2026.09.14column
無事終了、二日連続無声映画上映会①
大雨にも困ったものですが、このところ秋風が吹き、季節が移り替わった気配を感じます。「文化の秋」にふさわしく、当館では久しぶりに9月12日と13日と二日連続無声映画上映会を催し、無事に終えることができました。ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた皆様に心より御礼を申し上げます。
先ずは12日の「コメディ映画『Our Gang』を渡辺亮のパーカッション伴奏で観よう!」から。広報が遅すぎたこともあってお客様は少なかったのですが、パーカッショニスト渡辺亮さんの創意工夫と熱演で、100年以上前のアメリカのちびっ子たちが繰り広げるドタバタ喜劇を面白く観ることができました。
渡辺さんが練習した順に上映しました。最初は『突貫ガラクタ列車』。1924年、ミッキー・ダニエルズ他。子どもたちが手作りの乗り物や本物の蒸気機関車・列車に乗り込んで巻き起こす大暴走劇!

籠に入れられた猫を追いかけようと走る犬が列車を引っ張る仕掛けの手作り列車も面白いのですが、本物の蒸気機関車をちびっこ二人が動かして行ったり来たり。その間に黒人の小さな女の子が線路に足を挟んでしまい抜けられなくなり、列車の行き来のたびに倒れて轢かれずに済む場面も。

よくまぁ、こんな映画が作られたものだと思います。日本の規範では、このような映画を作ることはできないでしょうね。
つぎは 『Way Out West』。1922~25年、ミッキー・ダニエルズ他。子どもたちが西部劇のガンマンやカウボーイになりきる可愛らしさと、大人顔負けのアクションやアイデア満載の仕掛けが見どころ。
3作品目は『ピクニック大騒動』1922~25年、ミッキー・ダニエルズ他。

食いしん坊のジョーは、一連の作品でも登場するベビーフェイスでぽちゃりした人気者。みんなで楽しくピクニックに出かけたはずが、美味しい食べ物をめぐって大パニックに。今の日本でも問題になっているクマが出て来て逃げ惑うシーンや、 “ローカル・シャワー”と呼ぶらしい急に雨が降り出すシーンも。各章の最初にイラストでタイトルが出て動画が続く構成になっています。
最後はメインの『妖怪退治』。1928年、日本で販売されていた作品で、日本語字幕に置き換えられています。ちびっ子たちは近頃増えている泥棒を退治しようと義勇団を結成して夜警に出かけます。

ある家の中に入ってしまったちびっ子たちは、次から次へと繰り出すお化けや妖怪に怖がりながらも大騒ぎ。

スクリーン下に並んだ渡辺さんが描いた妖怪画の世界と直結する目玉作品。渡辺さんが手にしている楽器はブラジルの楽器で“クイーカ”という名前。サンバなどの演奏に用いられえるそうです。

片面革の真ん中に垂直に短い棒を取り付けたもの。ぬらした手や湿った布でこすり振動させることにより、独特の音を出します。この日一番興味を持ったので間近で見せて貰いました。

もう一つ興味深かった楽器は“スプリング・ドラム”、“サンダー・ドラム”とも呼ぶそうです。お化けがいっぱい出てくるので、こうした楽器を用いて雰囲気を盛り上げて下さいました。

他にも、列車の場面には、『ニューシネマパラダイス』の特別版販売の時のフィルム缶や小さなクッキー缶を用いた手作り楽器を用いてくださいました。今回の上映会用に作ってくださったそうですが、序盤はこの楽器の出番が多かったので、さぞかし腕が疲れたことでしょう。

ビリンバウの音色も良いですね。これもブラジルの民族楽器で、弓矢を“バケタ”と呼ばれる棒で叩きます。共鳴具として中身をくりぬいたヒョウタンを用います。“ペトラ”と呼ばれる石を弦の根元に当てることで張力を調節し音を調整します。

これもブラジルの呼び名で“カシシ”。小石や豆などを竹ひごで編んだ籠に入れ、底をヒョウタンで作った小さな楽器。最初にミュージアムで演奏してもらった2018年3月に教えて貰って楽器を作って音を楽しむ世界を体験してもらいたいです。

この女の子は仲間の中で一番小さいのですが、とても可愛らしいですし、自然の演技なのか小さくてもプロの覚悟があるのかわかりませんが、うまいです。ハル・ローチは白人の子も黒人の子も一緒になって遊ぶ様子を描きましたが、まだアジア系のちびっ子は登場していませんね。ちびっこギャングは1920年代から始まり、戦後にもテレビのシリーズがありましたが、今回上映したのはその最初期の作品群です。子どもはすぐに大きくなりますから、作品を作り続けるためには交代しなければなりませんが、ピクニック、妖怪退治、ガラクタ列車はほぼ同じ時期につくられました。ハル・ローチは喜劇映画を数多く作り、ハロルド・ロイドを用いて世界中に広がりました。その作品の中に“ちびっこギャング”の子どもたちも出演しています。
アメリカでは映画は現実よりも超越する文化だと思って、列車の模型を大掛かりに作って街の中を走らせたり、警官をコミカルに描いても当時は容認されていたことに驚きます。今でも日本と比べればそう言えるでしょう。子どもたちの悪戯を大掛かりに仕掛けた作品に、リズムとかテンポが主のパーカッションは、ぴったり合っていました。時にはメロディ風に笛なども用いて表現を工夫されていましたが、実は亮さん、その前夜から歯痛で、この日も痛み止めを服用して臨んでくださったのだそうです。

渡辺亮さんと楽器を中心にして、最後まで残ってくださった皆さんと記念写真を撮りました。名古屋や芦屋からお越しの方もあり、出会えて良かったです。とりわけ前列左端の本多正典さんの生き方に興味を覚えました。いつかまたお会いできるような催しを考えたいです。お客様から「ちびっこギャング面白かったです。私が見ていたのよりもっと古くてのどかでした」や「楽しい時間を過ごすことができ、大変有意義な一日になりました。」とメールが届きました。ありがとうございます💕


