おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.08.20column

以史為鑑-歴史を鏡にー

京都新聞に掲載された8月18日付け(上)に続き、19日付け(下)を読みました。先日滋賀県の三日月大造知事が中国の湖南省懐化市で行われた初めての平和祈念行事で花を手向ける記事を読んだので、今回の連載を関心を持って読みました。

8月6日に講演をしてくださった木下惠介記念館担当キュレーター戴 周杰さんは、この平和祈念行事が行われた湖南省の出身。大きな国なので「湖南省」と聞いても、ピンときませんが戴さんによれば「毛沢東の地元でもあるので、中国人にとっては特別な場所かもしれません」。

洞庭湖の南に位置するので「湖南省」。この「洞庭湖」と滋賀県の「琵琶湖」が国を代表する大きな湖ということで友好関係を結んで40周年になるのだそうです。近現代史を余り教わって来なかったこともありよくわからなかったのですが、日中戦争末期の1944年、日本軍は湖南省の長沙(湖南省の省都で湖南・貴州・広西の三省鉄道と広東―武漢鉄道の重要な分岐点に位置)と衡陽(三省鉄道の上にあり、広東―武漢鉄道に非常に近い位置)へと二度侵攻しています。中国軍の激しい抵抗で日本・中国とも多くの戦死者を出した激戦の地でした。

三日月知事は「滋賀県と湖南省が未来に向けた平和交流を始める出発点だ」と宣言し、湖南省懐化市の黎春秋市長と握手を交わしたそうです。記事の大見出しは「こじ開けた『タブーの扉』」。両国の歴史認識問題などで、これまで慰霊を希望する遺族が多くても、政府による慰霊碑建立や戦死者の遺骨収集はほとんど行われていない現状があります。子どもの頃に、たった一人で旧満州から帰国した黒田雅夫さんが、ずっと願っておられることは、何とか彼の地で慰霊をして、亡くなった人々の遺骨を持ち帰って欲しいということです。

三日月知事のコメントが良いです、「今の時代が新たな戦前にならないよう、人と人との関係をつなぎたい」。それに応えた黎市長のコメントも「過去を振り返ることで未来が分かる。皆さんの心の中に平和と友好の種が植えられ、たくさん実ることを期待している」と素晴らしいです‼これが記事見出しの「史を以て鑑と為す」なのですね。

戴 周杰さんが北京電影学院を卒業したのち、東京藝大大学院で学ぶことを選んだ時、ご家族は「なぜ日本か」と反対されたそうです。「長沙の戦い」「衛陽の戦い」のことも知らなかったので、漠然とかつての戦争で日本が中国大陸でやった戦争に対する嫌悪感で仕方ないことと思っていましたが、今度の記事でより理解できました。記事によれば、日中戦争の戦場となった中国本土では約46万人の日本人が亡くなったとされるそうです。一方の中国での犠牲者数は敢えて書かれなかったのかもしれませんが、これより遥かに多いです。

戴 周杰さんの知的でチャーミングな笑顔も、「タブー」とされてきた日中の扉を開けることに繋がっています。笑顔と笑顔で「民際」による友好関係をこれからも繋いでいきたいと改めて思った次第です。

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