おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.09.09column

寄贈本の紹介

何冊か本の寄贈がありますので、ご紹介の怠慢をお詫びしつつ、新しい順にご案内します。

7日に京都大学人文科学研究所の高木博志教授から届いたばかりの『近代京都と文化―「伝統」の再構築―』(思文閣出版、2023年8月31日)。同研究所の研究報告集で、657頁の後に索引も付いているので大変分厚くて読み応えのある1冊です。2017年~2021年にかけて研究班の活動も書いてあり、本書はその研究報告集です。表紙カバーの折り返しには「『京舞妓』、『おもてなしの文化』、『雅な貴族文化』など、バラ色の表象がひしめく京都文化。だが、これらの京都イメージは、近現代を通じて、政治的・社会的に、近世以来の『伝統』を基にしながらも再構築し創り出された側面が強い。本書では、近代京都をめぐるさまざまな文化を研究対象に取り上げ、その歴史的淵源を探るとともに、既存の観光言説や、『京都文化』論の相対化を試みる」と書いてあります。

映画関係でいえば「Ⅰ ロマン主義と花街」の冨田美香さん(国立映画アーカイブ主任研究員)や木下千花さん(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)の研究でしょう。冨田さんの「マキノ映画にみる京都の花街・舞妓表象」には副題がついていて「万国博覧会から『祇園小唄 絵日傘 第一話 舞ひの袖』(1930 年)へ」。木下さんの「戦後日本映画における島原」の副題は「反ロマン主義的ポトスとして」が付いていて、『噂の女』『太夫さんより 女体は哀しく』『廓育ち』を取り上げておられます。

私自身がページを繰りながら興味を持ったのは、第11章のジョン・ブリーンさん(国際日本文化研究センター名誉教授)の「歴史を演じる―祝祭とページェントの近代京都」と第19章北野裕子さん(龍谷大学経済学部・大阪樟蔭女子大学非常勤講師)の「近代京都染織業と近江商人系商店ー拡大の実態と染呉服の大衆化」でしょうか。時間をしっかりとって読もうと思います。皆様其々関心事は異なりますから、目に留まった項目がございましたら、是非図書館に予約するなどしてお読み下さればと思います。

8月5日、東京都写真美術館から寄贈頂いた「TOPコレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」展の図録です。10月15日まで開催中で、チラシを下に載せます。

関連イベントもあるようですので、同美術館HPでご確認ください。9月24日には3月に当館で幻燈機をテーマにお話をしてくださった草原真知子先生と細馬宏通先生が揃って登壇されるようです。近ければ参加したいところですが…。見学をお勧めした人は、皆さん「良かった!」と仰っています。

7月20日フランスから来日されたオリアン・シードルさんから届いた、パリにある映画博物館“シネマテーク・フランセーズ”の図録。ページを繰って眺めているだけでも楽しい1冊です。本当は古いラディスラフ・スタレヴィッチ監督『狐物語』の日本語訳をしていただいたお礼を直接言いたかったのですが、岡村弦太さんのお父様がコロナに感染されたので、他の人に感染させないようにと来館取りやめに。お目にかかることが出来ず残念でした。お二人には本当に難しい仕事をボランティアで引き受けて下さり、感謝で一杯です。全くの偶然ですが、今お二人はスタレヴィッチ監督アトリエの近くにお住まいなのだそうです。ご縁があったのですね。

そして、7月10日に寄贈頂いた吉田はるみさんの『アリスのいた映画史』。若い女性だったが故に長い間映画史から漏れていたアリス・ギイ。その彼女が辿った軌跡が綴られていて面白いです。SNSでは紹介したのですが、ブログで書いていなかったので今頃になって申し分けないです。以前、共通の友人から吉田さんを紹介して頂き、「アリス・ギイの本が出たら、ぜひ講演して下さい」とお願いしていました。それが10月14日(土)に京都国際映画祭2023でのプログラムとして実現します。当日は、Facebookで交流がある映画資料コレクターさんから提供いただいたアリスがアメリカ時代に作った5作品を坂本頼光さんの活弁と天宮遥さんのピアノ演奏付きで上映し、引き続いて吉田さんにお話して頂きます。詳細は後日改めてさせていただきますので、どうぞお楽しみになさってください💗

4月12日、東北大学大学院情報科学研究科特任助教の王 楽さんから寄贈頂いた『満洲国における宣撫活動のメディア史ー満鉄・関東軍による農村部多民族支配のための文化的工作ー』(公益財団法人新聞通信調査会)。こちらも頂いてすぐにSNSで紹介したのですが、ブログで紹介できないでいましたので「遅ればせながら」で恐縮です。

たまたま2019年骨董市で見つけた満洲移民促進を目的に作られたと思える映像を入手して以降、「満洲国」を考える、さらにはシベリアへ抑留された人々のことを考える展示と催しを重ねてきました。ですので、この本のタイトルには興味を抱きます。
 
当館が協力した漫画映画の静止画『のらくろ鬼中尉とミッキーマウス 芝居騒動』は第四章「各地域における宣撫宣伝活動の実践例」の第二節「多民族文化地域への拡散―北満における蒙古族のラマ教廟会」の4「講演と映画の交替実施」のところに掲載されていました。
 
講演を嫌う蒙古人大衆がその場を離れず講演を聞くようにするために、講演と文化映画、ニュース映画、漫画映画を交互に実施し花火なども用いていたようです。1938年の廟会では「支那事変のニュース映画」も上映しているとありますので、当館が所蔵する支那事変の映像もその一つかもしれないと思いました。
 
 
もっと早くに頂戴しながら、紹介するタイミングを逃していたことを気にしていた『マンガメディア文化論―フレームを越えて生きる方法―』。昨年7月24日に紙屋牧子さんの研究発表「映画『祇園祭』論争とは何だったのか―伊藤大輔の降板をめぐって」を開催した折に執筆者のお一人、鷲谷花さん(大阪国際児童文学振興財団特別専門員)から頂戴しました。
 
 
一年以上経っての紹介になってしまったので、お子さんもさぞかし大きくなっていることでしょう。コロナ感染予防が言われていた頃なのでマスク姿。鷲谷さんの論考は1「マンガメディア史の表現史」の中で、「『幻灯画』にみる『マンガ家の職域』としてのフィルム/スクリーン」の題で載っています。
 
ここで紹介した本は、お声がけいただければ館内でご覧頂けます。寄贈して下さった皆様、誠にありがとうございました‼

 

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