おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.10.27infomation

11/20に大西功一監督ドキュメンタリー映画2作品を上映会‼

まだ10月10日に開催した、“伝説の大道芸人”ギリヤーク尼ヶ崎さん90歳記念映画『魂の踊り』上映会の振り返りが書けていませんが、この時に知り合った大西功一監督のドキュメンタリー映画2作品上映をすることになりました。

『魂の踊り』は門真国際映画祭2021で、ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞し、今91歳のギリヤークさんは、この日大阪府門真市内で行われた授賞式に関東から参加されました。他にもダンス映画部門で審査員特別賞、最優秀ケータリング賞と、3つの賞を受賞されました㊗️㊗️㊗️

この作品のほとんどを撮影されたのが、上掲写真でカメラを手に撮影されている大西功一監督。大阪芸術大学卒というご縁があり、挨拶がわりに頂いたのが『スケッチ・オブ・ミャーク』(2011年)の見本DVDでした。その時「来月淡路島に行く帰りに、どこかで上映会ができたら」と仰いましたので、「当館で実施されては如何ですか」と提案し、トントン拍子に決まりました。

翌日早速拝見しましたら、とても良くて、ぜひ大勢の方にご覧頂きたいと思いました。スイスのロカルノ国際映画祭批評家週間部門「批評家週間賞・審査員スペシャル・メンション2011」受賞、第17回函館港イルミナシオン映画祭2011正式招待作品です。

「ミャーク」は沖縄県の宮古島のこと。この諸島に幾世紀にもわたって伝わる「古謡」「神歌」、そしてそれを口伝で歌い継ぐ人々の様子や思いを丁寧に記録した作品です。かつて「隼人の狗吠」をテーマに調べたことがある私は、酒井正子さんが書かれた『奄美・沖縄 哭きうたの民族誌』を興味深く読んだことを思い出しました。その頃から一度民俗調査に行きたいと思いつつ、実現できないまま今日に至りました。この映画はそんな思いに応えてくれるもので、大西監督には「よく記録で残して下さいました」と直ぐ御礼のメールを送りました。

伝統行事の継承は、少子高齢化、経済の停滞、サラリーマンが圧倒的に多くなった今日の社会において、どこでも風前の灯状態にありますが、宮古島でも貴重な歌群が絶滅の危機に瀕しているそうです。観光客目線で「貴重な伝統をどうぞいつまでも継承して下さい」と言うのは簡単ですが、ご当地それぞれに難しい問題があるでしょう。それでも願わずにはおれません、「どうぞ次世代に継承できるよう宜しくお願い致します」と。

もう1作品は『津軽のカマリ』(2018年)です。聞き慣れない「カマリ」という言葉は、津軽地方の方言で「匂い」を言うようです。有名な津軽三味線の巨匠、高橋竹山さん(1910ー98年)が亡くなって20年を記念して作られた作品。生前、竹山さんは「津軽のカマリが涌き出るような音を出したい」と語っておられたようです。

藩政時代260年の間に津軽地方では60数回の不作・飢饉があり、中でも天明2年(1782)の大飢饉の時は翌年にかけて史上最悪の米の不作が起こり、多くの人々が餓死し、村ごと壊滅したところもあったそうです。寒冷地津軽の農家の人々は、厳しい季節を迎えて苦労を重ねてきました。

東津軽小湊で4人兄弟の末っ子に産まれた竹山さんの生家も農家でした。子どもの頃はまだ一人歩きできるくらいは見えていたそうですが、8歳で入学して「メーグが来た」と言って大変ないじめに遭い、怖くなって2日行ったきり、家で手伝いをする日々に。子どもは時に辛辣です。「メーグ」とは、目が見えない人のことを言います。

津軽では、男性盲人は「ボサマ」(門付け芸人)になって、三味線ひいて唄を歌ってもの貰って生きていくしかなく、竹山さんの門付け暮らしは16歳から始まりました。女性盲人の多くはイタコ(巫女)になりました。竹山さんの奥様ナヨさんもイタコになって、いろんな相談事に応じておられました。

映画には、幾人かの竹山さんのお弟子さんが登場します。竹山さんの三味線の音色に惚れてのことでしょうが、その内の一人が話された言葉が耳に残りました。「津軽三味線を弾く人はいろいろある。けれど竹山先生の音色は違う。ひとつ言えるのは、目の見えない人は竹山先生と似た音色を出す」と。

大西監督は、竹山さんに関して残された膨大な量の映像を見ながら、竹山さんの生き様を追って編集されたのでしょう。肉声が映像と共に今の時代に見聞できる幸せを思いました。「貧乏のために、食うために覚えた」三味線の音色は心に深く染み入りました。。

最晩年に喉頭癌で闘病中も三味線をひく手を休めることがなく、舞台で「ダメになった竹山を聞いてください」と仰った言葉は、そのままギリヤーク尼ヶ崎さんが「もうこんな体になったので」と仰りながら「91歳になったんですが、街頭に出て始めた時と同じ気持ちです。命がけでした。そして、今も命がけです。『初心忘れず』を大切にしています。何事も自分の生き方を貫くことしかできません」と仰って、踊りを披露して下さったことと通じると思いました(上掲写真)。

11月20日(土)大西功一監督ドキュメンタリー映画上映会《音楽の原風景を観る》のスケジュールは以下の通りです。

◎『スケッチ・オブ・ミャーク』(104分)上映=13:00~(開場は12:30)

  終映後に、監督のトークと交流会も。

◎『津軽のカマリ』(104分)上映=16:00~(開場は15:30)

  放映後に、監督のトークと交流会も。

各作品とも定員30名(予約優先)。1作品1500円ですが、2作品通しでご覧になる場合は2800円。いずれも入館料込みです。お申し込みは、電話075(803)0033か電子メールinfo@toyfilm-museum.jpでお願いします。もちろん直接でも承ります。ご予約頂いたお客様で、どうしても当日都合が悪くなった場合は、できるだけ早い目にご連絡ください。無断でのキャンセル、直前でのキャンセルはご遠慮下さい‼どうぞ、よろしくお願いいたします。

【11月6日追記】

嬉しいお知らせです!!!!!『津軽のカマリ』上映に際し、京都府北部にお住まいの「東京月桃三味線」さんがゲスト出演してくださることになりました。初代高橋竹山さんの孫弟子にあたる方で、国内外で幅広くご活躍されています。20日は、同作品上映後に生演奏を数曲披露して下さいます。天井が高い京町家の空間に、竹山流津軽三味線の音色がどのように響くのか、楽しみですね。「東京月桃三味線」さんのプロフィールはこちらです。

 

 

 

 

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