おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2015.11.04column

朗読劇「或る『小倉日記』伝」、好評のうちに終了

文化の日の11月3日、劇団前進座の俳優さん3人による朗読劇「或る『小倉日記』伝」を開催しました。正に晴れの特異日で傘の出番がなかったのも幸いし、当日駆け込みで参加いただいたお客様が何人もおられました。狭い会場ですが、満席という有難い状況で、午後3時開演の時を待ちました。

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チリン、チリンの鈴の音色が静まり返った京町家に響き、出演の3人が登場し、着席。柳生さんのフルートのやさしい音色が続きます。演者は、向かって左から、津田恵一さん、浜名実貴さん、柳生啓介さん。今朝、浜名さんから届いたメールには「あんなにお客様と近いのも初めて。とても新鮮で楽しかったです」と綴られていました。本当に演者と客人の膝と膝がくっつきそうな至近距離で、プロの朗読を味わう贅沢さ!!!

鈴の音色は、この朗読劇の要。九州小倉地方独特の職業で、郵便より小回りが利く便利屋さん的な「伝便(でんびん)」の仕事をしているおじいさんが鳴らす鈴の音で、物語を貫く哀しい響きです。原作は松本清張の短編小説で、この作品で清張は第28回芥川賞を受賞し、小説家として世に出る契機となった作品です。朗読劇は、聞く方も集中力が必要なので、どの作品も1時間程度にまとめているのだそうです。登場人物に合わせて、少女から年配の女性まで、巧みに声を使い分け演じる浜名さんに、ぐいぐい引き込まれました。津田さんの心地良い声に惚れ惚れし、神経系の障害で片足が麻痺し、口が開いたままで言葉をうまくしゃべれない主人公・田上耕作を演じる柳生さんの真に迫ったセリフ回し…、目を閉じて聞き入ると、訪れたこともないのに小倉の山道やお寺などの情景が浮かんできます。これまで見聞きした自分が知っている風景に重ねて想像しているのです。

耕作がやっと見つけた夢を応援する母ふじが言ったセリフが心に沁みました。「夢が夢で終わってもいい。失敗してもいい。例え人様に役に立たないものでもいい。その夢に感謝していこう。やれるだけのことをやろう。人の何倍かかってもいい」というセリフを、暗い会場の片隅で書きとめました。そうしながら、涙がこぼれてきました。自分たち二人への応援メッセージではないかと思ったのです。

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終演後、残ってくださった方々と一緒に俳優さんを囲んで記念撮影会。良い思い出になりました。この中のお一人から今朝メールが届きました。「少し狭い空間があの朗読に『ピッタリ』なかなかの時間でした。前進座の著名な俳優がそこまでしなくてもと思うほどのサービス、これにも感動しました。朗読は毎年参加しています。次回もここの場所がいいですね」と。

二人で参加してくれた友人は、「生の朗読劇、初体験!良かったです。ありがとう。友人も『感動した!』と言っていました。来年の『夢千代日記』を観劇しようと話がまとまりました」と連絡してくれました。来年1月10~19日、京都四條南座で劇団前進座初春特別公演『夢千代日記』が開催され、今回出演いただいた津田恵一さんも出演されます。小さな京町家を舞台にでしたが、プロの公演を間近で見聞して演劇ファンになっていただけたなら、とてもうれしいことです。

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 京町家にかけられた劇団前進座の暖簾が秋風にそよいでいます。終演後のホッとしたひとこま。「次回もぜひ!」と言っていただきました。お願いできるよう私たちも頑張ります。浜名さんから「とても居心地の良い空間で私もすっかりおもちゃ映画ミュージアムのファンになりました。きっといろいろなことができますね。これからも可能性を探りながら、運営も大変だと思いますががんばってください。映画のみならず、京都の文化の拠点のひとつとして、益々発展されますように」という暖かい言葉を贈っていただきました。とても励みになります。

出演者の皆様、お忙しい中を参加いただいた皆様に、心から御礼申し上げます。

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