おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2015.07.22infomation

台北電影節(台北映画祭)リポート

今映画祭の仕事で欧州に飛んでいる中西佳代子さんから、7月4、5日に参加した台北映画祭のリポートが届きました。彼女は、今回の映画祭に招待される道を開き、台湾の人にも「おもちゃ映画と映写機」について知っていただく機会を作ってくださいました。彼女の尽力に心から感謝しています。

では、早速中西さんのリポートをどうぞ。

台北電影節(台北映画祭)
Taipei Film Festival
http://www.taipeiff.org.tw/
2015/6/26-7/18

今年で17回目を迎える台北映画祭は、台北市と台湾政府文化局により毎年夏に開催される台北で最も重要な国際的イベントの一つ。毎年40カ国以上、約160本の作品を上映し10万人規模の入場者を誇ります。海外の作品と国内の作品を軸にした二つのコンペ部門を持ち、また多彩な招待作品を上映するプログラムで知られています。

台北映画祭のプログラミングディレクター郭敏容さんと東京国際映画祭でお会いする機会があり、その際におもちゃ映画について大変興味を持っていただき、ぜひ台湾で知られていない「おもちゃ映画」を紹介したい、と熱心なリクエストを受け、半年以上の準備期間を経て、台北での上映を実現することが出来ました。

今回上映されたのは、昨年京都国際映画祭のサイレント映画特集の中で上映された30分のプログラム「怒濤のおもちゃ映画特集」です。太田先生が長年活動されてきたTOY FILM PROJECTと活動弁士の山崎バニラさんのコラボレーションとして産まれたこのプログラムは、昨年の京都国際映画祭で大変好評を博しました。

郭敏容さんは京都国際映画祭のパンフレットの中から「TOY FILM SPECIAL」というタイトルに興味を持たれ、一体これは何?と質問攻めに。台湾に戻られてからは、上映をするならどういった形式なら可能なのか、何が必要になるのか等、細かな質問のやりとりが始まりました。せっかく上映するのであれば活動弁士の方にパフォーマンスをお願いしたい。太田先生のレクチャーと映写機の実演、展示もやりたい、と提案があり、そのために助成金も獲得されて、晴れて実現することになりました。

今回の参加者は、活動弁士の大森くみこさん、神戸映画保存ネットワーク研究員の羽鳥隆英さん、コーディネート担当の中西の3名。本当は太田先生の参加を映画祭側から熱望されていたのですが、体調を崩された太田先生のピンチヒッターとして、羽鳥さんが参加してくださることになりました。

出発前には、現地に手持ちで持参することになった映写機三台について、太田先生より組み立て方や映写の実演のレクチャーを受けるなど事前準備を進めて行きました。

 __ 2

上映は二日に分けて全2公演が行われました。会場はホウ・シャオシェン監督がオーナーを勤めるSPOT HUASHAN Cinemaの170席のホールです。併設のカフェの名前は『珈琲時光』の英題「Café Lumière」と名付けられていました。古い工場をリノベーションした商業施設の中にあり、おしゃれなショップやカフェ、ギャラリーにライブハウスといつも多くの若い方や家族づれでにぎわう場所でした。

IMG_7942__ 1-1

到着した当日にリハーサル。しっかり時間を取っていただきテクニカルな部分、段取りなどを詰めて行きます。後半は大森さんの活弁を通しでリハーサル。スタッフの皆さんも食い入るように見つめる中、大森さんの活弁が生き生きと進んで行きます。ずっと準備を担当して下さっていた現地スタッフの方が「ライブは全然違うね!最高ですね!」と満面の笑顔。プログラミングディレクターの郭さんも本番中は来られないので、と忙しい合間を縫って来てくださり「やっと実現出来ます!本当にありがとう!」と熱く言葉を交わし合いました。

写真 4-1.jpg 馬さん

写真 3 (2)

初回は大森さんの活弁付き上映と、羽鳥さんによるおもちゃ映画についてのトークのプログラム。トーク中にはおもちゃ映写機の実演も実施し大変好評でした。二回目は台湾のアーティスト馬念先さん(上掲写真中央の男性)によるオリジナル活弁のパフォーマンスと大森さんの正当派、の二本柱で行われました。脚本を無視したオリジナルな世界観で馬さんが次々と言葉を繰り出すと客席も多いに沸きました。その後、大森さんの舞台でなるほど本当はこういう意味だったのか、と内容も分かって楽しめる仕掛け。お客様は一度で二度美味しいプログラムを満喫されていました。

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今回とても興味深かったのが北京語の字幕です。事前に脚本を送り用意されていた字幕は、画面下に横書きで脚本のト書きに当たる部分が投影され、右側に縦書きで大森さんの活弁の内容が投影される二段構え。リハーサルの際に確認があり、なんとアドリブで変更した点についてもその場で細かな確認がなされたそうです。本番数分前に内容の変更にも対応する技術力と柔軟さには驚きました。

持参された拍子木やおもちゃの楽器が節々に活躍しながらの大森さんの活弁に誘われて、めくるめくおもちゃ映画の世界へ観客の皆さんがどんどんと引き込まれている様子が伝わってきます。上映中のお客様の表情が素晴らしくて、ついつい何度も振り返って確認してしまいました。

羽鳥さんのトークには、逐次の北京語通訳が入ります。太田先生のご紹介から始まり、おもちゃ映画の歴史や経緯が解説されました。おもちゃ映画ミュージアムの宣伝もしっかり行っていただきました。トーク中には、お客様達に映写機のすぐ近くまで来てもらっての映写機の実演も実施し、実際に白い紙に映像が投影されると歓声が上がりました。その後の質疑応答でも、熱心な質問が相次ぎました。会場の外でも質問が続きサインや写真撮影のリクエストも。お客様がとても楽しんでくださった事が伝わる交流の時間でした。

上映初日の夜には、その時期映画祭に参加している他のゲストの方々とスタッフとの公式ディナーに招待いただきました。今回の台北映画祭ではポルトガル映画の特集上映が組まれており、そのために台北入りされていたペドロ・コスタ監督、安藤サクラさんも参加をされていました。また台湾国内で注目を集めるミディ・ジー監督も同日同じ映画館で新作が上映されており、ディナーでご一緒することが出来ました。

最も印象的だったのは、スタッフの方々が口々にとても良かった!と声をかけてくださった事。詳しく聞くと、休憩時間をやりくりして見に来てくださったスタッフさんたちの間で大変な評判だったとか。運営側の方々にも認めていただけてとても嬉しく誇らしい気持ちになりました。

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また、今回事前準備の際、台湾側でリサーチを担当され、映画祭公式パンフレットに素晴らしい紹介文を執筆下さった、当時国家電影資料館で修復と保存のお仕事をされていた許岑竹さん(下写真右端の女性)ともお会いすることが出来、彼女の個人的な映像に関するおもちゃのコレクションを拝見する機会をいただきました。映画への愛情と想いを共有する特別な時間になりました。

写真 2

10日にはおもちゃ映画チャンバラ特集の屋外上映が予定されていたのですが台風で中止になったそうで、残念でした。
関係各位の方々のご協力により、無事「おもちゃ映画特集」の海外上映を終えることが出来ました。太田先生の活動やミュージアムを台北の方々に知っていただけるよい機会となりました。ここからまた新しい出会いや展開が産まれるのでは、という予感がしています。国内海外含め、多くの方々に知っていただける機会作りを今後も続けて行ければと考えております(中西佳代子)。

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