おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.04.14column

この一年を振り返り

一昨日の休みを利用して、これまでの活動記録を綴っていました。書き始めは2014 年4月1日に開始したWEB上の「おもちゃ映画ミュージアム準備室」。3日まで開催していた企画展で、たくさんの珍しいコレクションを紹介し、可愛らしいチラシも作ってくださった東京の西岡さんは、「自分と同じ趣味の人がいる」と感じて、この「準備室」ができた時からご覧になっていたそうです。今では、とっても頼りにしている仲間で、ありがたい存在です。

昔のフィルムが劣化に向かっているのは確実なので、少しでも早く救出して、復元しなければ貴重な映像文化が後世に残せない。そのためにも拠点が必要だと考え、昨年8月8日には代表が京都市長さんに面会し、公立の映画博物館建設をお願いしました。厳しい経済情勢下でもあり、陳情したからといって、すぐに叶うものではなく、仕方なしに取りあえずの拠点を作ろうと物件探しが始まりました。

そうして、10月5日に物件を下見。この日は亡父と長男の誕生日でもあり、勝手に縁があったと思い、また天井が高く、広い空間があるのも気に入って、契約を決めました。それからの日々は、マメにパソコンで「町家再生ヒストリー」として綴っていたのですが、そのパソコンが昨年突然ブルースクリーンになって初期化せざるを得なくなり、しかもバックアップをしたつもりが、それも失敗し…と全くのトホホ状態に。この記録が残っていれば、そのまま書き続けていたので、活動振り返り作業も簡単だったのでしょうが、残念。

12日に書きながら見ていたN.H.K.「スタジオパークからこんにちは」のゲストは、石井竜也さん。彼が「今はCDが売れない時代。昔はジャケット買いなどもしていて、持っていることが自慢だったけど、ネット社会になり、音は宙を飛んでいる」というようなことを話されていました。映像もすっかりデジタル化し、どこかに映像はあると皆が思い込んでいる節がありますが、果たしてそうなのかしら?映像も未来にむけて非常に価値があると判断されたものは、手間と多額のお金をかけてでも、媒体が変わるたびに更新されていくのでしょうが、圧倒的なそうでないものは、いつの間にか消失ということになるのかもしれません。「モノ」という形があれば、如何様にも活用できるのに…。結局機械に疎い私が頼りにしたのも、昔ながらの手書きの日記帳、スクラップブック、ファイルの類。

たくさんの人々と出会い、励ましてもらい、力を貸していただきました。所蔵している映像がテレビなどで活用され、公共の役に立てたことも嬉しいです。報道を通してミュージアムの存在を知った人々が、身近にあった古い映像を持参され、一緒に拝見する喜びの場に立ち会えたことも多々ありました。そうした中から日本映画史に新たな1ページを加えることになった作品もあります。例えば、1年前の4月9日に掲載された日経新聞文化面の記事をご覧になった熊本の方から届いたフィルム。昨年大きな話題となった尾上松之助最晩年の『実録忠臣蔵』(パテベビー完全版)と阪妻・立花・ユニヴァーサル聯合映画『当世新世帯』(1927年4月公開。日本とアメリカとの合併による会社の作品)が含まれていました。前者は、京都国際映画祭2015に於いて大江能楽堂で薩摩琵琶の演奏付きで活弁上映されたのを皮切りに、12月12日に当館で上映、今年1月9日には早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携拠点公募研究成果報告会「無声期の映画館と映画」でも上映されました。更に7月14~24日に開催されるアメリカのジャパンソサエティー「ジャパン・カッツ!」で上映の予定です。新作日本映画祭「ジャパン・カッツ!」は今年10周年を迎え、昨年からクラシックやリマスター作品が紹介される部門が設けられ、そこでの上映となります。

『当世新世帯』は昨年9月5日にWOWWOWドキュメンタリー番組「ノンフィクションW 阪東妻三郎 発掘されたフィルムの謎~世界進出の夢と野望」で紹介されました。この作品が見つかったことで、阪妻が世界進出への野望を持っていたという一面を知ることができたのです。

日経新聞報道から1年後の4月10日に、熊本から寄贈者とその2人のご兄弟、それぞれの奥様の6人が来館。亡きお父様が若いころに撮影された家族の映像などをご覧いただきました。本当は大江能楽堂での「松ちゃん」上映を一番に観ていただきたかったのですが、こうした家族が映っている映像こそ希望されていたのだとわかりました。偶然4月2日午前4時5分から放送されたNHK「ラジオ深夜便」の放送もお聴き頂いたようで、「古い映画への熱い情熱が感じられ、このような処へ寄贈させていただいて、全くの良縁だったと喜んでいる」とメールを送っていただきました。10日に直接お目にかかってお礼を言えたことが何よりの喜びでした。

4月16日の「無声映画の昼べ」で上映する「床屋のココさん」は、アニメと実写が混在した面白い作品ですが、これも京都市内の方から持ち込まれたフィルムの中から見つかったものです。今年7月15日夜には、当館所蔵で1913(大正2)年に撮影された「祇園の山鉾」巡行映像(現段階で最古の祇園祭の動画)と共に、この方から提供いただいた昭和5~6年の祇園祭の映像を「祇園天幕映画祭」(祇園商店街)で上映できることになりました。昨年7月26日に開催された「台北映画祭」星空上映に続いての野外上映になり、夢が叶って大変嬉しいです。映像の下見に来られた実行委員の方々が、食い入るように観て、喜んでおられたのが印象的でした。地域のアーカイブに役立つことができるのも大きな喜びです。

民間が拠点を維持するのは、正直とても大変なことですが、それでもイベントをし、その後の交流の場を設けることで、映像を保存する意義を広く知ってもらい、意識を高めてもらう一助になればいいと願っています。更にはそうした取り組みから、先に例を挙げたような貴重な映像発掘に繋がれば、苦労も軽くなろうというもの。自然素材のクレヨンと絵具を用いた作家さんたちによるイベント、現像のワークショップ、自作アニメーションの上映会、講演会など、少しずつホールを活用したイベントの持ち込みもあります。今年は、より一層活気にあふれたミュージアムにできるよう頑張りますので、どうぞ皆様、今後とも温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 

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