おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.08.15infomation

9月9日研究発表「木村白山って、何者?」と上映会

9月9日「重陽の節句」の日の午後、国産アニメーション草創期に活躍した「木村白山」について、3人の方に登壇いただきお話をしていただきます。生没年、生没地はおろか、そもそも名前の読みが「はくざん」なのか「はくさん」なのかさえわかっていない謎の多い人物です。

この企画の発端は、当団体サポーターでもある登壇者の一人、藤元直樹さんからいただいた3月15日付けメールです。藤元さんは、3月3日専修大学神田校舎で開催された日本アニメーション学会歴史研究部会研究会で、当時、東京国立近代美術館フィルムセンターの主幹であったとちぎあきら氏の発表「木村白山を招喚する 台湾で見つかった『漫画 砂煙り高田のグラウンド』をきっかけに」を聴講され、全く情報がない木村白山に俄然興味を持たれました。

「それじゃ、ひとつ珍説を立ててみよう」と、「木村さんと白山さんのコンビだった説」を書いて、聴講からわずか11日後の3月14日にresearchmapにその説をWEB公開されました。それを読んですぐに「おもしろいので、それをこのHPブログで紹介しても良いですか」と持ちかけて承諾を得ましたが、それよりは、当館にも何本かある木村白山のおもちゃ映画を上映しながら、みんなで「木村白山って、いったい何者なのか?」を考える催しにした方がおもしろのではないかと提案したのです。

そのWEB公開された藤元さんの説に、二人目の登壇者、河田明久先生の論考「戦争『絵画』の隘路について―挿絵・パノラマ・戦争画」(「美術フォーラム21」12号、2005年)が参考文献として紹介してありました。河田先生のその論考には「たとえば外苑パノラマを伝える記事にしばしば名の上がる背景画家木村白山は、『聖戦美談 興亜の光』(省文社、1939年11月)や『大東亜決戦画集』(同、1943年2月)といった現行の戦争を主題とする市販の挿画集にも、名だたる挿絵画家に伍して前者で10点、後者には9点の挿画を寄せている」と記述されています。

丁度その頃、知り会いのコレクター氏に「木村白山についての催しをしたい」と声掛けをしたところ、快くおもちゃ映画フィルム、スライド、そして上掲画集『聖戦美談 興亜の光』もお貸しくださる幸運に恵まれました。その画集にあった1枚の挿画を今回のチラシに掲載しました。

見知っているおもちゃ映画の絵と余りに違う挿画なので、驚くとともに、果たして同一人物なのか否か、今度は私の方が俄然興味を持ちました。それで、作戦記録画研究で目覚ましい活躍をされている河田先生に、ぜひお話いただきたいとお願いした次第です。

折も良く10月14日迄、アニメーション史研究の碩学、渡辺泰先生の展覧会をしていますので、渡辺先生にもご登壇いただいてお話をしていただきます。既に渡辺先生より手書きの「木村白山フィルモグラフィ」(1924-1941年)が届いています。当日参加いただいたお客さまにお配りしますので、お楽しみになさってください。

今回は、国立台湾歴史博物館所蔵の木村白山「漫画 砂煙り高田のグラウンド」も特別上映します。2003年に台湾西部の都市、嘉義で日本統治時代の映画フィルムが、映写機など関連する機材と一緒に見つかり、2005年に台史博が購入。尽力された井迎瑞(ジン・インルイ)・国立台南芸術大学音像芸術院長の指導で修復されました。今回ご覧いただくのは、その中の一本です。今年開館満3年を迎えた5月18日、台湾から張怡蓁さんが来てくれました。彼女は今、台湾国家電影中心で活躍していますが、彼女が南芸大の学生だったころに、この一群のフィルム修復作業をしたのだそうです。その時のことはこちらで書きました。そして、今回映像を上映するにあたって、同じく台湾国家電影中心で活躍する若い友人、劉 欣玫さんに尽力してもらいました。三澤真美恵編『植民地期台湾の映画―発見されたプロパガンダ・フィルムの研究』(東京大学出版会、2017年)の終章で語られた井迎瑞先生のお考えに私は大変感動しました。そのことについては、いずれブログで書きたいと思っています。フィルムが取り持つ縁を改めて感慨深く思っています。

当日は、今年、渡辺先生が東京アニメアワードフェスティバル功労賞を受賞されたお祝いも兼ねて開催します。そして、9月から原則毎月第2日曜に、天宮遥さんに出演して貰うことになりました。9月9日はその栄えある第1回目。謎が多い木村白山の作品を美しい天宮さんのピアノ伴奏でご覧いただきます。こちらも、どうぞお楽しみになさってください。定員は先着30人です。ご予約を心からお待ちしております。

【追記】

急遽9月30日(日)14時から「渡辺泰トークイベント:アニメーション研究68年間の軌跡」(仮題)を開催することになりました。会場のキャパから、こちらも定員30人となります。詳細は追ってお知らせしますので、もうしばらくお待ちくださいませ。

 

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