おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.08.08column

戦前の長崎を記録した映像のカラー化と初代ラジオ体操

2022年6月16日に当館のYouTubeチャンネルで戦前の長崎を記録したホームムービー(9.5㎜)の映像を公開しました。今現在106,300回以上再生されていて、コメントもたくさん寄せて下さっています。1945年8月9日11時2分、アメリカによる長崎への原爆投下により長崎は甚大な被害を受け、映像に映っていた穏やかな人々の日常が一変しました。映像をご覧になった多くの皆様が「戦争は二度としてはいけない」という思いを強くされています。

7月31日に東京大学大学院学際情報学府で広島と長崎の原爆に関わる研究に取り組んでいる片山実咲さんからメールが届きました。8月5、6日に、子ども向けの「『教育版マインクラフトで長崎の歴史を学ぼう』ワークショップin長崎」を計画されていて、その時に件の戦前の長崎を記録した映像を子どもたちと鑑賞したい」という要望でした。所蔵する映像の活用は私どもの願うことでもあり、すぐに同意しました。その折に、同学府の渡邉英徳教授の研究室が「テクノロジーを活用した記憶の継承」をテーマに研究活動をされていて、白黒写真のカラー化などに加え、動画にも取り組みを始めておられることが書いてありました。渡邉先生の白黒写真をカラー化された成果は、日ごろからX(旧Twitter)の投稿で存じておりましたので、渡邉先生ご自身から、この映像のカラー化を試験的にやってみましょうとお声がけいただいたことは、とても嬉しいことでした。YouTubeに寄せて下さったコメントの中には「カラー映像化できたら、現代の若い人にも当時の息遣いが伝わるでしょうね。」というのもあり、そうした人々の思いに応えることが出来ると考えて、早速お願いしました。

6日夜、ワークショップのため長崎に滞在されている渡邉先生から、カラー化された映像が届きました。人の顔の色や木々の緑などを基準にしてカラー化されているのでしょう。ところどころ不自然なところもありますが、セピア色した映像からは映っている人々の息づかいが感じられるようです。連れ合い自身は、何でもかんでも第三者が色を付けてしまうことに反対の考えなのですが、モノクロ時代にどうすれば美しく表現できるかと映像美を追求された名カメラマン宮川一夫先生の映像と一緒に考えずとも良いのではないか、と私。
 
で、早速思いついて、サイレント映画ピアニストの天宮遥さんに、音楽を付けて貰えないか依頼しました。ありがたいことに7日朝には音楽付きバージョンが届いていました。映像最後の当館のタイトルは、カラー化の影響か、赤っぽくビックリするぐらいに変化していましたので、元通りに戻し、渡邉先生と天宮さんのお名前を書いた字幕も追加しました。その映像がこちらです。

フィルム寄贈者の長崎県雲仙市の菅 典義さんにもこの映像のことをお知らせしました。カラー化され、音楽も付けた映像をご覧になって如何だったでしょうか。亡きお父様重義さんがパテ・ベビーカメラで浦上天主堂や、母校の旧長崎医科大付属医院(現在の長崎大学病院)などを撮影して、残しておいてくださったからこそ、原爆ですっかり廃墟になる前の人々の様子、街の様子を知ることができます。きっと天国のお父様も、こうして地元のみなさんの記憶や気付きに貢献できることを喜んでおられることでしょう。長崎平和推進協会写真資料調査部会会長の松田斉さんは、この映像を1932~33(昭和7~8)年のものだろうとみておられます。

改めて映像を見ておりましたら、8分前後に大勢の子どもたちが体操をしている場面がありました。今まで見過ごしていましたが、この体操は1928年11月に誕生した初代ラジオ体操第1(正式には国民保健体操)ではないかと思い、8月19日に講演して頂く北海道大学大学院教育学研究院准教授崎田嘉寛先生に映像を確認して頂きました。

今日返事が届き、初代ラジオ体操第1で間違いなく、内容は、次の6つの運動と思われるそうです。第1:脚の運動、第4:腕の横ふり、第5:腕の前ふり、第7:全体を横に、第8:前後に(上体を)、第9:横にまわす。

 

さらに思い出せば、依田義賢先生脚本の『僕らの弟』(1933年、日活京都、春原政久監督)にも、冒頭に、ラジオ体操の場面が出てきます。この映画が作られた年は、国際連盟で満洲国建国に反対され、国際連盟を脱退し、日本は世界的に孤立しました。文部省は非常時政策を行い、国力の強化を進め、戦争へと向かう岐路に立った時で、ラジオ体操推進もその一環かと思います。このラジオ体操は終戦後GHQが「軍国主義的号令付の体操」をラジオで放送することに難色を示したことから、第2代の「ラジオ体操第1」が1946年4月から放送されました。もっと注意すれば、他の作品にも初代ラジオ体操第1は登場しているかもしれませんね。

崎田先生をお招きしてのトークセッション&ワークショップ「ラジオ体操百年・三代の記憶-初代ラジオ体操を現在に-」のお知らせを京都新聞で掲載して頂きました。8月19日夜7:00~8:30まで当館で実施します。残っていた映像から崎田先生が忠実かつ正確に再現された8つの動きをラジオ体操指導者の当山倫子さんの指導でやってみましょう‼

7月24日の京都新聞記事で新型コロナの感染拡大と父兄の負担増から、最近では夏休み中のラジオ体操が姿を消していることを知って、「夏休みの良い思い出だったのに」と惜しく思っていました。今日の京都新聞記事では、1985年から京都市中京区の竹間小学校で体育振興会と少年補導委員会合同で夏休みのラジオ体操が始まり、小学校が閉校になった後も、跡地にできた竹間公園で朝7時からラジオ体操を続けていることを知りました。82歳の樹田一男さんが40年間無休でお手本役を続けておられます。この夏のラジオ体操は前期を終えて、17~24日に日曜を除いて毎朝ラジオ体操の後半が実施されるそうです。私的には良い話題💗

再度、8月19日の催しチラシを掲載。初代ラジオ体操第1の動きを一緒にやってみましょう‼多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

なお、10月13日(日)14:00~18:00、大阪府高槻市城北町の高槻南スクエアファイブプラザビル4階で「関西SPレコード愛好会」の例会として、ラジオ体操のSPレコードを聴く催しがあるそうです。関心を持たれた方は、ぜひどうぞ。詳細は事務局の中西さんまで、電話072₋684-2143。

 

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