おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.09.12infomation

京都国際映画祭2022 サイレント/クラシック映画

今日は、当館でもBSよしもとのテレビ番組収録がありました。今年も京都国際映画祭では「サイレント/クラシック映画」部門に関わらせていただき、15日に当館が上映会場の一つに決まったことから、今年の映画祭アンバサダー(大使)の美しいサヘル・ローズさんが着物姿で来て下さいました。

番組のタイトルは「京都国際映画祭2022 楽しみ方をぜ~んぶおサヘルSP」。放送は10月9日23時から1時間、BSよしもとのチャンネルで。遅い時間ではありますが、ぜひ、ご覧ください‼

これは8月31日付け京都新聞「地域プラス」面掲載記事。テレビでお馴染みのサヘル・ローズさんが会場におられるだけでパッとバラの花が咲いたよう🌹映画や舞台、女優としてだけでなく、様々な国際貢献活動にも熱心に取り組まれています。お会いできたのを光栄に思い、記念撮影を申し出ましたところ快く応じて下さいました。

サインもお願いし、早速“大魔神”のところに飾りました。ロケのMCはミサイルマン西代さんです。

さて、映画祭当日の15日は、当館が織屋建ての古民家を再活用していて狭いことと、引き続きコロナ禍であることから、対面での上映には恐縮ですが人数制限(15名)がございます。そこで、活弁と生演奏での上映を撮影し、後日オンラインで配信することになりました。でも活弁上映はやはり生でご覧になるのが一番‼参加を希望される方は、10月10日までに映画祭サイトからお申し込みをお願いいたします。

当館が企画した京都国際映画祭2022のテーマは、「パテ・ベビー誕生100年」です。ちょうど100年前の1922年に、フランスでパテ・ベビーという小さなカメラと映写機が販売されました。この誕生によって、映画は映画館での上映にとどまらず、短縮版として再編集された映画を家庭でも見ることができるようになりました。そして、何よりもホームムービー(プライベート映画)として、自分たちも映画が作れるようになったことが画期的でした。

パテ・ベビーは、イギリスでは「パテスコープ」、アメリカでは「パテックス」という名で販売されました。1920年代はサイレント映画の全盛期で、様々な作品がパテ・ベビーとして販売されました。フィルムは9.5mm幅で、画面と画面の間に送り孔がある特殊な規格で、“9ミリ半”という名称で呼ばれて人気がありました。けれども戦後は8㎜やVHS、DVDなどの家庭用ソフトに移り変わり、短命に終わった規格でもありました。そういう事情もあって1920~1940年頃に限定されたタイムカプセルのような状態で当時の映画・映像が残っています。当館で発見された尾上松之助主演『(実録)忠臣蔵』(1926年)や小津安二郎監督『突貫小僧』(1929年)、内田吐夢監督『漕艇王』(1927年)、阪妻ユニバーサル作品『当世新世帯』(1927年)も、このパテ・ベビー版で発掘されました。

当館では京都国際映画祭2022に向けて「パテ・ベビー発掘プロジェクト」を年初に立ち上げ、パテ・ベビー・フィルムの提供を広く呼びかけました。お陰様で多くの皆さまのご協力を賜ることができました。集まったフィルムはデジタル化しましたので、選りすぐりの映像を今回の映画祭で皆様にも見て戴こうという趣向です。すでに当館YouTubeチャンネルで配信している「長崎浦上天主堂」の日曜学校の様子は、原爆によって失われた長崎市街の映像として大きな反響をよんでいます。アマチュアの方が撮影した映像であっても、大正末から昭和の初頭を記録した貴重な映像として、資料的価値があります。

京都国際映画祭2022「サイレント/クラシック映画」部門では、10月15日(土)2つのプログラムを用意しました。

第1プログラムは、13:00~

「パテ・ベビー誕生100年」洋画篇です。『映画探偵』の著者・高槻真樹さんの解説と大森くみこさんの解説&活弁、天宮遥さんの演奏で上映します。MCは吉本所属高山トモヒロさん。

◎「満洲ベビー・シネマ倶楽部」大連での映像(ホームムービー)

 

大連の富裕層である撮影者の沖田湯村という人物が構えた「OKITAスタジオ」で製作されたものです。まだ満州事変が起こる前の平和な満洲で、花見(Cherry Blossom)や海水浴をする子どもたち、大連での昭和天皇御大典奉祝風景(上の写真)、満洲牧場、金洲旅行、清朝時代の祭事などが記録されています。他に9月8日に96歳でお亡くなりになったエリザベス2世の戴冠式(1953年)の映像もご覧いただきます。

◎「ロイドのショートショート」

 

アメリカの喜劇スター、ハロルド・ロイドの映画もパテ・ベビーで数多く販売されています。ここでは動物がらみのコント的な短い映像を集めてみました。ライオンやガラガラ蛇、暴れ牛やネズミ、モンキーに悩まされるシーンが集まっています。

◎『チャップリンの消防夫』(1916年、The Fireman)

 

チャップリンの映像もパテ・ベビーで販売されています。熟睡したチャップリンは緊急ベルにも気づかず、消防署長に大目玉を食らいます。慌てて消防馬車を走らすのは良いのですが、署員たちを置き去りにして…。果たして火災現場で夫人を助けることができるのでしょうか? アメリカ映画の父、エドウイン・S・ポーターの『あるアメリカ消防夫の生活』のパロディとも言える作品です。大森くみこさんの活弁付きで。

◎『美しきサルタン』(1917年、The Sultan’sWife)トライアングル・キーストン。

 

『サンセット大通り』で有名なグロリア・スワンソンのデビュー当時の軽喜劇。許嫁のボビーと家族旅行の途中、バグダッドで大金持ちのサルタンに誘拐され、1000人目の妻にされそうになるスージーを、ボビーと愛犬ターク、子猿のヨーコが助けます。若くて可愛いグロリアに出会える貴重な機会です。この作品も大森くみこさんの活弁付き。

第2プログラムは、 15:30~

「パテ・ベビー誕生100年」日本映画篇です。ゲストになべおさみさん登場‼ 引き続き天宮遥さんの演奏と高山トモヒロさんのMCで。片岡一郎さんの活弁と太田の解説付きです。

◎「京都ベビー・シネマ倶楽部」

 

京都の四条通りに面して在った“勝山呉服店”から見た祇園祭や御大典博覧会のパレードや、今宮神社のやすらい祭り、伏見にあった“三夜荘”(西本願寺派の別荘)での園遊会の模様を記録した映像です。“大谷探検隊”の大谷光瑞氏も映っていて貴重です。

さらに、片岡一郎さんの活弁付きで、大阪シネマ倶楽部が製作した3分強の時代劇『敵違い』(1929年)も上映します。

関西圏はアマチュア映画製作が盛んで、撮影場所を貸し出す制度があったり、プロの俳優がアマチュア映画にアルバイト出演したりもしていたようです。そういえば、溝口健二監督作品のほとんどの脚本を担当された依田義賢先生も、若い頃、こうしたアマチュア作品において「飄々とした風貌の味が何とも良い。マヨネーズをつけて食べたら美味しそうなキャラ」と、芝居に駆り出され、自らも撮影していたと聞いた記憶があります。その映像がどこかから見つからないかとずっと思っているのですが・・・。

◎内田吐夢監督の現代劇『天国其日帰り』(1930年)

乗り合いバスの運転手の朝比奈徳八(田村邦男)は、運転しながらも出世妄想が駆け巡ります。大金持ちになって、好きな女性も思い通りに…。会社のくじ引き大会で、大当たり。会社の株を買えば石油が出て、社長にまで登り詰めます。しかし、…。その妄想も終わりが来ます。傾向映画で頭角を現した内田吐夢監督の社会風刺喜劇です。片岡一郎さんの活弁付きでご覧いただきます。

◎『血煙高田の馬場』(1928年)

 

「イドウ大好き」という異名がある伊藤大輔監督の躍動感あふれる映像です。安兵衛が走る走る、また走る。流れるように高田の馬場へ、十八人斬りの大活劇。パテ・ベビーの映像と新しく見つかった玩具映画フィルムを繋ぎ合わせましたが、それでもたった11分の作品。短い映像ですが、伊藤監督の冴えわたる演出が見ものです。この作品も片岡一郎さんの活弁付きです。

 

映画祭の紹介を兼ねて先行配信される作品として、当館からは、昨年上映で好評を博した2作品を再公開します。

◎『狂える悪魔』(1920年、日本では1921年公開。Dr.Jekyll &Mr.Hyde)

ロバート・ルイス・スティーブンスの有名な『ジキル博士とハイド氏」の物語。善と悪の二面性を持つ人間の深層心理を突き詰めようと研究するジキル博士でしたが、自ら薬を服用することになって人格が分裂し出だし、破滅への道に向かう怪奇映画の代表作です。坂本頼光さんの活弁と、天宮遥さんのピアノ演奏です。

◎『ラリー・シモンの気弱なドライバー』(1925年、 A Weakend Driver)

ラリー・シモンと言えば、「大掛かりな仕掛けで製作費をかけ過ぎ破産した」と噂があります。この作品も列車、バイク、車でのチェイスから飛行機でのアクロバッティックなアクションまで、短くても見どころ満載のサイレントコメディです。昨年再発見された『弗箱ラリー』(猛進ラリー)に続き、失われた作品の一つと言えますが、オリジナル映画が残存しているかまではわかっておらず、研究されている方の情報に期待しています‼ ピアノ演奏は天宮遥さんです。

以上、当館が関わる「京都国際映画祭2022 サイレント/クラシック映画」のご案内でした。

 

なお、前夜祭のつもりで、京都国際映画祭前週の10月12~14日の3日間にわたって、大阪芸術大学映像学科歴代学生映画「FIRST PICTURES SHOW 1971-2020」を開催します。詳細は次の記事でご紹介します。テーマは、「映画の原点・人生の原点」。映画祭連携企画と位置付けて当館主催で実施します。実力揃いの作品なので、映画祭での正式プログラムでも良いのですが、まだコロナ禍でもあり、今後映画祭が通常の状態に戻った折に、他の大学作品も含め、正式なプログラムに発展させていきたいと願っています。ぜひご来場の上、ご覧くださいませ‼

 

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