おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.05.01infomation

5月17日からミニ展示「短命に終わった日本独自の紙フィルム」‼

3月1日に米国バックネル大学映画・メディア学部教授のエリック・フェーデン先生からメールを受け取りました。5月末に久しぶりに同僚のエリザベス・アームストロング先生と一緒に来日し、当館所蔵の紙フィルムをスキャンしてデジタル化する手伝いをすると申し出て下さいました。今開催中の写真展後にいくつか展示案があったのですが、それよりはせっかくの機会なので、「紙フィルム」の展示とエリック先生の講演の方が面白いのではないかと思い、早速先生に提案。トントン拍子に話が決まり、以下のチラシを作りました。

エリック先生とは、開館以来数度にわたり、Associated Kyoto Program(AKP)で全米各地の大学から集まった留学生さんたちを引率して下さったご縁で交流が続いています。いずれの時も綺麗な言葉で通訳をしてくださったのが同僚のエリザベス先生でした。2019年の時には“活弁”文化を紹介し、留学生さんたちを引率して大森くみこさんの活弁と天宮遥さんの生演奏付きで上映された無声映画鑑賞に行って来られましたし、当館内でも“錦影絵”文化を紹介する特別プログラムを用意し、錦影繪池田組さんの指導で、下掲写真のように上演の体験もして貰いました。

それだけにとどまらず、エリック先生が夢中になったのが“紙フィルム”でした。

帰国される直前まで何度も当館に通って、紙フィルムを自ら工夫した機材で1コマずつ撮影してデジタル化に取り組まれました。そして、その成果を秋にスウェーデンのストックホルム大学で開催されたメディア考古学学会で発表されました。どんなお話をされたのか興味深く思っていましたので、6月4日の講演では、その発表の内容にも触れて頂きます。

コロナ禍にあった期間、エリック先生は大学の同僚の協力を得て、さらに改良した装置「キョウリンリン」(通称:映画保存、略して「映存」と命名)を開発。5月来日の折には、それを持参されます。この装置を使えば、紙フィルムを迅速に、そして、スムーズに再度アニメーションにすることが出来るようになったとのこと。ぜひ皆さんにも、どのようなものかご覧頂きたいので、6月4日は実際の作業の様子も見せて頂くことにしました。

さらに当館所蔵家庭トーキーには、紙フィルムと同期させて楽しむためのレコードもあることから、その音源も使ってコレクションの一つ『軍国祭』(上下巻、岩田酉介、坂井春夫)をデジタル版で初披露します。

エリック先生の講演タイトルは「デジタル時代における紙フィルムの復活」。概要は、

……この発表は、日本の紙フィルムを掘り下げていくものである。まず、アメリカの国会図書館のために製作された初期の紙フィルムを取り上げる。これらのフィルムは1890年代から1900年代の初めまでの間にセルロイドをベースにした映画を紙に複写したもので、著作権保護のため保管されたものである。次に1930年代に日本で製作された紙フィルムに注目する。主に東京のレフシーおよび大阪の家庭トーキーという二社が製作していた。それから、紙フィルムの形式と内容を説明する。実写映画(セルロイド映画から複写されたもの)やアニメも含まれる。さらに、いくつかの紙フィルムには原音のレコードも付いていた。

次に、紙フィルムを、保存するためのデジタル化する過程を説明する。紙フィルムは変わった形式になっているため、紙フィルムのデジタル化には、従来のスキャナーを利用できない。コラボした同僚は、デジタル化を可能にする機械とそれに伴うソフトウェアを開発した。発表の最後にデジタル化された紙フィルムの例を見せる。……

1938(昭和13)年に国内向け金属玩具の製造が禁止になり、セルロイドの生フィルムはもちろん、紙も貴重になって誕生から僅か5年で作られなくなった「紙フィルム」ですが、先ごろ鬼籍に入られた映画評論家山根貞夫先生の『映画を追え、フィルムコレクター歴訪の旅』(2023年2月、草思社)に載っている1939年東京生まれのフィルムコレクター氏の「浅草仲見世の奥にあったカメラ屋で」「紙に印刷したオモチャのフィルムで、35ミリより少し幅が狭いけど、9ミリ半と同じようにコマとコマの間に穴があるものもあった。コマ送りをするために引っかく穴が左右の端にあれば、紙だから破れやすいし、これの方が画面が大きい。鞍馬天狗とか丹下左膳とかの断片を反射式で映して楽しむんです」(45頁)の証言から、製造されなくなっても流通があり、子どもたちにとって紙フィルムは魅力的な存在であり続けていたことが伺えます。

ミニ展示では、先発組の東京にあった「レフシー」と後発の大阪にあった「家庭トーキー」を紹介しますが、最新研究で東京にあった「水中商店」も紙フィルムを製造販売していたことが分かりました。今回の展示で注目して頂くことで「水中商店」の紙フィルムに関する資料も見つかれば嬉しいです。ひょっとして、お手元に眠っていませんか???

エリック先生の講演は6月4日(日)13:30 ~、先着25名(予約優先)。参加費1500円(正会員1000円。入館料込み)。お申し込みをお待ちしております。

振り返れば、海外出身研究者の発表は最初かも。これまで海外の研究者の方々とのご縁も広がっていますので、今後も第2弾、第3弾と開催出来たら良いなぁと夢見ています。

 

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