おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2017.10.31infomation

11月22~26日、「持永只仁展~人形アニメを通した日中友好の足跡を追う」開催

一昨日出来上がったばかりのチラシです。11月22日(水)~26日(日)に、人形アニメ―ションの父「持永只仁展」をします。彼は、人形アニメ―ションという新分野を切り開き、日本だけでなく、中国でもアニメーションの礎を築き、アメリカのテレビ・劇場向け『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1964 。今も世界中のクリスマス定番アニメーションとして人気)、『怪物の狂宴』(1967)などの作品にも携わるなど、「日本、中国、韓国、アメリカと弟子は数知れず」(持永さん長女の伯子さん)多くのアニメーション作家に影響を与えました。

国際性を持つ存在ではありますが、今回は人形アニメを通して日中友好に尽力した持永さんの姿に注目した展示と、関連映画向 陽監督『大地のキネマ』(23日)を上映します。この作品は持永さん一家にも取材した内容ですが、日本国内に於いてN.H.Kアジア・フィルム・フェスティバル(2008)などの映画祭でしかまだ上映されていません。この機会にぜひご覧いただきたいです。

実は、国産アニメ誕生100年を記念して4月23日に開催した「凸坊新画帖からアニメへ」終了後の交流会で、遠く佐賀県から宮澤英夫さんが参加。聞けば少年時代を佐賀で過ごした持永只仁さんの研究をしているとのこと。丁度その頃、東京国立近代美術館フィルムセンターから5月13日~9月10日に開催される展覧会「人形アニメ作家 持永只仁」のチラシが届いたばかりだったこともあり、人形好きな私は「観に行きたいと思っても、東京まで行けない人もおられるだろうから、関西で小さな展覧会ができないかしら?」と呟きました。

その呟きを受け止めてくださった宮澤さんの紹介で、佐賀大学教育学部教授の角和博さんから「日本アニメーションの過去・現在・未来」をテーマにした「第5回佐賀大学コンテンツデザインコンテスト」(2017年3月)の冊子を送っていただきました。もう一人当日の参加者で呟きを受け止めてくださった小谷佳津志さんは、7月1日京都国際マンガミュージアムのイベント会場で、持永只仁さんについて本を書かれた小松沢甫さんを紹介して下さり、小松沢さんが持永伯子さんを紹介して下さり、と面白いように人から人へ思いのリレーが始まりました。

そして、8月25日東京のフィルムセンターの前で伯子さんと待ち合わせをすることに。その時いろいろお話をしている中で、連れ合いも撮影に協力した向陽さんの話が出て、その作品に登場する小さな女の子が、実は伯子さんをモデルにしているとわかりました。2007年に長春電影(旧・新京、旧満州映画協会)で撮影をしている時、連れ合いは持永さんのことを良く知らなかったらしく、映画の内容に「満映でそんなことがあったのか」と思いながら手伝っていたそうです。

映画に余り詳しくない私は私で、手塚治虫さんとパテ・ベビーのことを調べていて、『手塚治虫エッセイ集』の中の「中国アニメ界の現状」(週刊朝日1980年12月19日号)の一節を読んで、持永さんの名前を知っていたくらいでした。以下に一部を引用。

…長春には戦時中、満映があり、敗戦とともに接収されて東北電影公司と改称された。さらに国民党軍と八路軍との戦闘にまきこまれて、ハルビン、ジャムス、鶴崗とところをかえ、1946年にはちゃんとしたスタジオも設置されて、ここで人形映画がいくつか完成している。さらに、当時この会社に所属して動画の企画をたてていた持永只仁氏の話によれば、…

その程度しか知らない私共が、向 陽さんの名前をまさかこの場で耳にするとは想像もしなかったので大変驚きました。他にも共通して知る人の名前が次々出てきたこともあって、伯子さんは、すっかり信用して下さった様子。フィルムセンターでの作品展示を見ながらお借りしたい人形を決めて、全体テーマを「日中友好」にしたいと申し出ました。

東京から戻り、日頃から応援して下さる日本アニメーション史研究者の渡辺泰先生に報告をしましたら、先生自ら「せっかくなら持永さんと弟子の川本喜八郎さん、岡本忠成さんの三人の作家さんの作品が揃う方が良い」と(有)川本プロダクションの福迫福義さんと㈱エコーの故岡本忠成氏夫人に「人形展示に協力して欲しい」と依頼の手紙を書いてくださいました。

その間も、伯子さんには随分お手数をおかけしましたが、おかげ様で人形アニメーションのパイオニアたち3人の作品をお借りして展示することが可能になりました。まるで夢のような話です。

持永さんからは遺作となった人形『少年と子だぬき』をお借ります。川本プロからは、川本喜八郎さんの遺作『死者の書』の郎女(いらつめ)と大津皇子(おおつのみこ)の人形を、そして岡本さんからは、岡本忠成さんの代表作の一つ『おこんじょうるり』の婆様とキツネのおこんの人形をお借りします。いずれも貴重な作品ですので、休館日を除く1週間限定での公開としました。

人形展示は、伯子さんのご紹介で東京工芸大学助教の細川晋さんにお願いしました。11月18日(土)午後から作業をしていただきますが、その様子を遠くから見学することは、人形アニメーションを志す若者にとって絶好の学びの場になると思い、そのことを提案しました。幸いにも伯子さん、細川さんとも承諾してくださいましたので、先着10人を募ります(要入館料と申し込み)。

11月23日(木、祝日)には、関連企画として先述の向 陽監督が大阪芸術大学大学院博士課程で製作された日中合作『大地のキネマ』(2017年リニューアル版)を上映するほか、この作品を監修し、持永さんと面識がある中島貞夫監督のお話、そして伯子さんにもお話していただきます(先着30人、有料。要予約)。

明日11月1~5日、伯子さんは北京電影学院第17回「学院賞」の催しに招待され、中国へ行かれます。それに間に合うようこのチラシ印刷を急ぎました。ミュージアム自体を紹介するチラシと一緒に、中国全土からアニメーション作家、教師、学生が参加する盛大な「学院賞」セレモニーの会場に持参してくださるという温かいご配慮です。この大会では持永さんの名前が冠された「持永只仁賞」も授与され、「学院賞」同様、今年で17回目を数えます。

4月にふと漏らしたひとことが、ひとの心を動かし、実現の運びとなった「持永只仁展」。ぜひとも多くの方にご覧いただきたいです。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー