おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2018.11.08column

海外からのお客さまたち、そして、幻灯機がもたらした嬉しい出会い

11月1~5日初めての海外一人旅で、中国の北京へ行って来ました。この振り返りはもう少し落ち付いてから書きます。不在中も含めて海外からのお客さまの来館が続きましたので、その紹介を兼ねて綴ります。

オーストリアの国立フィルム・アーカイヴ(フィルムアルヒーフ・オーストリア)の技術部長として活躍されている常石史子さんが「漸く来れました!」とご来館。嬉しいので記念に写真を撮らせていただきました(10月31日)。

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前日に関西大学で講演会をされ、「フィルムを見たこともない学生たちが、とても関心をもって聞いてくれたのが印象的だった」そうです。

私は昨年の「映画の復元と保存に関するワークショップ」で話された勤務地でのフィルム倉庫新設の際に、正倉院のような校倉造を提案して館長さんから「木造!それだ!!」ということになり、2011年に完成したという話が印象に残っていました。「林業を大切にしていて、環境に対して意識的なオーストリアだからこそできた」と常石さん。そのヒントは、東京国立フィルムセンター勤務時代に寄贈を受けた「小林富次郎葬儀」(1910年、重文)が木箱に入っていて、状態が良かったこと。木の特徴が保存に良いと閃いたのだそうです。

海外の大切な施設で活躍されている様子は、それを聞いているだけで誇らしく、そして、嬉しく思います。これは本心から思っていることなのですが、そんな常石さんに私、ちょこっと留守番まで頼んじゃいました。気さくで素敵な方!お話できて光栄でした。

そして、中国へ旅立った1日は、中国上海からお越しの陳路さん。2日は何回かこのブログでも紹介している岡村峰和さんが、京都フィルムメーカーズラボの仲間6人をご案内。中でもカナダとリトアニアからの参加者は、カメラをたくさん展示していることもあり、とても気に入ってくださったようです。別にアメリカからの2人も訪ねてくださいました。しどろもどろになりながらでも海外の人とおしゃべりしたかったです、私。

そして、7日はスイスからのお二人。おしゃべりがとっても楽しかったので、私の気分はラン♪ラン♪ラン♪ 言葉がツーツーに通じたわけではありませんが「楽しかった!」という気持ちは分かち合いました。お二人とも英国マジック・ランタン協会の会員でもあり、幻燈機に夢中。ガラスケースに入っていた幻燈機を取り出して見せて欲しいとの要望を受け、テーブルに取り出したところ。

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ご満悦のエリザベスさんとジーン・ダニエル・ゲ―バ―さんご夫妻。ご主人がスマホの中に収まっている写真を見せてくれました。

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これが、その幻燈機。今朝届いたメールに添付されていました。

Dear Fumiyo
Thank you very much for your hospitality. It was a great pleasure to meet you and to visit 
your interesting collection. Please give also our best regards to your houseband. If you have more information about this lantern (see photo), please let us know. thank you again. kind regards Elisabeth and Jean-Daniel Gerber

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ご夫妻所蔵の幻燈機は、当館所蔵のこの幻燈機とそっくり!!!彼は日本製のこの幻燈機を持っているけれど、残念ながらガラス製ランプがないのだそうです。「1890年代に日本で作られたものだろう。大変に珍しいもので、貴重だ。この幻燈機について何かわかれば教えて欲しい」とのこと。ご存知の方がおられましたら、そして、このランプをお持ちの方がおられましたら、ぜひご連絡をお願いします。

彼は当館の小冊子「ミュージアムカタログ」のページを繰りながら、そこに上掲の写真が載っているのにも気付いてくれました。「京都幻燈機舗幻燈機(不詳)」としか書いていません。後で連れ合いに聞いたところ「府内の骨董商から買ったものだが、詳しくはわからない」とのこと。余談ですが、メディアアート・映像文化史研究の草原真知子さんが2015年来館の折り、この幻燈機を見て大変驚いておられました。同じものを所蔵されていたからで、少なくともこの珍しい幻燈機は世界に3台あることが、この時点で明らかになりました。

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私に知識がなくて、昨日説明できなかったのですが、ご夫妻にもこのブログをご覧いただくことを前提に他の日本製幻燈機も紹介します。19世紀末か20世紀初頭に作られた東京浅草区御蔵前 片町幻燈製造舗「池田都楽」。上下駆動型、バーナー光源。

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もう一つ、ドイツのアーンスト・プランク幻燈機を模倣して作った日本製幻燈機があります。1920年代以降と思われますが、詳細不明。これには10枚のガラス種板が付いていました。

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その中の3枚を。一番上は奈良公園の鹿、興福寺(奈良市)、道明寺(藤井寺市)という名所が描かれています。2枚目、3枚目は4コマ漫画。製作された当時の様子がうかがわれますね。

ご夫妻は日本のガラス種板に興味津々だったので、そのときお見せできなかったのが残念。お話によれば、日本を描いたものをたくさんコレクションしておられるそうで、スイスに戻った後、その写真を送ってくださるとのこと。楽しみです。

 おもちゃ映写機の映写体験、そこに掛けて楽しんだ無声映画のチャンバラ、アニメーション、ニュース映像の数々もご覧いただき、それらも含めて「楽しい時間だった」とおっしゃっていただけたのは何よりの喜びでした。出会いの記念に写真を撮りました。

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ご夫妻は、英国マジック・ランタン協会発行の以下の小冊子をお読みでした。今回は女性特集で、その中に錦影絵を復活させた友人の池田光惠さんを前協会会長ジョージ・オークランド夫人のマリー・アンさんが紹介して下さっています。

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8頁めの右下に、オークランドご夫妻が当館来館の時の写真が載っています。丸一日実に楽しそうにマジック・ランタンで遊んでいただいたことは、忘れられない思い出です。その時の様子と、同じく同協会会員でもある岩田託子さんが英国で入手されたミニシネを楽しんだ時の様子もゲ―バ―ご夫妻に見て貰いました。それらはこちらにリンクを貼っていますので、良ければぜひご覧ください。この小冊子14頁に草原さんのインタビュー記事も載っています。

池田さんは、教え子たちと11月23日に大阪市立阿倍野市民学習センターで、錦影絵のワークショップを開催されます。

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参加者が胸に抱えている桐材でできた「風呂」と呼ばれるものが日本独自の幻燈機。西洋の備え付けではなく、自分たちが動くことで、そして仲間と協調しながら集団で物語の世界を表現する美しい影絵です。久しぶりのワークショップ開催ですので、関心がある方はぜひともご参加ください。

僭越ながら、11月2~4日の北京電影学院動画学院祭で、動画学院長の李先生にこのチラシと、前掲英国マジック・ランタン協会の小冊子もお渡ししました。中国全土から集まった優秀なアニメーション作品と学生、指導者を表彰する大きな催しで、この機会を利用して「日本のアニメーションのルーツ」としての錦影絵を知って貰いたいと思ったのです。幸いにして、李先生は関心を示して下さいましたので私的には良かったです。

幻燈機繋がりで言えば、NHK朝ドラ「まんぷく」の最初あたりで主人公の夫、立花萬平さんが作った幻燈機が登場しましたが、当館から3台の幻燈機をお貸しして美術スタッフさんが新しく作られたものです。西洋から入ってきた幻燈機を往時の日本の人々が真似て作ったのと同じ。もっとテレビに写るのかと期待していましたが、そうではなかったのが残念ではありました。

と漸くここまで書いたところで、今度はベラルーシ共和国からのお二人が来館。イヴァンさんとカテリーナさん。

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思わず「可愛い!」と言ったら、「可愛いは世界語です」と返ってきました。10月20日に田中泰子さんに「カスチョール」を教えて貰ったばかりなので、焚き火に手をかざして暖める様子をジェスチャーでしたら、ちゃんと「焚き火」だと通じて双方にんまり。ベラルーシの言葉はロシア語。

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一体何を食べたらこんなに背が高くなるのでしょう?精一杯背伸びして、この程度です、私。片言の英語でおしゃべりして、話の花が咲きました!

海外からのお客さまとの出会いは、お互いの国の理解が進んでとても楽しいもの。皆さま、ようこそおいでくださいました!!お会いできて嬉しかったです。

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