おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2022.02.17infomation

3月の第17回大阪アジアン映画祭で、『おもちゃ映画で見た日中戦争』を生演奏で上映‼

             満洲事変映画『錦州方面』の映像から

昨年10月の京都国際映画祭でオンライン無料配信した『玩具映画で見た昭和  日中戦争』(38分のパイロット版)には、映像をご覧頂いた方から多くの反響があり手応えを感じました。その後所蔵するフィルムを加えて再編集し、このほど94分の作品に仕上げました。タイトルは少し変えて『おもちゃ映画で見た日中戦争』にしました。

この作品を、3月10~20日に開催される第17回大阪アジアン映画祭で上映していただけることになりましたので、ご案内いたします。今日17日午後に同映画祭サイトで上映される全作品が公表され、本作品は“インディ・フォーラム部門《特別上映》世界初上映”と載っていました。まだ上映日時と会場までは公表されていませんので、わかり次第改めてお知らせします。同映画祭初めてのピアノ生演奏付きでの上映となります。

コロナ禍で来館者が少ない日々が長く続いていますが、この期間を利用して所蔵するフィルムの整理を進めています。昨年、そうしたフィルムの中に、日中戦争に従軍し、彼の地で戦病死した山中貞雄監督そっくりの人物が映っていることに気が付きました。何度も見ているうちに、次第に山中監督がどのような状況で亡くなったのか知りたいと思うようになりました。所蔵する映像には、様々な事件や戦争に関するニュース映像もあります。フィルムを整理しているうちに、いかに日中戦争に至ったのかが興味の対象になってきました。

これまでも国産アニメーションが、単に奇抜な発想で作られているだけでなく、戦争を美化したプロパガンダ映画になっていることも気になっていました。アニメーションやニュース映像を当時の事件や状況に関連させて整理すると、忘れられた昭和史の一面が見えてきます。

最近の新聞報道によれば、アメリカ大統領補佐官が「ロシアによるウクライナ侵攻は(20日まで開催中の)オリンピック期間中もあり得る」と述べたそうです。緊迫の状況にある今、再び戦争という過ちを起こさないためにも、歴史から学ぶことが大切です。

タイトルに付けた“おもちゃ映画”は、1920年代後半から30年代初めの昭和初頭、映画館での上映後に面白い部分を切って家庭用に販売していたフィルムのことを指します。それを見るための手回し映写機と一緒にデパートの玩具売り場で売られていました。時代劇の剣劇シーンやニュース映像などの実写映像、アニメーションもありましたが、アニメーションの中には、最初から“おもちゃ映画”として作られているものもありました。記録映像の中には、昭和天皇御大礼や満洲事変(上掲写真はその一部)など貴重なものがあります。

             上海事変報道『上海総攻撃』の映像から

映像を見ていただいた研究者の多くが、「写真では見たことがあるが、動く映像は珍しい」と興味を示してくださいました。その中のお一人、フィルムアーキビストとちぎあきらさんが、パイロット版をご覧になっての感想を昨年10月16日付けFacebookで書いておられましたので、許可を得てご紹介します。

「……木村白山による203高地に材を取ったアニメ『日の丸は輝く』から始まるところも、なかなかシャレが効いていますが、私には、ニュース、時代劇、アニメというジャンルが主流であった“玩具映画”という家庭用メディアにおいても、1920年代の皇室報道が30年代からの戦局報道へと転回していく流れを知ることができる、というのが発見でもありました。その意味でも、作品半ばに登場する満洲・大連のホームムービーは、満洲事変前夜、満洲国建国前夜という時代の日本人社会での家庭生活を描いていて、とても興味を覚えました。90分にもなるという完成版を楽しみにしています!……」

           アニメーション『錦洲城一番乗り』(作者不詳)から

         日活映画『誉れはたかし爆弾三勇士』(木藤茂監督)から

         中国戦線『南支北部作戦-英徳・翁源占領』の映像から

戦争はついつい美化されて報道されますが、現地では悲惨です。兵隊たちも、自然要塞化した道なき道を兵器や野戦砲などを分解して運びます。亀井文夫監督の『戦ふ兵隊』(1939年)は「疲れた兵隊」と揶揄されたそうですが、華やかな戦闘シーンは劇映画の中だけで、実際には上記の場面映像のように、道なき道を物資を担いで進行しています。山中貞雄監督も、1週間も泥水の中を進軍し、その中で急性の腸炎を起こし、悪化して戦病死したと伝えられています。28歳の若さでした。ニュース映像には、兵隊たちの万歳三唱が映されています。占領を祝う記念撮影の意味もありますが、戦地から故郷の家族へ、自分が生きていることを伝えるためでもあったのです。

新型コロナウイルスの感染者数が恐ろしいことになっていますが、できるだけ多くの方にご覧頂きたいです。そして、この映画製作にあたりまして、研究者の方など本当に多くの方に助言を賜りました。ここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました‼

【2月20日追記】

2月20日14時、第17回大阪アジアン映画祭の上映スケジュールが発表されました。上掲『おもちゃ映画で見た日中戦争』は、3月15日15:40~、ABCホール(大阪市福島区)で上映です。お出掛けにくい状況ではありますが、ご都合良ければぜひご覧下さい!!!!!

戦争プロパガンダ研究をされている河田隆史さんは「未公開の貴重な映像がたくさんあります。特に大阪での演習風景や第37連隊の内務省・訓練など超珍しいと思います。在阪の15年戦争に関心ある方に是非お勧めします」とコメントを寄せて下さいました。

 

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