おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2026.03.01information

小冊子12『サイレント・コメディ映画研究 知られざる喜劇ヒストリー』完成と上映会のご案内

つい先日新年のお祝いを申していたのに、もう弥生三月に。先日来、12冊目の小冊子『サイレント・コメディ映画研究  知られざる喜劇ヒストリー』編集に没頭しておりましたが、今日3月1日刷り上がりました‼ 執筆してくださったのは、喜劇映画研究会二代目代表新野敏也(あらのとしや)さんです。

1頁目の冒頭に書いておられる「映画の歴史はコメディの歴史、コメディなくして映画は発展しなかった!」という説明を25ページにわたって力を込めて執筆して下さいました。写真もふんだんに使っていますので、眺めているだけでも楽しい一冊です。1895年12月28日、パリのグラン・カフェ地下にあったサロン・ナンディアンで始まった映画の上映から始まり、様々な人物を紹介しながら、1920年代アメリカ喜劇黄金時代までの歴史を辿ります。ぜひお手に取ってお読みください‼

発行を記念して、3月14日に新野さんご本人をお迎えして、7回目の「レーザーポインター映画教室」を開催します。『ミュージック・ボックス』など教室用に特別に用意された映像を用い、お得意のレーザーポインターをくるくる回しながら、映画の見どころを判りやすく解説して頂きます。

続いて、喜劇映画研究会所蔵のとても珍しいサイレント・コメディ映画3作品『前進!(Giddap)』(1925年)、『ワンダリング・ウィリーズ(Wanderring Willies)』(1926年)、『最後の連続活劇(Curses!)』(1925年)を、船戸博史さんのコントラバスの演奏付きで上映します。この3作品については、こちらで紹介していますので、ぜひクリックしてご覧ください。

そして、おまけとして当館が急遽用意したのが『スナブ北へ行く』(1923年)です。今年1月16日に来館いただいた福岡大学名誉教授平松信康先生から寄贈いただいたパテスコープ作品13作品の中の1作品です。パテスコープは、フランスのパテ社がイギリスで展開した9.5㎜フィルムのブランド名です。平松先生がイギリスに10年ほど滞在されていた折に、蚤の市で購入されたそうです。長く観る機会がないままに年月が経ったのですが、内容を観たいと来館いただきました。その折のことは、こちらで書いています。

他にも珍しい作品があったのですが、今回この作品を選んだのは、いつも新野さんが“歩く大寒波”と自称しておられるからです。全く外れではなく、これまでの「レーザーポインター映画教室」の折に雪が降って、みんなで雪だるまを作ったこともありましたから。『スナブ北へ行く』は、列車の行き先表示が誤っていたために乗り込んだ先がトンデモナイ雪降る極寒の地という設定です。

主人公を演じるのは、スナブ・ポラードで、小冊子表紙に載せた右上写真「磁石で走る自動車」に乗っている俳優さんです。その作品『It's a Gift』(1923年、当館にも所蔵)は彼の代表作の一つ。監督はチャールズ・パロット(後に喜劇役者として大成するチャーリー・チェイス)、製作はハル・ローチで、ハル・ローチ・スタジオ黄金期の一本です。この三人についても小冊子18~21頁で触れています。

スナブ・ポラード(1889~1962)はオーストラリアのメルボルンで生まれ、1920年代ハリウッドで人気を博したサイレント映画のコメディアン。長い顔に「下向きに垂れ下がった奇妙なカイゼル髭」がトレードマーク。サイレント時のみならず、トーキーに移行して後も俳優を続け、500本以上の作品に出演し、映画界に多大な貢献をしたことにより、存命中の1960年にハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム(ハリウッド殿堂)に、彼の星(☆)が刻まれました。丁度サイレント時代の功労者たちが改めて評価されていた時期でした。


『スナブ北へ行く』の一場面。寒い冬が大嫌いなスナブは、たまたま配布されていたチラシにフロリダが暖かいとあるのを目にして、「フロリダ行き」と書いてある列車に妻と幼い長男を伴って乗り込みます。でもその列車は実際にはICELAND行きでした…。当時多くの喜劇役者がチャップリンのちょび髭を真似していましたが、彼は「人と同じは嫌だ」と当時流行していた立派なカイゼル髭を逆さまにして貼り付けました。この髭が彼の面長な顔をより強調し、独特の情けない表情を作り出し、ドタバタ劇にマッチしたのです。

ハル・ローチ製作の『スナブ北へ行く』の原題は『A Tough Winter』(厳しい冬の意)で、上掲をIMDbで検索しました。ハル・ローチ製作作品のスナブ・ポラードの短編は、1920年代前半に日本でもパス・エクスチェンジ社やMGMなどを通じて大量に輸入されていました。その時に、『スナブの厳冬』などの邦題を付けて浅草の活動写真館などで長編映画の併映として上映されていたのでしょう。イギリスでも人気で、家庭用にパテスコープ(9.5㎜)として販売された一本が改題された『SNUB GOES NORTH』でした。100年の時を経て、アメリカで誕生したサイレント・コメディ映画が、9.5㎜版として英国家庭で楽しまれ、それが巡り巡って日本の当館でご覧いただく映画漂流記。面白い作品なので、きっとパテ・ベビー版として伴野文三郎商店などから日本でも販売されていたのではないかと思います。

1923年と言えば、関東大震災があった年。大変な時代でしたが、スナブ・ポラードの作品は、チャップリンと並んで「休憩時間の定番」として欠かせない存在でした。1月16日に出会った平松先生から寄贈を受け、スキャナーでデジタル化し、その成果物を3月14日に船戸さんのコントラバス生演奏付きで鑑賞できるスピード感‼ 100年前アメリカ、イギリス、日本を始め当時の世界中の人々が享受した様子に想像を巡らせながら一緒に楽しみましょう。

定員は24名で、参加費は2000円(別に要入館料)。お申し込みは電話:075-496-8008(金曜~月曜)か電子メール:info@toyfilm-museum.jpでお願いいたします。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

 

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