2023.07.22infomation
戦争と平和を考える企画「戦後民主主義映画の旗手 木下惠介展」
戦争と平和を考える企画、今夏は中国戦線での実体験から、戦後は民主主義映画の代表的な映画作家として、人間味あふれる名作を数多く世に送り出した木下惠介監督(1912-1998)をテーマに展示をすることにしました。8月2日~10月1日「戦後民主主義映画の旗手 木下惠介展」です。
きっかけは1月13日に静岡県浜松市にある木下惠介記念館担当キュレーターの戴 周杰さんが訪ねて来て下さったこと。正直に言えば、木下惠介記念館が浜松市にあることをその時初めて知りました。木下監督の出身地だったのですね。浜松市によって記念館が設立されたのは、2001年のことです。最近の若者に、小津安二郎監督、溝口健二監督、黒澤明監督の名前を言っても、知らない人が多くて残念に思うことが多いのですが、他人のことを言ってられないと、自分の勉強不足を恥じました。
それで、戴さんと出会ったのを契機に、木下惠介監督のこと、木下惠介記念館のことを、自分だけじゃなく、関西の人たちにも知って貰える展覧会が出来たら良いなぁと思い、資料協力を申し出ました。実際に5月半ばに記念館を訪問し、館長様、戴さんに展示を見せて頂きながら、改めてその思いをお伝えしました。
1930年に建築された「浜松市旧浜松銀行協会」(浜松市指定有形文)にあります。玄関入ってすぐに出迎えてくれるのが、大きな木下惠介監督の写真(下)。
館長様、戴さんによる各所への手続きのおかげで、貴重な脚本やスナップ写真などをお借りすることができました。記念館にとって数多くの資料を館外に貸し出すのは初めてのことだそうです。今後のこともありますので、緊張しています。
さらに、これまでの展示でも大変お世話になっている日本映画史家本地陽彦先生と川喜多記念映画文化財団様からも大変貴重な紙資料をお借りしました。いつも助けていただきありがとうございます‼ そして、もうお一人、ポスターやスチール写真を集めておられる岩本浩明様にもご協力をお願いしました。林長二郎(長谷川一夫)ファンの方で、他の松竹作品を持っておられないかとお尋ねし、珍しいスチール写真を提供していただきました。
期間中の8月6日(日)13時半から、戴 周杰さんをお招きして、「わたしと木下惠介の春夏秋冬」の題で講演をしていただきます。
戴さんからお聞きしている講演内容は、以下の通りです。
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戦前から戦後にわたって活躍した映画監督の1人である木下惠介は1912年に静岡県浜松市の街中に生まれました。熱狂的な映画ファンだった少年時代から憧れていた松竹蒲田撮影所に入所し、戦時下で召集されて中国・武漢の戦場へ赴きました。中国での従軍経歴から木下映画においての中心テーマ「反戦と平和」が確立され、数多くの反戦名作を世の中に送り出しました。50本目で日中合作作品として計画した『戦場の固き約束』は完成に至らないまま他界してしまった木下惠介ですが、戦後にも日本と中国の文化芸術交流に大きく貢献し、中国に対するまなざしは複雑で多様でした。2021年に開館20周年を迎えた故郷・浜松市にある木下惠介記念館にて、上映特集や展示などを担当している中国人職員の戴 周杰(たい・しゅうき)氏を迎えて、木下惠介記念館の活動を紹介しながら、中国人の若者ならではの視点で、昨今の映画界に忘れられつつある木下惠介と現代社会の関係性に着目し、戦争、中国、社会問題、地域性、クィア、ファッションなどのキーワードを通じて、まだ知られざる木下惠介の全貌を紐解きます。
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本当は、木下惠介監督の作品をご覧頂きたかったのですが、諸般の事情で断念せざるを得ず、申し訳ございません。それで、2019年夏から始めた「映像を通して戦争と平和を考えるシリーズ」として、8月20日(日)13時半、2作品の上映会をします。
2年間週替わりで上映してきた「大阪芸術大学映像学科学生映画THE FIRST PICTURES SHOW1971-2020」の中で、私の印象に強く残ったのがこの作品『八月の万華鏡』(1979)でした。昨年10月にいのうえきよたか監督に出会ったときに、上映を依頼し、快諾を得ていました。初代学科長(当時は「映像計画学科」)だった依田義賢先生(『雨月物語』など溝口健二監督のほとんどの脚本を担当)が、「戦争の時代を知らない世代が、どうして、あの八月十五日の空気感を描けたのか!」と絶賛し、学科が出来て初めての傑作が出来たと話題になった作品です。
映画評論家の滝沢一先生も「学校や職域での8ミリ、16ミリの製作熱もいよいよ加速している。私の学校(大阪芸大)でも今年の卒業制作に『八月の万華鏡』という小傑作が作られた。敗戦直後の農山村スケッチともいうべきものだが、戦争の記憶の風化に対する省察や、戦争犠牲者への鎮魂のテーマを作品の底に沈めて、重い感動があった。これは8ミリ映画だが、小さな映画館にぜひかけてみたい作品であった。これからはアマチュア作品にまで興行の視座を広げたい」と述べておられます(朝日新聞1979年8月29日夕刊)。
もう1作品は白石慶子監督のアニメーション『ホウセンカおじいちゃん』(2017)です。最初に見たのは、2019年春の「ストップモーション アニミズム展inKYOTO」の時でした。この作品も印象が強く、その年夏の第1回「映像を通して平和を考える」の時に上映しました。良い作品というのは、何度見てもいいのです。
白石監督からメッセージ「NHK『ヒバクシャからの手紙』に寄せられた、被爆体験記『ホウセンカおじいちゃん』をアニメーション化した作品です。 過去のシーンは広島の砂を使ったサンドアニメーションを混ぜ、現在のシーンは広島の景色を元に手描きアニメーションで制作しました。 子ども達や次の世代に伝えていけるよう、微力ながらお力添え出来ましたら幸いです」が届いています。
8月6日の講演会も、8月20日の上映会も参加費1000円(入館料込み)で、先着25名(予約優先)です。なお、古い町家を再利用していて、隙間が多いこともあり、冷房していても不十分です。恐縮ですが、できるだけ涼やかな服装でお越しくださいませ。
皆様のお越しを心よりお待ちしております!!!!!