2022.12.15column
朝日新聞「ポッドキャスト」で『おもちゃ映画で見た日中戦争』を取り上げて頂きました‼
朝日新聞が始めた音声番組「ポッドキャスト」。既にお聞きになっておられる方も多いでしょう。朝日新聞の最近の話題になった記事を書いた記者さんをスタジオにお呼びして、キャスターの仲程雄平さんがMCとなって、もっと詳しく話をお聞きするという番組です。その中で毎週土曜日「ディープ日本史」という番組を担当しておられる向平真記者さんが、私どもが取り組んで発表したドキュメンタリー映画『おもちゃ映画で見た日中戦争』を取り上げて下さいました。12月3日に配信が開始され、今も登録なしで無料で聞くことができますので、今回はそのご紹介です。
向平記者さんは、戦後77年ということで、今年9月6日に朝日新聞デジタル版で「おもちゃ映画で見た日中戦争」を取り上げて報道して下さいましたが、後輩にあたる仲程さんが、「歴史もの」繋がりで、この作品についてより詳しく話しを聞こうと企画して下さったのだそうです。11月11日に「ケツレーおじさんが語るおもちゃ映画 重なる日中戦争とウクライナ侵攻#934」のタイトルで収録されました。
取り上げて下さった『おもちゃ映画で見た日中戦争』については、昨年10月に開催した京都国際映画祭2021で『おもちゃ映画で見た日中戦争』のパイロット版として無料上映して紹介したのが最初で、今年3月15日の第17回大阪アジアン映画祭でピアノの生演奏付きで世界初上映しました。番組で向平さんが取り上げて下さったのは、1時間30分のこのバージョンのことを指します。
太平洋戦争開戦から終戦までの映像は数多く残っているのですが、1931(昭和6)年から始まった日中戦争(15年戦争)の映像はほとんどと言っていいほど残っていません。フィルムが高かったので乳剤を再塗布して再利用したことや、火災や自然災害、もちろん戦火でなくなったこともありますが、劇場での上映が終わると玩具会社などに販売したことも残っていない一因だと思われます。
「おもちゃ映画」というのは、玩具映写機を販売するために、劇場で上映されたフィルムの面白い部分を30秒から長くて3分ほどに切って販売されたもののことを言います。ライオン、キング、朝日フィルム、大毎グラフ、日の丸、桜グラフなどの玩具の会社が化粧缶などに入れてデパートの玩具売り場などで販売しました。国産動画には時代劇、戦争もの、動物漫画などがあり、海外動画には人気だったドラマやアニメーションもあります。この時期は小型映画が登場した時代でもあることから、『おもちゃ映画で見た日中戦争』製作に当たっては、おもちゃ映画を主にしながら、その時代を記録したパテ・ベビー(9・5㎜)で撮影されたホームムービーも加え、約50本の映像を時系列に並べて、昭和の歴史的出来事を字幕で補う方法で構成しました。
戦前の日本が、いかに欧米の列強と競うように中国大陸へ侵略していったのか、沖縄戦や広島や長崎の原爆で悲惨な結末となった太平洋戦争という泥沼に如何に巻き込まれていったのかを、当館にあるアーカイブ映像を用いて、負の歴史である『日中戦争』という昭和の近代史を再考するドキュメンタリー映像を作ろうと取り組んだ作品です。この試みが昭和の近代史を検証することに多少なりとも貢献できれば幸いです。
向平記者さんは、大阪アジアン映画祭前月に突如始まったロシアのウクライナ軍事侵攻が、『おもちゃ映画で見た日中戦争』に重なるように感じて、記事にして下さいました。さらに、こうして音声番組でも取り上げて下さったことが嬉しいです。戦時下であったことで、たとえ子ども向け映画であっても時代の空気がどうしても表現されますし、皇室報道が如何に戦意高揚に結び付けられていたのかもわかります。
当時の生活感が残ったままの映像をできるだけ編集しないでご覧いただくようにしました。事実のみを正しく伝えようと努め、多くの昭和史や軍事的専門家の皆様のお力添えを賜りました。軍靴の足音がするプロパガンダ的な要素が多いと思われがちですが、人々の表情が意外に明るい点や、戦争の暗さを感じさせない生活の様子に救われる思いもしますが、それがなぜ戦争に結び付いていったのか―、そんな事実を留めた歴史的背景をこれらの映像から感じていただければありがたいです。
外敵から国民の命を守るという目的で軍事を充実させようとする今の政府の在り方は、如何に危険な施策なのかを感じ取っていただきたいです。軍事力の強化が戦争から国民を守るということに繋がらず、逆に危うい状態に追いやることになるのかを、『おもちゃ映画で見る日中戦争』から感じていただければ、と願っています。ぜひ「ケツレーおじさんが語るおもちゃ映画 重なる日中戦争とウクライナ侵攻#934」をクリックしてお聞きください‼
【後日追記】
向平さんによれば、番組をお聞きいただいた方から「どうやったら、この映画をみられるのか?」という質問が寄せられているそうです。現在は、海外で催される映画祭で生演奏付き上映されることを目指し修正作業中ですので、幸いにしてそれが叶った後に広くご覧いただけるようになれば良いと思っています。その後は各学校の授業に、また各図書館で活用していただけるようになれば、作った甲斐があるとも思っています。