2026.10.14information
新作Tシャツ2種類のご紹介‼

10月3~10日イタリアで無声映画の祭典「第45回ポルデノーネ無声映画祭」が開催され、4日16時45分、私どもの『おもちゃ映画で見た日中戦争』がギュンター・A・ブーフヴァルトさんのピアノ生演奏で上映されました。昨年は当館も協力したThe Japanese Paper Filmsが日本独自の紙フィルムをデジタルアーカイブした作品群が上映され、私どももステージに上がらせてもらう光栄な体験をしました。その折、幾人もの人から「紙フィルムのシンボルマークをTシャツにしたら良い」と声をかけてもらいました。「せっかく現地で多くの親交がある人々と再会できるのだから、お礼に紙フィルムをデザインしたTシャルをお土産にしよう」と急いで作りました。この夏職場体験(インターン)に来て下さった京都芸術デザイン専門学校の学生さんのデザインも参考にしました。描かれているのは“家庭トーキー”という会社のシンボルマークです。
紙フィルムに対する人気は益々世界に広がり、10月31日16時(現地時間)には、ポルトガルのセトューバル市で開催される「Film Fest」に於いて、約90年前につくられた紙フィルムにDuo夢乃のお二人が箏とチェロで演奏をして、この珍しいメディアの紹介をしてくださいます。当館には、最初に紙フィルムを世に出した東京の“レフシー”と後発の大阪にあった“家庭トーキー”の2社の映写機と紙フィルムがあります。後者については同期して、絵と音を楽しむためのレコードもあります。
その“家庭トーキー”のシンボルマークをデザインしました。色は青地の胸にマークと文字、白地の胸に濃い桜色のマークと文字の2種類。折角ならミュージアムグッズにしようと少し多めに作りました。青TシャツはMとLサイズ、白TシャツはSとMサイズです。いつものように名カメラマンとして世界中に知られる宮川一夫先生のお孫さんの工房“スリーマスト京都”製。米国サイズなので大きめです。生地が凄く着心地が良いです。
さて、この“家庭トーキー”のトレードマーク、特に青地の方ですが、T TOYFILMに見えてしまいませんか?実は最初のTは止まり木を表していて、全体が大文字のGにも見えると思います。家庭トーキーを世に出したのは、合地省吾(ごうちしょうご)で、その名前の頭文字Gをデザインしています。彼は1934(昭和9)年大阪で「家庭トーキー製作所」を設立し、翌1935年頃より紙フィルムと専用レコードを同期させて再生する簡易トーキー玩具・家庭用映画装置である「家庭トーキー」の製造・販売を開始しました。
昭和初期の日本では、無声のおもちゃ映画(光学式のフィルム)から「音が出る映画(トーキー)への移行期にあたり、家庭用に安価に普及させるアイデアとして、1932年に東京の「レフシー」が紙に印刷したフィルムを発明し、特許を取得します。大阪にあった「家庭トーキー」はそれにSPレコードを組み合わせるという独自のシステムを考案しました。合地氏の着眼点は素晴らしいですね。不燃性の紙にコマ画像を印刷しているので、当時の可燃性セルロイドフィルムよりも安全で安価でした。紙なのでセルロイドフィルムのように透過しないため、表から強力な光を当て、その反射光をレンズでスクリーンに投影する仕組み(反射映写機)でした。もちろん劇場のような大きなスクリーンではなく、家の襖などに映して楽しんだのでしょう。当館所蔵紙フィルムを見ると、裏に「スタート」の文字があります。ここでSPレコード上に針を落とすと絵と音が合う工夫です。
「家庭トーキー」は自社でレコード盤の吹込みやコッカレコードなどと提携してレーベルまで手掛けた実力派のメーカーでしたが、1937年日中戦争勃発以降、金属や紙、蓄音機針などの物資統制が強まり、1938年に娯楽品へ規制がかかったため、製作所は縮小・廃業を余儀なくされたと考えられています。国会図書館デジタルコレクションで検索すると少なくとも1938年末までは存続しています。
元々、紙フィルムそのものは、アメリカで映画の権利を主張するために紙に印刷をして議会図書館で保存したのが早いですが、日本の紙フィルムの場合は、最初から家庭で見るための創作ものでした。そのことが「日本独自のアナログメディア表現の原点」「家庭用映像メディアの先駆」として、世界のメディア史研究者から注目を浴びている所以です。他にも月と星のトレードマークの“ツキボシフヰルム”があったことがわかっていますが、類似の紙フィルムメーカーが他にもあったのかもしれません。
このTシャツを着て、90年前の先人たちの創意工夫について広く知って頂けたら嬉しいです。ご注文は☎075‐496-8008か電子メールinfo@toyfilm-museum.jpまでお願いします。色とサイズとお届け先をお教えください。代金3000円(税込み)ご入金後にお送りいたします。
なお、国立国会図書館デジタルコレクションで「家庭トーキー」と検索すると1929年から様々な記事がヒットします。ご関心がある方はぜひ調べてみてください。


