おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.12.24column

令和初の「顔見世興行」見聞録

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これは、11月25日朝の、年末恒例顔見世興行のまねき上げを見学した時の写真。今年も井上優さんが、勘亭流の力強い墨書でまねき看板を見事に書き上げられ、この日無事に揚げられました。井上さんと知り合ってから、この「まねき上げ見学が私にとっての年中行事の1つになっていますが、「どうせなら顔見世興行も観てみたい」と見学することに。

IMG_20191224_0002とはいえ、経済的に余裕がないので、一番安い4等席。演目にまるで知識がないのですが、『仮名手本忠臣蔵』には興味があるので、昼の部を希望。初日と千秋楽は既に完売でしたので、休館日の24日に決めました。窓口のお姉さんに「4等席からどのように見えますか」と尋ねたら、「マンション4階ベランダから通行人を見るような感じ」と答えてくれましたが、遠視なので大丈夫かと高をくくっていました。

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「果たして、その席は」というと、これが指定席からの眺め。お姉さんの例えは正解でした 。まねき上げで知り合った人から「急な階段だから転ばないように気を付けて」と助言を貰っていましたが、これも誇張でも何でもなく、大正解。いやはやの急勾配でした。芝居中の写真撮影は禁止でしたので、休憩時間の様子ですが、高額な観覧料にも関わらずほぼ満員でした。こんなにも多くの歌舞伎ファンがおられるのだと感心しました。

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係の人に、これは歌舞伎独特のご祝儀「竹馬」と呼ぶのだと教えて貰いました。ズラリと並んで圧巻の光景です。

開演時間ぎりぎりに南座に入ったので、弁当を買う暇がなかったこともあり、腹の虫に急き立てられて第1幕終了後の休憩時間に「ええぃ、今日はクリスマスイブだ。ケーキの代わりに観劇弁当を買って贅沢するぞっ‼」と1800円の「鼓」を買いました。これも一番安いランク。一番高いのは「よろこび」の5500円。迷わずに「よろこび」弁当を買えることは我が生涯に一度もないでしょうけど。。。

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これが座席で膝上にのせた「なだ万」の観劇弁当「鼓」なり。前の座席に膝がくっついて、その狭さといったら、窮屈そのもの。イベント時の当館の椅子配置より窮屈。特に厚着をする冬は、コート類があるので手荷物と合わせ大変。「次はもっと余裕のある席で」と思わせる作戦なのかも。

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そのお弁当。普段食べ物の写真はupしないのですが、たまには良いかと。第2幕後の休憩時間にいただきました。10時半開演で、終了が16時少し前まで。美味しい弁当でお腹を満たし、たっぷり歌舞伎の世界に浸ることができました。

さて、芝居の第1演目は「信州川中島合戦 輝虎配膳」。輝虎は上杉謙信をモデルにした武将で、名軍師山本勘助を招きたいと、勘助の母越路を館に呼んでもてなそうとします。越路は勘助の妻お勝を同道して、物語が始まりますが、越路の態度に怒った輝虎が着物を一枚ずつ脱いで襦袢姿になり、越路に詰め寄る場面では、あちこちから笑いが起こり、和みました。見せ場のひとつ。

第2幕「戻駕籠色相肩」は、京都の紫野が舞台。春景色を背景にした舞踊劇。実は石川五右衛門という梅玉さん演じる「浪花の次郎作」と、実は久吉(秀吉)という時蔵さんが演じる「吾妻の与四郎」が、郭の島原から駕籠を担いでやってきます。京、大坂、江戸の郭話に興じる内に互いの正体に気付き…。駕籠に乗っていた禿を演じるのが莟玉(かんぎょく)さん。この度梅玉さんの養子になり、これまでの中村梅丸改め莟玉を襲名する口上を述べられ、会場から大きな拍手を浴びておられました。ネットで検索すると、とてもイケメン。

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アンティークのオペラグラスで覗いて観ていましたが、それでも小さくてよく分からなかったのですが、ネットで素顔を知って、俄ファンになっちゃいました。

第3幕が「祇園祭礼信仰記 金閣寺」。顔見世では初上演だそうです。私はこの作品が一番好きでした。降ってくる桜の花びらがひらひら舞ってとても美しかったです。中村鴈治郎さんが演じる謀反人松永大膳は、足利将軍の母慶寿院を金閣に幽閉します。この慶寿院を演じるのが、80歳の坂田藤十郎さん。松永大膳は、画家雪舟の孫雪姫を口説いています。この雪姫を演じるのが、藤十郎さんの孫の中村壱太郎さんで、とても美しいです。そこに扇雀さん演じる此下東吉が臣下に加わりたいとやってきます。もちろん東吉は秀吉がモデル。縄で縛られた雪姫が、爪先で桜の花びらを集め、鼠を描き出す「爪先鼠」の場面が秀逸で、見終わった今も目に焼き付いています。坂田藤十郎さんは、人間国宝であり、現在の歌舞伎界最高峰に立っておられます。ご本人、ご長男、次男、それにお孫さんと揃っての大役で見応えがありました。

第4幕「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」では、人間国宝の片岡仁左衛門さんが大星由良之助(史実の大石内蔵助のこと)を演じます。ご長男の片岡孝太郎さんが遊女お軽、孫の片岡千之助が由良之助長男の力弥役。京都で今も昔も有名な祇園一力茶屋を舞台にした演目。「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」と目隠しをして遊興にふける由良之助の元に、討ち入りへの参加を希望するお軽の兄平右衛門役で、八代目中村芝翫も登場します。

こうして振り返っていると、歴史の勉強にもなりますし、江戸時代の人々が喝采した文化だったことも体感として分かります。それは明治、大正、昭和、平成の時代を経て、令和の時代にも引き継がれていて、本当に素晴らしいことだと思います。

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良いものを見せて頂きました。これからの時代も連綿と歌舞伎を楽しむ文化が継承されることを願っています。顔見世興行はいよいよ26日に千穐楽。歌舞伎が京で発祥して400年だそうです。今日見聞した歌舞伎をスタートにして、もっと他の演目も観てみたいなぁと思っています。

 

 

 

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