おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.04.03infomation

渡部 眞・名古屋学芸大学教授の「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」のノート①

3月9日、名古屋学芸大学メディア造形学部教授の渡部 眞さんが初めて訪ねてくださいました。「第1回映画の復元と保存に関するワークショップ」の時から支援していただいている先生で、第13回まで代表を務めた連れ合いはもちろん良く存じ上げていますが、私は2017年8月26、27日に国立大学法人電気通信大学で開催された第12回講義会場でお声掛けしたのが最初。下記に詳しくレポートされている通り、登壇者が話されることを即座にタイプして、写真も撮り、という作業が神技に思えて、27日講義終了後に思わず「可能でしたら、今書いておられる内容をお送りいただくことはできませんか?私自身ではとてもメモしきれず、内容理解も覚束ないので、振り返りの学習用にぜひお願いします」と声を掛けてしまいました。見ず知らずのおばさんから声を掛けられて、凄く驚かれたと思います。その時、連れ合いがやってきて「やぁ、渡部さん」と声を掛けたので、不審者の烙印を押される難を逃れることができました。

9日にお会いした折り、その時の話になり、そして翌朝、早速メールが届きました。「お約束の『映画の復元と保存に関するワークショップ』のノートをお送りいたします。お恥ずかしいながら、走り書きでもあり、よくわかっていない部分もあるとは思いますが、ご笑覧ください」と綴られていて、先生の許可を得て、そのまま転載させていただくことにしました。では、どうぞ!!!

第12回「映画の復元と保存に関するワークショップ」(2日目)

基調講演
常石史子氏(元フィルムセンター)「デジタル時代の映画が、いまフィルムから受け継ぐべきもの」
2003年伊藤大輔の作品復元をきっかけに
2006年オーストリアのフィルムアルヒーフ・オーストリア
ミッション
1オリジナルを生き延びさせる
2現状システムでの再生可能フォーマットに複製
3複製物を将来再び使用可能な状態で保存(これが大変)
 
ナイトレートの収集
ドイツの国立アーカイブでは捨てているのでオーストリアが拾っている
昔ライオン株式会社から寄贈された小林富治郎葬儀の様子を撮影したものがしっかり残っていた(木箱のせい)室温だったけど桐箱により守られていた。木であることにより、温度変化が緩やかである。オーストリアで収蔵庫を作り、そこに保存している。
ザルツブルグでプライベートフィルムを集め、DVD化してあげ、フィルムを預かる。
ヒトラーを歓迎するものが出てきた。
これらを映画祭で上映(ポルデノーレ、ボローニャ、ボンの映画祭、国内でのヴィエンナーレ、ディアゴナーレなど)生演奏付きの特別上映やオペラハウスでの上映によって予算獲得
 
アナログ復元
オリジナルを保存原版におこして上映プリントにする
さらにこれをデジタルにして上映またはDVDにするなどが主
 
デジタルの特徴を生かして
デジタルによるそれぞれの比較を並べてみるということも必要にである。
フィルムからスキャニング(デジタルマスター)そしてレコーディングしてネガを作り、これをプリントするという方向。この場合の利点
1インタータイトル(別言語版の差し替え)欧州ではこれが多い
2Reconstraction(複数素材の編集)別バーションを一つにする(これはデジタルならでは)
3未編集オリジナルネガの編集
4白黒フィルム+色情報がある場合は染色を再現
5退色の補正も治せる
     ※薔薇の騎士(オペラ)の修復に携わった
 
デジタル作業の増加
1現像所の相次ぐ閉鎖
2上映施設で35ミリを上映できない施設や映画祭の増加
3上映素材がない16ミリ作品
4ユニーク・プリントの上映を避ける傾向(希少価値のものは紛失の恐れから出さない)
5特殊フォーマットも扱えるスキャナの増加(BlackMagicのCintelでできる)
   (デジタル化とデジタル復元の差がなくなってきている)
しかし
フィルムに戻す作業がなくなってきている
ということは
データのマネジメントが重要になる
 
データのマネジメント
1何を保存するのか
  ・素材を保存するか
  ・保存場所の選択(オンラインかLTOか)
  ・1ゼネレーション6テラから10テラだったりする
2LTO(テープ)は意外と向いていない
  ・小さなファイルには不向き
  ・エラーは少ないというがそうでもない
  ・
3LTO2(のゼネレーション)を使うためには
  ・様々な機材が必要になっている
 
結論として
オリジナルからスキャニングでデジタル復元マスターを作るが、レコーディングするのではなく、オリジナルからそのままフィルムに起こす
 
フィルム思考の重要性
ABロールは無駄ではなく、そこに「フィルム思考」がある。大切にしたい。
簡単に考えない。
 
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足柄製作所(石井氏)
フィルム缶内の流体ソリューション
フィルム缶内の酢酸分子
外の環境にはあまり左右されない。缶内のミクロな環境に注視する必要がある。
劣化対策のサンプルあり
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イマジカウエスト柴田幹太氏・脇川花緒里氏
Cinekeep ビネガーシンドローム対策
酢酸ガス吸着剤
検査キット
手に触れても大丈夫
※リスクアセスメント 
 
フィルム複製物
保存庫の環境測定
酢酸ガス除去クリーナー
シルバープロテクト
簡易キャプチャー機(テテレ)
二流体水洗
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コダック 宮城直史氏
モレキュラーシーブ
2017 ラボインフラの整備
エクタクロームの復活
データオンフィルム Piql (ノルウエー)を販売
 
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共進倉庫
田澤氏
IPIが出している資料では慣らし時間をはかってフィルムの結露やビネガーシンドロームの…
 
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富士フィルム
 
Evernote Snapshot 20170826 131615
 
右から
三好大輔氏(アルプスピクチャーズ、東京藝大)
   地域映画
畑中章裕氏(作家、民俗学者)平凡社「太陽」「21世紀の民俗学」
   記憶と記録について
来島修志氏(日本福祉大)認知症高齢者、
   愛知県北名古屋市での地域回想法
   映像による回想
澤田誠氏(名古屋大学環境医学研究所所長)脳機能分野科学、「なぜ名前が出てこないのか」
須永剛司氏(東京藝大美術学部デザイン学科教授)
   情報デザイン、社会デザイン
   地産地消  デザインを作るだけの時代は終わった
川嶋稔夫氏(はこだて未来大学)情報アーキテクチャー
   大日本印刷とデジタル書籍の読む速度を高速化研究
 
8ミリの映画
澤田氏;脳は何のために働いているか。脳は一部しか取り込んでいない。覚えやすい記憶とにくい記憶。
昔の映像は長期記憶に入っているので何度もリコールされ、美化されている。記憶容量は少ない(300日=500枚のDVDくらい)8ミリはそういう意味で適している。脳は人が「生き残る」ためにある。感情の動きが大きいものが残る。負の感情
来島氏;相手の認知機能の程度、背景を知って接する。回想法は映像を見せて、時間を区切って止めて質問する。または昔の遊びを再現体験してもらう。30分の番組を作り、施設のお年寄りにやってもらう。
畑中氏;バノキュラフィルム
須永氏;市民が寄って表現する面白さ。企業が作る20世紀が今や変化している。研究している電子カルテには看護師の情動が入れられる余地を作っている。合唱したりすることも同じようなことだ。
畑中氏;写真が小型化したように8ミリがそうであった時代は昭和40年からで48年がピーク。フジは1200万本売った。2009年に市場から消えた。
   疑問;動画と静止画の違いとはなにか。またスクリーンで観る同時体験
三好氏;ホームムービーの意味は何だろう。大分でやっている。これからどういう意味があるのか
須永氏;昭和40年代の8ミリが今その価値が出ているということなので、その時間が必要にであったのであろう。今のひとたちにそのホームムービーが意味あるものとするにはどうするのか。
   疑問;北朝鮮の踊りとパラパラ。動きがあるから記憶容量は蘇る
三好氏;東京オリンピック
澤田氏;セネレーション時には25〜30年の区切りが適当。海馬にはナビゲーション細胞があり、どこで何がおこったのか、動いている状態を記憶はしやすい。保存より見出しが大切である。脳には情報の精細さは必要ない。モノマネでいえば、似ている似ていないは人によって違う。共通のものが必要である。
三好氏;自分の分野でどう8ミリを生かせるのか。
来島氏;回想は意味があることだと認めて欲しい
澤田氏;脳の働きにトレーニングは意味がない。プラスターの分析に8ミリが使えるか。映像で変化する
須永氏;市民の考え方を知りたい
川嶋氏;記憶の外部化。名作が出るが記録できるが故に、比較することになり、ライブ感が薄くなっている。映像の息苦しさではなく制作のライブ感を感じて欲しい。
 
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岡田秀則氏(フィルムセンター)情報資料室長
「映画資料の収集・保存・公開〜その現在地」
資料館や個人収集にいたるまで
 
〈ノンフィルム資料〉
1映画製作につながる資料館
2映画観客につながる資料
3映画を知るための資料   
4「観光資源としての映画資料」からの脱却→学術資源→文化史資源(キュレーションの意義)
 
〈諸問題〉
1著作権
2ネットワーク化
3資料の目録化
4社会的認知の獲得
 
北九州資料館
 
〈登壇者〉
全国映画資料館録  32館→50館
  ・調布市立図書館(映画資料室)の吉江夏子氏〜大映・日活スタジオ 1995年から
  ・世田谷文学館(世田谷文学館文化財団)の庭山貴裕氏〜東宝スタジオ、中古智氏の美術資料
  ・松竹大谷図書館の井川繭子氏(司書)スタッフ6名 築地の東劇向かいスクエア3階
  ・フィルムセンター図書室(京橋千佳3階、相模原分館)
  ・鎌倉市川喜多映画記念館の馬場祐輔氏
 
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中村秀之氏(立教大学現代心理学部教授)
映画のペイパーチェイス  2003年LA
Visiting Scholar としてUCLAに滞在
研究内容
1ハリウッド作家動員  Special Collections
2Behind the Rising Sunの研究 E.Domitricドミトリック監督
   
ミシガン大学にはアルトマンやオーソンウェルズの資料館がある
オンライン複写サービスがあり無料(研究閲覧用)
 
田草川弘著「黒澤明vs.ハリウッド」 (文春文庫)
日本には資料館がなかった。アメリカには全てあった。
 
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専門資料館の事業紹介
市川市文学ミュージアムの富居隆之氏 水木洋子資料 
  ・ひめゆりの塔、浮雲、竜馬がゆく、裸の大将、の脚本
  ・自宅を寄贈
  ・梨リーマン(市川のツイッター)
 
 江東区古石場文化センター 松村浩士 氏
  ・小津安二郎紹介展示コーナー
  ・江東区古石場2ー13ー2(深川一丁目)
  ・江東シネマプラザの開催(昭和の名作)
 
市川崑記念室  市川建美氏(崑プロ代表、和田夏十氏ご子息)
  ・渋谷区南平台町18ー4 毎週火曜、水曜、金曜日、第2土曜日 事前電話予約制03ー3461ー5541
 
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国会図書館が紙資料保存セミナーを開催
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鎌倉市川喜多映画記念館の馬場祐輔氏
東京国立近代美術館フィルムセンターの岡田秀則氏
調布市立図書館の吉江夏子氏
松竹大谷図書館の井川繭子氏
市川市文学ミュージアムの富居隆之氏
世田谷文学館の庭山貴裕氏
市川崑記念館の市川建美氏
立教大学の中村秀之教授
江東区古石場文化センターの松村浩士氏
 
・脱酸化の会社がある
・作品および資料のRegal Deposit (納入義務)をつけるか
・資料収集の方法(コレクターからできるか)→古書展などをチェック→演劇博物館(欠席)から聞こう
 
 
2170827
村川英氏(城西大学)
成瀬巳喜男発見
東京国際映画祭での映画の復元

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