おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.12.17infomation

新春企画は「友禅染めの着物で“映画”をまとう~初期映画と染織に尽力した稲畑勝太郎にも触れて~」

新春第一弾は晴れやかな着物、それも映画に関する道具や俳優さん、人気キャラクターなどが描かれた珍しいデザインのものばかりを集めてご覧頂きます。ご協力いただいたのは、早稲田大学名誉教授草原真知子先生。昨年3月に当館で発行した小冊子8『着物柄に見る幻燈・映画・映写機』を執筆して下さった先生です。

発行を記念して3月19日には小冊子9『マジック・ランタン~さまざまな幻燈の楽しみ』の執筆をして下さった早稲田大学文学学術院教授細馬宏通先生と中京大学国際学部教授岩田託子先生と3人に登壇して頂き、幻燈機の実演も一緒に楽しんで頂きました。忙しくて振り返りが書けないままになっていますが、こちらで簡単に紹介しています。

今回の展覧会は、3月19日のイベントの後でダメもとで草原先生に「次のお正月に先生の着物コレクションをお借りして、“面白柄”の展覧会をしたい」とお願いしたことが叶って実現します。私自身、草原先生に“面白柄”を教えて貰って以降、骨董市の楽しみの第一番が“面白柄”探しです。古裂、古い着物を扱っているお店屋さんに尋ねるのですが、ほとんどご存知の方はおられません。めったに出合えない着物柄だからこそ、面白いのですが。草原先生も集め始めて20年を超えるそうです。小冊子やチラシ両面に用いたのは、その一部ですが、これらからも着物柄が当時の流行りを伝えるメディアの一つだったことが良くわかります。

草原先生に展示について簡単に書いて頂きましたので、以下にご紹介します。

……………アニメーション映画を映して楽しむ子どもたち、時代劇の撮影風景、メガホンを手に、カメラやレフ板を持ったスタッフを従えた映画監督、チャプリンと犬、映画のポスター、女優の写真、映写機やカメラ、映画主題歌や原作小説・・・。これらは和服布地のデザインです。1930年頃、トーキーに変わりつつあった映画に人々が熱狂していた時代、映画を着物として身にまとった人たちがたくさんいたことはほとんど知られていません。これらの着物生地のほとんどは友禅で、当時日本の映画製作の中心地だった京都でデザインされ、染められました。話題の事柄や物語や具体的なモノを服地としてデザインして着る文化は欧米にはなく、これらの着物や端布は日本独自のデザインの歴史を物語っています。メディア横断的な当時の文化は、今、ほとんど忘れられています。戦争に突入する前の驚くほど豊かだった映像・音楽文化がこの展示から見えてくるのではないでしょうか。…………

15日に草原先生にお越し頂いて、展示の打ち合わせをしました。どのように展示しようか、あれこれと。どうぞその成果を見に来てくださいね。3月3日五節句の一つ「上巳の節句」まで開催します。ちなみに写真の女性用羽裏は、私が10月に見つけたフリッツ・ラング監督『メトロポリス』を描いたデザイン。1926年に製作されて、1927年に公開された100年後の近未来都市を描いた作品で、もうすぐ、その年に。ロボットと人間が共に暮らす近未来都市は、少しずつ現実になってきていますね。きっと日本で公開されて話題を集めて、それが早速着物柄に描かれたのでしょう。

丁度良いタイミングで、メディア考古学の世界で著名なUCLA教授エルキ・フータモ先生が来日されるので、1月5日のオープニングにあわせて特別講演「メディア考古学-文化を横断する視点」をして貰うことになりました。快く引き受けて下さること感謝申し上げます。

エルキ・フータモ先生の略歴を草原先生のお手を借りて翻訳すると、以下の通り。

…………メディア考古学の創始者の一人として知られ、日本では『メディア考古学-過去・現在・未来の対話のために』(NTT出版、2015)が出版されている。数多くの来日経験で日本文化にも関心が高い。フィンランド出身、トゥルク大学で博士号取得、メディア文化とメディアアートの分野で執筆、講演、展示企画、実演、TV番組制作など多方面で国際的に活躍し、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でデザイン・メディア学科とフィルム・テレビジョン・デジタルメディア学科の教授を兼任。Illusions in Motion:Media Archaeology of the Moving Panorama and Related Spectacles(2013,MIT Press)など著作多数。現在、メディア考古学の分野で3冊の新著を準備中。…………

通訳は草原先生にお願いし、展示品についてもお話して頂きます。そして、フータモ先生のお声がけで、現在は京都芸術大学文明哲学研究所教授の吉岡洋先生にもコメントを頂戴することにしています。

今回の展示では、京都で花開いた友禅染が、やがて他の地域にも影響を与えて盛んになりますが、その広がりに大きな影響を与えた稲畑勝太郎(1862〈文久2〉年10月30日-1949〈昭和24〉年3月29日)にも触れることにしました。

稲畑勝太郎は、今の京都市中京区烏丸御池東南角にあった皇室御用達菓子舗亀屋正重経営者 稲畑利助、みつ夫妻の長男として出生。小さい頃から勉強ができた勝太郎少年は、1877(明治10)年、レオン・デュリーにより京都府派遣留学生8名に選ばれ、15歳でフランスのマルチニエール工業学校で染織技術の基礎を学びます。その後3年間マルナス染工場の厳しい現場で技術を習得し、リヨン大学で化学課程を学びます。

1885(明治18)年帰国した稲畑は京都府に奉職、京都染工講習所の講師も務めます。その2年後に京都織物会社創設に尽力して技師長となり、洋式最先端染織技術の普及に努めます。

1890(明治23)年、フランスの染料メーカー「サンドニ―社」の総代理店として、京都に「稲畑染料店」を開業し、合成染料の直輸入貿易を行います。(下掲広告はネットでの拾い物。どなたか実物をお持ちではありませんか?)

1895(明治28)年、毛斯綸(モスリン)の国産化を目指して「毛斯綸紡織」を設立。翌1896(明治29)年、「毛斯綸紡織」の社用で渡仏した折、リヨン留学時の友人オーギュスト・リュミエールと再会し、弟のルイリュミエールと一緒に発明したシネマトグラフの上映を見て驚きます。日本の人々にも最先端の光学装置を用いて、欧米の最新文化を紹介するのに最も良いと考えた稲畑は、巨費を投じて撮影・映写技師のコンスタン・ジレルと共に翌年1月に日本に持ち帰ります。

稲畑産業㈱「創業者史料室」のシネマトグラフのレプリカ(2023年11月24日撮影)。現在の「立誠ガーデンヒューリック京都」の地にあった京都電燈㈱の庭で、1897年稲畑は早速試写実験。その後も試行錯誤を繰り返しながら課題を克服し、同年2月大阪の南地演舞場にて日本で初めての映画興行(有料上映会)を行いました。

新しいものに飛びつく同業他社との熾烈な競争に加え、興行に関わる煩わしさもあって稲畑はその後を、同じ府派遣留学生だった横田万寿之助、その弟の永之助に託して、映画から離れて本業に専念します。この間のことについては昨年5月22日「日本に映画を持ち込んだ男たち」第一部で駿河台大学教授の長谷憲一郎さんが講演されている動画を公開していますので、ぜひごらんください。

1897(明治30)年、大阪に稲畑染工場を設立し、最新技術を用いた染色加工業に進出。「海老茶色」は「稲畑染」と呼ばれ、女学校の制服の袴にも採用され、日露戦争の時には軍服用の「カーキ染」を考案して、国家に貢献しました。海外に拠点を次々開設するなど、映画興行から離れて本業に集中し、稲畑商店は大躍進していきます。

1916(大正5)年、政府は染料の国産化を促進するため「日本染料製造㈱」を大阪に設立し、1926(昭和元)年、設立当初に監査役として携わっていた稲畑は社長に就任します。

その後の展開も華々しいものがありますが、初期の頃を見るだけでも稲畑勝太郎は、映画の日本への導入に尽力しただけでなく、染織の面に置いてもキーパーソンだという事がお分かりいただけると思います。

展示では、染料を売るためにフランスから取り寄せた最新生地見本帖などの資料を稲畑産業㈱様からお借りして展示します。借用に当たって尽力して下さった広報部長の橋本幹樹様にも5日のオープニングイベントにお越し頂く予定です(業務多忙の場合はご欠席になります)。

コロナ禍で永らく控えておりました懇親会ですが、5日は特別講演に引き続いて新しい年の始まりをお祝いして久しぶりに歓談の場にしたいと思っています。参加費は1000円(入館料込み)です。できるだけお申し込みをいただければ、準備に大助かり。宜しくお願いいたします。

期間中の2月25日には、当館が元々は京友禅の型染をしていた家だったこともあり、展示とも関連させて、無地のエコバッグに染料絵具を用いて絵を描くワークショップをします。好きなものを描いて下さったらいいのですが、当館に展示しているモノを見ながら描いて頂くのも特別感があって良いかも。10時と13時半からの2部制で、各回先着6名です。こちらも準備の都合上できるだけ予約をお願いいたします。指導は、京都市立芸術大学出身者3名が懇切丁寧に行います。

さらにもう一つ、この展覧会は第27回京都ミュージアムロード参加企画です。1月24日~3月17日にスタンプラリー参加館に設置しているスタンプを専用のハガキに3種類押して応募すれば、抽選で各館提供のグッズが抽選で貰えます。健康と知的好奇心を満たすために、ぜひ参加してみて下さい‼ご来館を心よりお待ちしています。

 

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