2025.11.30column
この秋の印象的な出会いから(1)
「カレンダーがあと二枚になった」と焦りにも似た気持ちで呟いたのに、もう11月も終わり。紅葉狩りを楽しむ人出ともあまり縁がない地域で活動をしていることもあり、静かな日常です。諸々たまっていたことを片付けつつ、書けなかったこの秋出会った印象に残る人々との思い出を振り返ります。
10月19日、かつて私が主宰していた「木津川の地名を歩く会」で一緒にウォーキングや古文書を読む勉強会をしていたときのメンバーだった石井さんがご家族と一緒に来てくださいました。
凄く久しぶりだったので話が弾み、年内にメンバーさんたちとお食事会をしたいと無茶ぶりを発揮してお願いしたところ、もう一人のメンバーで開館の頃幾度となく手伝ってくださった掛水さんと一緒に連絡・調整係を担って下さいました。そして、11月18日に城陽市内で実施の運びに。でも、この10年の間に私はもちろん、メンバーさんたちも平等に年を重ねて体の不調や連絡が取れない方もおられて、お顔を拝見出来ない方が相次ぎました。それでも久々にお会いして、懐かしい話を繰り広げ、素敵な時間を過ごすことができました。帰りにメンバーで私が母のように慕っていた小林光子さんを入所施設に訪ねたところ、3日前にお亡くなりになったと知らされ、「えっ!」と絶句。

コロナ禍以降、なかなか面会することができずにいたのですが、10月2日に漸く面会ができたことを喜び、「昔から100歳まで生きるって言っていたから、頑張って生きようね」と言ったら頷いていた小林さん。身内じゃないから連絡がもらえるはずもなく、仕方がないとはいえ、最後にお顔をみて見送ってあげたかったです。施設の方が、近々来られる甥御さんに私の思いを伝えてあげると言ってくださったこと、生前に小林さんに会ってお話しできたことがせめてもの救い。それにしても、淋しい。94歳。心よりご冥福を祈ります。これまでありがとうございました。日にちが過ぎた今も、時々思い出しては鼻の奥にツンとくる淋しい思いが込み上げてきます。天国で詠まれた短歌はどんなかしら?夢でも良いから教えて欲しい。
10月20日に大阪の岩氣さんご夫妻が来館。幻燈フィルム、8㎜フィルム、それに中国の古い切手などを寄贈して頂きました。他にも8㎜フィルムと映写機があるそうです。

連れ合いより少し年下だと仰るご主人様ですが、目の病気もあって少しずつモノを片付けておられるとお聞きして、ミュージアムだけでなく自宅もモノで溢れている我が身を振り返り、これからのことを考え込みました。ほとんどが自分のコレクションだとは申せ、このように寄贈いただいた方の思いも引き受けるわけですから、何とかしっかりした映画博物館を作ってもらわなければという思いがより一層強まります。
10月27日には、国立映画アーカイブで8月からアニメーション担当の研究員として活動されている想田さんが来館。当館の所映映像についてどのように思われたのかはわかりませんが、丁度いい人が来たとばかりに連れ合いは話ができたことを喜んでいました。これまでの報道を見ているとマンガ、アニメ、ゲームのセル画などの中間生成物の保存に向けて国の方では動きがあるようですが、映画は置いてけぼりを食らっているような気がします。
イタリアのポルデノーネ無声映画祭に行った折りにArchivio Nazionale del Film di Famigli(国立ホームムービーアーカイブ、全国家族映画アーカイブ)で活動されているMichele Manzoliniさんが会いに来てくださいました。ホームムービーも、イタリアの20世紀の歴史を「下から」語る貴重なプライベート映像遺産とみなして、保存に力を入れている様子を知って羨ましく思いました。ただ集めるだけでなく、その成果を公開して、アーカイブ資料として再利用を促し、学校での教育活動も行っているそうです。この組織は、2011年に、イタリア文化遺産・活動省(MiBACT)から「特に重要な歴史的関心を持つアーカイブ」として認定されているそうです。
国によるホームムービーやアマチュア映画の保存に力を入れている機関やプロジェクトは、イタリアの他にもオーストラリアの国立映画・音声アーカイブ、オランダのEYEフィルム・インスティチュート・ネザーランズ、カナダ図書館・アーカイブス、ニュージーランド国立音声・映像アーカイブなどがあるようです。日本の国立映画アーカイブは商業映画を主な対象に収集、保存、修復、研究活動をしていて、アマチュア映画やドキュメンタリーは付随して所蔵している感じかと。アメリカのハーバード大学のアレックス・ザルテン教授は、ホームムービーを集めようと尽力されています。大阪芸術大学映像学科で連れ合いが携わっていた期間の、学生さんたちが製作し提供に協力をいただいた約100作品の映像は「THE FIRST PICTURES SHOW1970-2020 」として当館で上映しました。それぞれの時代を映し出した学生さんたちの作品も貴重だと、国立映画アーカイブに「保存しては」と持ち掛けましたが、残念ながら反応が得られず、DVDにした映像をザルテン教授に提供し、必要があれば著作権者である学生さんたちに繋ぐと伝えています。
10月31日は、京都アメリカ大学コンソーシアム(KCJS)のスティーブン・チェ先生引率のもと、日本文化に関心がある全米各地の大学から集まった留学生たち17名が来館。
日本語の理解程度がいろいろだとお聞きしましたので、最初に太田が挨拶して、チェ先生に通訳をしていただきながら始めました。
まず最初に英語字幕付き当館の活動内容を紹介する映像を上映し、9月4日NHK WORLD-JAPANで放送された紙フィルム特集(12月初めまでリンク先をクリックすればご覧になれます)と大森くみこさんの活弁と天宮遥さんのピアノ演奏付き「おもちゃ映画de玉手箱」をご覧いただきました。
さらにチェ先生から要望があった小津安二郎監督『突貫小僧』の英語活弁バージョンを上映しました。まだ小津さんが新人監督だった時代のサイレントコメディで、どこの国の人にもわかるように作られていますが、英語活弁があることでいつも以上に笑い声が上がったように感じました。

そのあと2班に分かれて1階と2階を説明しながら体験してもらいました。写真はアメリカのキーストン社製おもちゃ映写機を手回ししながら、1930年代ごろに作られた時代劇映画をご覧になる様子。

スキャナーで9.5㎜フィルムをデジタル化する作業も見てもらいました。良い機会だと思い、劣化が進み救出を断念せざるを得なかったアセテートフィルムが放つ臭いも一人ずつ嗅いでもらいました。酸っぱい臭いを感覚で記憶して貰えたらと思いました。学生さんたちの中で、将来映像関係に進む人がいるのか否かわかりませんが、映像の保存と継承が大切だという思いは伝わったことだろうと思います。

それぞれの出身地にピンでマークしてもらいました。日本人の学生さんが一人おられたので、要所要所で会話を助けてもらいつつも、拙い英語でも皆さん一生懸命聞いてくださったのが嬉しかったです。

次の授業のために途中で拠点の同志社大学に戻った学生さんたちもおられましたが、最後まで残って下さったみなさんと記念写真を撮りました。撮影はチェ先生。当館へは、「子どもと教育」をテーマにした授業の参考にということでお越しいただきました。折も良く、11月6日18時半から同志社大学寒梅館で開催する「非常時の少年たち~映画『僕らの弟をめぐって」は、1933年大阪の四貫島小学校を舞台にした作品なので、学生さんたちにも鑑賞するよう勧めてくださいました。チェ先生にはこの催しで上映する『非常時涙の少年』と『僕らの弟』の内容について書いた文章の英訳のお手伝いもしていただき、深く感謝しています。
11月15日、この日の見学会に参加できなかったジョーダン・リンさん(ボストン大学。下掲中央)とアベム・フェティーンさん(マサチューセッツ州メドフォードにあるタフツ大学)が来てくれました。聞けばミュージアムのすぐ隣の学生マンションに滞在しているのだそう。「近いから、時間があるときは遊びに来て、ここで勉強したらいい。そして英語と日本語の教え合いっこをしましょう」と提案したのですが、12月20日には留学生さんたちは帰国するのだそう。せっかくご縁ができたのに、もうお別れとは残念。

アベムさんはご両親がエチオピア出身ということで、エチオピアから初めてのお客様ということに。アフリカ大陸に4本目のピンが挿され、この笑顔💗留学生の皆さんが、将来どのように活躍されるのか、大いに楽しみです。
11月1日には、アメリカのPortlamdからWes MacDonaldさんとHeatherさんご夫妻が来館。Wesさんはお洒落な口髭を蓄えておられます。


この口髭の呼び方も知りたかったので、写真を添えてその夜に来館お礼のメールをお送りしましたところ、早速返事が来ました。それが素敵でしたので紹介しますね。
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昨日は素晴らしいツアーと、心温まるメールを本当にありがとうございます。お二人の美術館を拝見できて嬉しかったです!伺うまで、**「おもちゃ映画」**について全く予備知識がなかったので、とても興味深かったです。もっといろいろ知りたいと思いました!教えてくださったドキュメンタリーが公開される際は、ぜひお知らせください。
私の口ひげについては、「ハンドルバー・マスタッシュ」と呼んでいます。これは西部開拓時代、カウボーイたちによって有名になったものだと思います。私たちは、カウボーイの美意識の中心地であった1890年代頃のアリゾナ州ツーソンで育ちました。アリゾナ州トゥームストーンの有名な保安官だったワイアット・アープは、これと似た、しかしもっとボリュームのあるハンドルバー・マスタッシュで知られていました。私は保安官のように見られたいわけではありませんが、この美意識が好きなんです。

既にご覧になっているかもしれませんが、この時代をテーマにしたおすすめの映画は、**『明日に向って撃て!』と、2010年版の『トゥルー・グリット』**です。
お二人にお会いできて光栄でした!もしオレゴン州ポートランドにいらっしゃることがあれば、ぜひお知らせください。
敬具 ウェス
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Wesさんは映画が好きで、ネットを検索して訪ねてくださいました。私どものドキュメンタリー映画をつくって下さっているアンナ・ウェルトナー監督もポートランドにお住まいだったこともあり、その作品についてお話をしたところ興味を持ってくださいました。お二人の生まれ故郷アリゾナには、巨大なサボテンがいっぱいで、その様子も見せてくださいました。立体ビューワーにとりわけ魅了されていたWesさんご夫妻との出会いは、「ハンドルバー・マスタッシュ」ともども記憶に刻まれました。良い出会いをありがとうございました‼
【12月8日追記】
毎朝楽しみに見ている朝ドラ「ばけばけ」。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとするヘブン先生の髭が気になっていたので、役中のトミー・バストゥさんの写真を添えてウェスさんにお尋ねしたところ、彼と同じ“ハンドルバー・マスタッシュ”だそうです。「実に素晴らしい髭だ」と絶賛しておられました。


