2025.11.02column
パテ・ベビー(9.5㎜)フィルムのホワイトリーダー

9月にたくさんのパテ・ベビーフィルム(9.5㎜)を寄贈いただきました。接合部分の剥がれを直しつつ、強い癖をとるために巻き直しをしていたのですが、どうにもホワイトリーダーが不足してしまい、困っていました。国内ではもちろん製造していませんので、海外から輸入しなければなりません。そんな折、オランダのアムステルダムにある映画アーカイブで活躍されているBin Liさんと知り合いました。10月にイタリアのポルデノーネ映画祭で再会した折に、大きなリールが欲しいと代理購入を依頼して、送付してもらいました。写真は10月25日に届いたホワイトリーダーです。
これはフランス製です。大きなリールは100m、小さなリールは10m、それが2個で、合計120m(約396 feet)分を入手できました。これだけあれば当分作業が継続できるので、ホッとしました。左上の黒い部品はフィルムを繋ぐためのスプライサー。これば何年か前にイタリアから輸入しました。日本ではこうしたものは作っておりません。理由は簡単、作っても売れないからです。
さて、この支払いで困りました。Paypalが使えると高を括っていたのですが、当館が使っている京都銀行の口座は相手から受けることはできるのですが、送金口座としては使えないことが判明。仕方がないので、京都銀行に海外送金依頼をしました。これがかなり細かくて。最近は海外への送金審査が大変厳しくなっているそうで、事前申し込み書を書き上げるまで問い合わせを何度もして大変でした。次の機会は書き込むのに必要な事項が分かりましたので、もう少し手早くできるとは思います。そして、30日に漸く送金することができました。年をとってから、新しいことを覚えるのは一苦労です。

ホワイトリーダーと同じ頃に届いたBin Liさんからの絵葉書。

私たちがポルデノーネ映画祭の会場から一足先に帰った日に投函してくださったようです。絵葉書は『The Blood Ship』に出演しているリチャード・アーレンと女優のジャクリーン・ローガン。1927年アメリカで製作されたジョージ・B・サイツ監督作品。ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントとアカデミー映画アーカイブのパートナーシップによって修復され、昨年12月にブルーレイが出た作品のようです。写真所蔵はニューヨーク近代美術館。私どもがベネツィアを観光している10月6日の11時半から上映されたので、見逃したことになります。Donald Sosinさんのピアノ演奏で上映されました。
消印がイタリアなのも思い出になって嬉しいです。ローマ生まれのセルジオ・レオーネ監督とアメリカの俳優で、現在は監督としても有名なクリント・イーストウッドが主演を務めた『荒野の用心棒』(1964年)でしょうか。セルジオ・レオーネ監督は、イタリアで公開された黒澤明監督『用心棒』(1961年)を見て、クリント・イーストウッドを起用して、『用心棒』を西部劇風に翻案した『荒野の用心棒』を製作します。これが世界中でヒットして、翌年『夕陽のガンマン』、その翌年の1966年にも『続・夕陽のガンマン』を製作して、クリント・イーストウッド主演三部作は、世界中でマカロニ・ウエスタンブームを巻き起こしました。
Bin Liさんが、この切手を選んで貼ってくださったのも、イタリアと黒澤明監督繋がりかもしれませんね。「日本語をもっとできるようになりたい」と仰っていましたが「来年また会いましょう!」と上手に書いておられます。その通り来年もお会いできたら嬉しいです。
ポルデノーネ無声映画祭で、紙フィルムを上映した6日夜、ベルギー王立映画アーカイブで活躍されているクリストファーさんが案内して下さって、クリストファーさんのお友達のGary Carrelさん、Bin Liさんと一緒にレストランへ行きました。そのGary Carrelさんから10月31日夜メールがきて、来週来館してくださることになりました。こんなに早く再会できるとは全く驚きです。国境を越えて、映画アーカイブで活躍する人の輪がどんどん広がっていくのは、嬉しくて、素敵です💗


