おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.09.30infomation

京都国際映画祭2019「京の映画 京都ゆかりのアニメーション」

京都国際映画祭では、毎年「京の映画」特集をしていて、今回は私どもの提案で「京都ゆかりのアニメーション」を上映することになりました。

最初に日本を代表する人形アニメ監督川本喜八郎さんの『花折り』をご覧いただきます。京都の壬生寺で行われる狂言『花折』を題材にして1968年に制作された自主制作人形アニメーションの記念すべき第1作。ママイヤ国際アニメーション映画祭銀のペリカン賞受賞。声の出演は黒柳徹子さんのみで、台詞はほとんどなく、身振り手振りのパントマイムで酒の戒を説くユーモラスな作品。川本さんは「自分で作る最初の作品は明るいものを作りたかったのです。師匠の飯澤匡先生に勧められて見た、壬生狂言の楽しさと明るさにひかれ、桜の花にまつわる酒呑みの失敗談を描いた、この作品を作ったのです」と仰っています。

仏教無言劇「壬生狂言」は、鎌倉時代の円覚上人が布教のため唱えた融通念仏から始まりました。30の演目があり、1976年国の重要無形民俗文化財に指定されています。壬生寺のWEBサイトによれば、「花折」の僧侶がつけている仮面は、江戸時代の画家、伊藤若冲が奉納したもので、壬生狂言独特の貴重な仮面だそうです。この作品上映を機会に、実際に壬生寺で壬生狂言の楽しさに触れてみられては如何でしょう。秋の特別公開は10月12~14日で、何と嬉しいことに12日「花折」が演ぜられます‼

川本さんの人形美術はNHK人形劇『三国志』(1982~84)や『平家物語』(1993~95)で幅広い支持を得ましたので、懐かしく思われる方も多いでしょう。『三国志』の素晴らしい人形は、東京国立博物館に続き、10月1日から九州国立博物館で開催される日中文化交流協定締結40周年記念特別展「三国志」の会場でも展示されますので、ぜひ間近でご覧下さい。

次に映像作家髙橋克雄さんの『KAGUYAHIME(かぐやひめ)』(1972年)。制作依頼者からは、諸外国に紹介するため、日本文化・京の雅に相応しい格調高い作品とすることが求められていましたので、髙橋さんと美術スタッフは、京都御所はもとより、平等院鳳凰堂、大原三千院、嵯峨野の竹林などをロケ-ション。特別に許可を得てスケッチした東宮御所では、窓や扉の造りまで詳細に記録し、荘厳で格調高い舞台セットが仕上がりました。人形は全て正絹で、国際外交を目的に、日本国を紹介する映画として贅沢に制作されていたのかが見てとれます。

お話しそのものは、古代最大の内乱、壬申の乱で弟・大海人皇子(後の天武天皇)側につき、戦功があった実在の5人を難題婿として描きます。兄・天智天皇系の桓武天皇が平安京を開いたからこそ書けたお話です。『源氏物語』絵合巻に「物語の出で来はじめの祖」としてかぐや姫が登場する『竹取物語』が出てきますが、「誰が」書いたかは謎のままです。

この作品は12ヵ国語版が制作され、世界に届けられましたが、今回、デジタルで修復し、日本語版がなかったので、英語版に日本語字幕を付け、初披露となります。

『一寸法師』(1967年)もよく知られているお話。何年経っても大きくならず、体が1寸(約3センチ)しかないので一寸法師と呼ばれた男の子は、お椀の船に箸の櫂、針を刀の代わりにして京の都を目指して、旅に出ます。御伽草子に載っているお話を元にしていますが、御伽草子とは色々違いがあって、読み比べてみると面白いです。

この作品は、1967年カナダ万博の日本館で初公開され、日本独自の文化を海外にアピールする役割を果たしました。同国立映画局でも絶賛され、カナダの実験映像・アニメーション作家として著名なノーマン・マクラレンは、この作品の特撮に大変興味を持ち髙橋さんと交流しました。コンピューターのない時代、特撮の見せ場は、姫が鬼たちに襲われる場面ですが、この背景は京都ならでは。

当日は髙橋さんのご長女、佳里子さんにも参加いただき、制作にまつわるエピソードなどをお聞きします。

若手の谷 耀介監督『くらまの火祭』(2017年)は、毎年10月22日夕方から行われる伝統行事「鞍馬の火祭」をドキュメンタリータッチで描いたアニメーションです。平安時代中期、平将門の乱や大地震など動乱や天変地異が相次ぎました。940(天慶3)年、世の平安を祈り、朱雀天皇の詔で御所に祀られていた由岐明神を鞍馬に遷宮することで、北の鎮めとすることになりました。松明、神道具などを携えた行列は十町(約1キロ)に及び、この行列に感激した鞍馬の人々は由岐明神の霊験と儀式を後世に残そうと伝え、守ってきました。京都三大奇祭の一つに数えられ、勇ましくも美しい火祭りの光景は圧巻!

谷監督は京都市出身で、立命館大学を卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科を修了されました。上映に際してメッセージが届きましたので、以下にご紹介。

「私たちの住むアジアに通底するアニミズムの世界観を、美しいものとして再確認するため、アニメーション映画として表現しました。お祭りには、私たちのアイデンティティに関わる物語を、無意識に伝えてくれる仕掛けが沢山あります。鑑賞を通じてそれを体感して欲しいし、そのアイデンティティから自己を肯定するような感覚を持って欲しいと思います。そしてたまにはお祭りに足を運び、参加しようという気になってくれれば幸いです。」

最後に上映するのは、今日「日本アニメーションの父」と称されている政岡憲三監督の『べんけい対ウシワカ』(1939年)です。日本アニメーション界で初めて、本格的なトーキーアニメーション(フィルム式)を手がけ(1933年4月15日公開『力と女の世の中』)、セル画の手法を最初に導入し、活用するといった新しい映像表現を試みる先駆者でした。

大阪の資産家の家に生まれた政岡は、幼い頃から絵に興味を持ち、京都市立美術工芸学校と京都市立絵画専門学校で専門的な教育を受けています。1925(大正14)年にマキノ映画に入社して衣笠貞之助監督『日輪』で美術監督をしています。その後劇映画の監督や俳優もやり、キャメラも回し、音楽もたしなむなどいろんな経験を重ねたことが、劇映画の次に選んだ漫画映画の世界で彼の作品を豊かなものにしました。

1930年8月京都の北野天満宮の門前にあった木造の借家を「政岡映画美術研究所」と命名したスタジオで漫画映画の第1作『難船ス物語第一扁・猿ヶ島』を制作。その後、松竹と提携し、前掲『力と女の世の中』を制作しています。より円滑で理想とする制作ができるよう1933年、下鴨に新しいスタジオを建設し、内部で政岡映画音楽部による演奏や録音もできる体制を整えました。今回上映する『べんけい対ウシワカ』は、実家の経済状況が一時的に悪化し支援が受けられなくなって倒産した後、1939年に再建した日本動画研究所(「動画」は、政岡がアニメーションの翻訳として考案した言葉)で最初の作品。弁慶の声は政岡本人、牛若丸の声は妻の綾子が担当し、牛若丸が吹く横笛は、政岡の末弟、安忠が演奏しています。格別な思い入れのある作品だったようで、自ら製作した墓碑には『すて猫トラちゃん』(1947年)、『くもとちゅーりっぷ』(1943年)と並んで『べんけい対ウシワカ』のワンシーンが刻まれています(萩原由香里『政岡憲三とその時代』参照)。

最後に政岡憲三の作品ではないかと思われるおもちゃ映画もご覧いただこうと思っています。このプログラムには、日本アニメーション協会会長の古川タク先生に登壇していただきます。私の方から「アニメーション作家としての視点から解説していただけたら」とお願いしましたら、「アニメーション作家の狂気と大勢で作るアニメーションとの違いみたいなものを政岡さんを中心に探れればと思います」と返事が届きました。どうぞ、お楽しみに!!!

デジタルで作られた作品が多い今日にあって、CGも使えないアナログな時代に、様々に創意工夫しながら理想とする作品を作るために尽力した先人たちの作品と、その方たちが築いた礎の上に、デジタルの良さを駆使しながらドキュメンタリータッチで描いた点が評価された若者の作品を、能舞台という特殊な設えを大きなスクリーンに見立て鑑賞していただく趣向です。

皆様におかれましては何かとご多忙とは存じますが、どうぞお誘い合わせて、会場の大江能楽堂に、ご来場賜りますようお願い申し上げます。お会いできますことを、心より楽しみにしております。

京都国際映画祭2019公式ホームページはこちらをご覧下さい。

 

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