おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2026.10.04column

メラニーさんから届いたパリ日本文化会館「伊藤大輔監督特集」の様子

10月2日夜は傷心のまま草臥れ果てて寝込んだ私でしたが、翌朝は人参とリンゴのジュースを作って飲み、パソコンの電源ONにしてメールを点検するといういつものルーティーン。そして目にしたのは「フランスからこんにちは!」のメール。差出人は、9月12日に来館されたメラニー・トゥボーさん。インスタで見ると、5.4万人もフォロワーがおられる方で、ビデオグラファー(映像作家)、映画ジャーナリスト、アシェット社から『映画の歴史』を出版と、映画産業と映画史の専門家として活躍されている方のようです。

「ミュージアムを訪れた際には、とても親切にしていただき、本当にありがとうございました。太田さんのおかげで、パリで弁士付きの上映会が開催されることを知ることができました。そして今日、パリ日本文化会館でその上映会を観てきたところです!弁士は片岡一郎さんで、伊藤大輔監督の『御誂次郎吉格子』が上映されました。本当に素晴らしく、忘れられない上映会でした!改めて、本当にありがとうございました。そして、映画への情熱を分けて下さってありがとうございます。」

と綴ってあり、とりわけ最後の一文が胸に響きました。嬉しいです。

向かって右が活動写真弁士の片岡一郎さん、そして左がピアニストの星野紗月さん。

片岡さんが語っておられるのが『御誂次郎格子』の場面でしょう。この日は17時から私どもが提供した『血煙高田馬場』が『長恨』『斬人斬馬剣』と一緒に上映されましたが、ひょっとしたらお仕事の都合でメラニーさんはご覧になれなかったのかもしれません。先ほど彼女に10月29日19時半からピアノ演奏付きで再度上映されるので、可能なら観て欲しいとメールを送りました。

この「伊藤大輔監督特集—時代劇の美学と反逆」は9月25日~10月31日まで開催されていて、そのことについてはブログで既に書いていますが、その時書かずにSNSで書いたことを今、加筆します。それは、どうして、「時代劇の父」と称される伊藤大輔監督(1898-1981)が、これまで海外でさほど評価されてこなかったかについてです。連れ合いが興味深いことを申しました。

1970年代に日本映画特集を組んだ映画評論家ドナルド・リチ―さんをイタリアのポルデノーネ映画祭の会場で見かけた連れ合いは、リチーさんの教え子だったJoan Bernardi先生に依頼して紹介してもらい、お話をする機会に恵まれました。その時、「日本映画特集には、なぜ伊藤大輔監督ら関西の映画人が抜けているのですか?」と尋ねたら、リチーさんは東京に住んでおられたこともあり、「インタビューした相手が関東中心で、関西の映画人と接する機会がなかったから」と答えられたそうです。それまでの日本映画が関西中心だったことから、関東の作品に目を向けられたのかもしれません。リチーさんの日本映画特集により小津安二郎監督が注目されることになって、今日の世界に知られる小津人気になったと連れ合いは申します。
 
それから歳月が流れ、今回は二つの映画祭でキュレーターを務められたアレキサンダー・ジャコビー(Alexander Jacoby)さん、ヨハン・ノルドストロム(Johan Nordström)さんの尽力で、伊藤大輔監督に光が当たりました。ノルドストロムさんからの声掛けでパリ日本文化会館での伊藤大輔監督の特集が組まれたのではないかと思いますが、日本文化会館の井上遼さんによれば、今回の同会館でのプログラムは、ボローニャ復元映画祭のプログラムをベースにしつつ、いくつか異なる作品も組まれています。ジャコピーさん、ノルドストロムさんに助言を得つつも、プログラム自体は、井上さんと同僚のファブリス・アルデュイニさんのお二人で決定されたそうです。イタリア、フランスと映画が盛んな土地で伊藤大輔監督の作品特集が組まれたのですから、この勢いで世界に広がっていって欲しいですね。
 
冒頭のメラニー・トゥボーさんは、シネマテーク・フランセーズの名称も口にされていましたので、そこにフィルム3作品を寄贈したことも話しました。ご本人は「映画史が大好きだ」と仰っていたので、展示もおもちゃ映画の上映も楽しんでいただけたようです。
2024年リュミエール映画祭で「三船敏郎特集」が組まれた折の「MIFUNE」と赤い文字で描かれたポスターの前で記念写真を撮りました。私が手にしているのはその折の図録。フランス在住映画ジャーナリスト林 瑞絵さんに頼んで買ってきてもらった思い出の品。図録表紙には、イザベル・ユベールさんの直筆サインがあります💖
 
楽しい時間でした。シネマテーク・フランセーズでは、この後10月14日~11月26日に、加藤泰監督の特集上映が開催されます。詳しくはこちらをご覧ください。この秋は、関西で製作された優れた時代劇映画が映画の都パリで広くご覧いただける機会となって良かったなぁと思います。

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