東西、同じようなことを考えるもので、映像の浸透力、影響力の大きさを改めて感じました。

西原さんは、花園大学文学部史学科を卒業後、兵庫県埋蔵文化財事務所、滋賀県長浜市生涯学習課文化財係、同市内の博物館、資料館を歴任して、現職。長崎県の原爆病院で出生し、同じ日に誕生した人々のほとんどが原爆2世だったそうです。大学の後輩が毎年体調が悪いので尋ねると、その彼のおばあさまが広島、長崎で被爆されていたそうです。原爆病は、3世代、4世代と引き継がれる恐ろしいもので、その現代の悲劇についてもお話したいと思っておられます。

今年3月23日~4月7日、東京藝術大学大学院アニメーション専攻の伊藤有壱先生とその指導を受けた作家さんたちによる「ストップモーション アニミズム展 in KYOTO」を開催しました。そのうちのお一人、白石慶子さんが映像監督された作品『ホウセンカおじいちゃん』を一目見て、8月の催しの時に上映したいと思い、初日のトークイベントにご来館の折に、その場で「上映したい」とお願いしました。

この『ホウセンカおじいちゃん』は、NHK「被爆者からの手紙」に寄せられた被爆体験記『ホウセンカおじいちゃん』をアニメーション化された作品です。白石さんは、以前、広島平和記念資料館で「原爆の絵」や広島国際アニメーションフェスティバルをご覧になったことがおありで、実写映像で記録できなかったことを、絵やアニメーションで記録に残せたらと思っておられました。この作品を作る前に、広島の被爆建物や跡地を巡り、被爆者のご家族と話もされました。その時、昔の被爆体験に涙されましたが、今はおじいちゃんから娘さんまで原爆病が4世代に繋がっているということにも泣いたそうです。何ということもないことが、何というしあわせか。それらを表現するために、過去のシーンは広島の砂を使ったサンドアニメ―ションを混ぜ、現在のシーンは広島の景色を元に手描きアニメーションで作られました。「アニメーションにすることで、手紙に書かれているように、子どもたちや次の世代に伝えていけるよう、微力ながらお力添えができたら」と願っておられます。

フリーランスのアニメーション監督で、NHKみんなのうた「日々」アニメーション監督、劇場・TVアニメ「あそびあそばせ」「ハクメイとミコチ」「月がきれい」「クズの本懐」「ダンガンロンパ3」「暗殺教室」「デジモンアドベンチャーtri.」「乱歩奇譚」「人類は衰退しました」オープニング・エンディングアニメーション監督。国内外で上映・受賞されています。

映画『あこがれ』は、今春立命館大学映像学部を卒業された小林まことさんが、大学3年から所属された映像人類学ゼミにおいて、卒業作品として制作されたドキュメンタリーです。

「70年以上前、飛行機乗りはあこがれの職業だった。現代で例えるならば、野球選手のようにカッコいいと思われる存在。わかるようでわからない、その憧れの形を彼らに聞いてみた」ということで、おもちゃ映画として販売されていた当館所蔵記録映像『満州事変映画 錦州方面10-14』も用いながら、三重県津市香良洲にあった海軍航空隊(予科練)の跡地に立つ津市香良洲歴史資料館で取材された作品です。社会人1年目の小林さんですが、当日は東京から駆けつけてくださる予定です。

最後に上映する『戦争のつくり方』は、2016年6月12日に当館で開催した「国際平和映像祭 in 京都」の折に、映像作家の丹下紘希さんをお招きして上映しました。丹下さんは、3.11原発事故を経て非戦・非核を宣言し、日本で活躍中のイラストレーターを集めて「NOddiN」を立ち上げ、このアニメーション「戦争のつくりかた」を作られました。この時は、上映の前に丹下さんに「平和を疑え」の題で特別授業もしてもらいました。その時の様子はこちらで紹介しています。タイトルは過激ですが、逆説的に平和の作り方をテーマにした作品です。今回のテーマに相応しいと思い、上映します。3年前の記事を読み返すと、丹下さんにお話してもらった時も参議院選挙の時でした。あの頃と全く政治が変わらないどころか、益々悪化しているように思われます。

古い京町家を改装した施設です。冷房をしていても不充分ですので、できるだけ涼やかな服装でお越しください。参加費(入館料込み)1000円、学生と正会員は800円です。終了後には交流会(500円)もございます。たくさんの皆さまのお申し込みをお待ちしております。よろしくお願いいたします。

なお、Part2は12月8日13時半、ブラジル移民と満蒙開拓団をテーマに研究者をお招きして開催します。今のうちから予定表に記入していただけると幸いに存じます。

【お断り】

小林まことさんの来館は、都合により取りやめになりました。作品上映は予定通り行いますので、ぜひともご覧いただければ幸いに存じます。

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