おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.07.14column

外山雄三氏訃報と作曲で参画されたミュージカル及び映画『祇園祭』

今朝の京都新聞で、指揮者で作曲家の外山雄三さんの訃報を知りました。病気で亡くなったのは11日夜のことだそうです。長野県にお住まいだったのですね。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

7月は京の夏の風物詩「祇園祭」に関する展示をしています。外山雄三さんは、1968年に作られた映画『祇園祭』(日本映画復興協会)に先駆けて1966年2月に、大阪労音が発足15周年記念して公演したミュージカル「祇園祭」の作曲も担当されました。1965年秋の日刊スポーツ記事に、脚本と歌詞を担当された依田義賢先生の隣に外山さん、初のミュージカル主演の島倉千代子さん(コロムビア)、立川澄人さん(二期会)、写ってはいませんが演出の増見利清さんらが揃って記者会見している写真が載っています。

依田先生は「原作では男の方が死ぬのだが、ミュージカルでは島倉さんが矢に当って死んでもらうことにした」と話し、外山さんは「島倉さんの声が気に入って押した。立川さん(バリトン)とも合うと思う」と記事にあります。読売新聞1966年1月5日付け新聞では、外山さんから「『あなた以外に適役はいない』といわれた言葉しか耳に残っていません」と島倉さんへのインタビュー記事が載っています。どんなミュージカルだったか録音テープがあれば聞いてみたいものです。ちなみにYouTubeで島倉さんがミュージカル『祇園祭』の主題歌『あやめ』を歌っておられるのを聞くことが出来ます。https://www.youtube.com/watch?v=hIhpLeF_Q7c(8:35~、1982年12月19日)

と、ここまで書いて、大阪労音(現在の大阪新音)の圓山さんに今日電話でお尋ねしたところ、資料を整理していたところ録音テープ(非公開)が出てきたそうです。それによると以前圓山さんから送って頂いた1965年10月15日大阪労音運営委員会が発行したシナリオ〈祇園祭〉とは異なり、原作小説の通り主人公の“新吉”が死んでいるそうです。その理由まではわかっていなくて、①依田先生の脚本では長かったので、短くする必要から“新吉”に死んでもらった②原作者の西口克己が変更を許さなかった③そのほかの理由 が考えられるとのこと。新聞記事によれば、外山さんは今年5月の公演中に体調を崩されるまではお元気だったようですから、何らかの伝手があれば生前に事情を聞いてみたかったなぁという思いが募ります。全く惜しいことです。

展示している日本映画復興協会製作(協力 京都府・京都市)の冊子『映画 祇園祭』に載っている各界からの「映画『祇園祭』に寄せる期待」の中に、京都市交響楽団常任指揮者(当時)外山雄三さんがこの経験を踏まえて綴った文章も載っています。

……(略)私はこの『祇園祭』とのつきあいを通じて、単に音楽上のことだけでなく、さまざまなことを、ずいぶん学びました。そして、何より私たちのような、ごくありきたりの、しごく平凡な市民の力が、いったいどんなものであるかについて、深く考えさせられました。(略)……

と書いておられます。この小冊子が作られた時点では監督は伊藤大輔さんなので、後のすったもんだは関係ありません。京都府・市民が力を合わせ、みんなが前を向いて、良い作品を作ろうと団結していた頃に編まれたものです。外山さん自体は、その後の顛末をどのように見ておられたのでしょうか?キネ旬論争には外山さんは登場されていませんので、黙して語らずだったのかもしれませんが、年月も相当経ったことでもあり、こっそり聞いて見たかったなぁという思いは、それが叶わないと分かったことでもあり、一層強まります。

映画の場合は、2006~2007年太田米男が大阪芸術大学(塚本学院教育研究補助費)の助成を受けて『祇園祭』を復元した折、ニュープリントの試写後に伊藤監督降板後を引き継いだ山内鉄也監督から「原作者西口克己のお墨付きを得た脚本家から『シナリオを一字一句変えるな』『訴訟も辞さない』という態度」の中での仕事だったと聞いています(京都大学人文科学研究所 人文研アカデミー2018・公開シンポジウム「映画『祇園祭』と京都」報告書)。

7月の展示には、祇園祭に関してこれまでご覧頂いた中から選んだ資料の他に、NHKドラマ『京都人の密かな愉しみ』(2019年)で主演した林 遣都さん用に放下鉾保存会が提供した浴衣(撮影に協力された同保存会より寄贈頂きました)、山鉾巡行を描いた四曲一隻の屏風などを新しく展示に加えています。また、「京都ニュース」で見る祇園祭として、№1~№215まで記録された祇園祭の映像11作品を常時ご覧頂けるようにもしています。

一番最後の写真の右奥に映画祇園祭製作上映協力会ニュースを第1号~第5号まで掲示していますが、そのうち第3号が見つかっていません。それ以降も発行されていたかもしれません。どなたか、この協力会ニュースをお持ちではないでしょうか?もし、お手元にございましたら、ぜひご連絡をお願いいたします‼

放下鉾保存会堀 真也様から、今年のチマキを頂きました。いつもご親切にしていただきありがとうございます。今年は12月に山鉾町の人たちにも研究バージョンを見て頂くイベントをしたいなぁと思っています。どうぞ、今年の山鉾巡行が雨にも遭わず、無事に催行できますように。

 

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