おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.02.12infomation

第7回活弁と演奏(収録版)無声映画上映会「アリス・ギイ作品集」のご案内

昨年7月から原則第4金曜日に開催している無声映画上映会(収録版)は7回目を数えます。今回は昨年10月14日京都国際映画祭プログラムとしてご覧頂いたアリス・ギイ(1873-1968)特集の中から3作品を上映します。人気活動写真弁士坂本頼光さんとお馴染み天宮遥さんのピアノ伴奏による熱演バージョン収録版です。街中で夜の上映では音の心配があり、今のところは録音版での上映のみです。坂本さんも天宮さんもそれぞれ生での出演プログラムがありますから、お二人の活躍をフォローして下さって、ぜひ、生での活弁と演奏付き無声映画鑑賞の楽しさを体験して下さい‼

昨年はアリス・ギイの生誕150年記念として企画し、フィルムや映画関係資料のコレクター三品幸博さんのご協力を得て5作品を初披露上映させていただきました。いずれも1912~13年にアリスがアメリカで活躍していた時代に製作された珍しい作品ばかり。

アリスは21歳の時にレオン・ゴーモンの秘書になり、1896年ゴーモンの新カメラを用いて最初の作品『キャベツ畑の妖精』(世界初のフィクション映画)を作りました。ここで多種多様の作品(カメラマンたちが撮ったニュース映画やドキュメンタリーを除く)を約400本も製作していますが、何分にも映画にクレジットのなかった時代のことなので、長年映画史からアリス・ギイの名前は抜け落ちていました。結婚して渡米して数年後の1910年9月7日アメリカでソラックス社を立ち上げて自前のスタジオを構えます。これも女性がスタジオを構えた最初です。今回上映するのは全てその時代に作られた作品です。どれもきちんと作られていますし、当時の世相も反映しています。決して女の子の遊びのような出来ではありません。

その後スタジオの火災、離婚と不幸が重なり、二人の子供を連れてフランスに戻りますが、もはや彼女に映画製作を依頼する人はなく…。2018年5月カンヌ国際映画祭で『Be Natural』が上映され、日本では2022年7月に『映画はアリスから始まった』の邦題で劇場公開されました。このドキュメンタリー映画で、アリスのことを知った人も多いかと思います。正直に言えば、私もそのうちの一人です。

二十歳そこそこのアリス・ギイはシネマトグラフを発明したリュミエール兄弟が1895年3月にシネマトグラフのプレゼンテーションをした際、同席しています。「映画の父」と呼ばれているリュミエール兄弟は同年12月28日、フランスのパリにあったグラン・カフェで初めて有料の映画上映会をしました。この時が映画誕生の瞬間とする説が有力です。この上映を見た観客の一人に史上初のSF映画『月世界旅行』(1902年)で知られる“映画の魔術師”ジョルジュ・メリエス(1861-1938)もいました。1896年初夏にメリエスもキネトグラフを作ります。アメリカのエジソンも1896年4月にブロードウェイのミュージックホールでヴァイタスコープの一般公開をしています。アリス・ギイはこうした映画黎明期のパイオニアの一人として活躍したにも関わらず、どうして映画史から抜けていたのでしょうか。男性中心の映画の世界で女性だったからでしょうか、それとも能力への嫉妬でしょうか。1930年ゴーモン社の会社概要に、主要社員としてのアリスの名前が記載されなかったことから、それらも参照しながら著したジョルジュ・サドゥ―ルの『世界映画大全』(1939年第1巻、1967年に亡くなるまで研究を続けて書いた映画史のバイブル)にアリスの名前はありません。晩年のアリスは彼女の名誉をかけて「世界で初の映画監督」としての回想録を書き上げましたが、生前に出版されることはありませんでした。けれども、その努力は報われ1958年フランス映画へのパイオニアとしての功績を認められ、レジオン・ドヌールを受章します。その10年後の1968年3月24日にアメリカのニュージャージーの施設で95歳の生涯を終えます。生涯に製作した本数は700本を超えるそうですが、その大部分が残っていないことも彼女が映画史から消えた理由の一つでしょう。

吉田はるみさん著『アリスのいた映画史』(2023年、彩流社)によれば、「死亡記事が掲載されることはなかった」そうです。

なお、23日は吉田はるみ先生も参加されますので、上映前後のおしゃべりも楽しみになさってください。

『仕込まれたハーモニー』(原題“Canned Harmony”、1912年)の内容は、音楽に夢中の父親は娘エヴリンを音楽家以外の人と結婚させないため、娘と婚約者は一計を案じ、婚約者がヴァイオリン奏者のふりをし、娘は蓄音機で音楽を奏でる作戦にでます。さて、その首尾は如何に?

『肘掛椅子の少女』(原題:“The Girl in the Arm -chair”、1912年)の内容は、青年フランク・ワトソンがギャンブルに手を出し、高利貸から借りた500ドルの借金を返さなければならない窮地に陥っています。悪夢に惑わされ正常な判断が出来なくなっていた彼は、父親が鍵を掛け忘れた金庫から、高利貸にそそのかされるまま500ドルに手を出してしまいます。肘掛椅子で休んでいた少女ペギー(父の友人ロバートの忘れ形見)は、その一部始終を聞いていて、彼を救うためにある計画を考えます。少女役フランシュ・コーンウォールは、アリス・ギイの主演女優としてよく知られています。

『ヘンダーソン巡査』(原題:“Officer Henderson”、1913年)の内容は、ニューヨーク警察本部から「女装してスリを捕らえよ」の命令を受けたヘンダーソン巡査とウィリアムズ巡査が主人公。早速女装してひったくり犯に接触し、翌日カフェでの再会を約束したヘンダーソンは、家に戻って衣裳をクローゼットに吊るして外出。事情を知らない妻は夫の留守中にクローゼットの中にある衣装を見つけて、夫を罠に嵌めようとその衣装を着て翌日同じカフェへ行きます。その間に、ヘンダーソンは女装するため自宅に戻り、衣装がなくなっていることに気付きます。仕方なく制服のまま任務についた彼は、女装して仕事中のウィリアムズと遭遇しヒソヒソ話。その親密ぶりを目撃したヘンダーソン夫人の怒りは頂点に達します。

以上3作品です。19時からカンデオホテルズ京都烏丸六角レセプション棟(旧伴家住宅)1階和室で現金(1500円。学生と同ホテル宿泊者は1000円)で受付します。その後階段を上がって2階へ。コーヒー、紅茶、お茶をご自由にお飲みください。畳に座ってくつろいで映画を観ましょう。定員は15名。皆様からのお申し込みをお待ちしております‼

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