おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.05.30column

大阪芸大映像学科卒業生たちの活躍

ご紹介が遅くなりましたが、昨夏「戦後76年、戦争パネル展『戦争の真実』」をした折に、ドキュメンタリー映画『日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人』(42分版、第26回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞作)を毎日14時からご覧いただきました。その映画を監督された上掲写真左の小原浩靖さんが5月12日に初来館。大阪芸大映像学科V82で、連れ合いとは約30年ぶりの再会に。そして新作『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』が9月に東京のポレポレ東中野で公開され、以降も各地で上映されるそうです。

現在、チラシ裏面右下にありますように、MOTION GALLERYによるクラウドファンディング実施中で、残り72日だそうです。詳しくはこちらをお読みください。今度も河合弘之弁護士とのタッグなんですね。関西でも上映できるようご支援を宜しくお願いいたします。

そして、28日付け京都新聞に6段の大きな扱いの記事で紹介されていたのが部落差別に迫ったドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』と監督の満若勇咲さん。先日京都シネマで『教育と愛国』を観に行った時に、大きなポスターが貼ってありましたが、その時は大阪芸大映像学科卒業生(V05)だとは気付かずにいて。記事を読んで「そうなんだ!」と分かり、28日京都みなみ会館で午後0時45分の回上映後に満若監督と映画に登場される山内正夫さんの対談があると知って、早速出かけました。

私が最後の1席だったようで、最前列の左端席。満員のお客様でした。

上映後のお二人の対談の様子。お若い監督さんで、しかも声の調子とか話し方がとても穏やかで丁寧な印象がありました。デリケートな話なのに、相手の話に謙虚に耳を傾けておられる姿勢が、きっとインタビューを受ける側の人に伝わって、お顔を出し、実名で応じておられるのだと思いました。取材には6年間費やされたそうです。差別の歴史と今につながる問題を丁寧に描こうと注力されたため3時間25分という長尺の作品になりましたが、20数名の貴重な体験が綴られています。

京都の八幡市出身で、2007年全国紙で大きく『にくのひと』のことが報じされているのを読んで、大阪芸大映像学科に満若さんという学生さんがおられることを知りました。兵庫県内の食肉処理場で働く人々を撮影した作品とは聞いていましたが、実際には観ていません。作品は第1回田原総一朗ノンフィクション賞を受賞しましたが、地元の部落解放同盟から抗議を受けて、地域との関係が崩れて劇場公開を断念されました。その時の経験から、抗議した人々が抱く感情の背景にある歴史や積み重ねた思いをちゃんと取り上げなければならないと思って、今回の作品に取り組まれたのだそうです。

横道にそれますが、近くの「えほん館むむむ」で手に取ってみた『屠場』は、結構衝撃的でした。今も、“その時”を察した牛の目が忘れられなくて。映画を見ずに言うのも何ですが、『にくのひと』を撮った監督が、こんな穏やかで静かで、失礼ながら可愛らしい若者だったことに正直驚きました。

そして、今日30日京都新聞夕刊にも大きくこの作品のことが載っていました。

個人的なことですが、18歳で富山から京都に出てきて寮生活をしていたのですが、先輩が小声で「あの人はこれやで」と手指の表現をされたので、「それ何ですか?」と質問し、居合わせた皆が一瞬凍り付いた場になったことがありました。それが部落問題について初めて知った瞬間でした。寮を出て一人暮らしをした下宿には、部落出身者との結婚を反対された女性が駆け落ちして暮らしていました。

何ら自分たちと変わりがない普通の人たちなのに何で謂れのない差別を受けなければならないのかとずっと思っていましたが、自分の結婚に際し、挙式の日準備をしている美容室で姑から「調査はしていませんのえ」と言われた時、京都に根強く残っている部落差別に唖然としたものです。そして、つい先日もお会いした方から、お身内の方が部落出身者と結婚されたそうで、その方の「言い方がキツイ」という言葉を聞いたばかり。いい加減この問題を払拭すべきではないかと思っていた矢先にこの映画との出会いがありました。ぜひ、多くの方にご覧いただき、考えてもらいたいです。

そして、もう一人、林けんじろうさん(V93)からも連絡がありました。当館も登場する小説『星屑すぴりっと』(講談社児童文学賞新人賞受賞作)が、いよいよ8月23日出版されるそうです。ジュニア冒険小説大賞に輝いた『ろくぶんのナナ』(岩崎書店)に続いての受賞作出版です。写真は今年1月9日受賞の報告に来ていただいた折に撮ったもので、ブログはここに。今から真新しい本を手にする瞬間をとても楽しみに待っています。

他にも、大阪芸大放送学科卒業ですが、今は映像学科で教えておられる映画監督の三原光尋さんも当館で作品上映会を計画して下さっています。長引くコロナ禍で芸術の表現が難しい日々が続いていますが、それぞれの皆さんが工夫しながら一生懸命作品作りに取り組んでおられる様子を頼もしく、誇りに思います。出版や、映画上映会の詳細が分かり次第、改めてご案内いたします。

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