おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.11.09column

明日トークイベントで、山中貞雄脚本作品、助監督時代の、そして監督作品の当館所蔵玩具映画8作品をご覧頂きます‼

yamanaka sadaoA - コピー

9月25日から始まった「生誕110年記念 山中貞雄資料特別展示」は、いよいよ明日が最終日となります。遠路はるばる見に来てくださった方もおられて、開催して良かったなぁと思います。貴重な資料類を快くお貸しくださった劇団前進座さんと日本映画史研究家の本地陽彦先生に心より御礼を申し上げます。

その最終日10日に、連れ合いが「映画史における山中貞雄」と題してお話をさせていただきます。開催期間中に京都国際映画祭2019、家の引越し、韓国で開催されたアジア国際青少年映画祭への招待、セルロイド学会交流会での講演といろんなことが重なり、慌てて準備をしています。その中で、所蔵している玩具映画に山中貞雄に関する映像が8作品あることに気付き、それも明日の参加者にご覧頂こうということに急遽決めました。いずれも大変貴重な映像です。

その8作品を以下にご紹介します。

監督作品

「鼠小僧次郎吉」(1933)

「国定忠治」(1935)

「大菩薩峠甲源一刀流の巻」(稲垣浩、荒井良平との応援監督)(1935)

「関の弥太ッぺ」(稲垣浩との共同監督)(1935)

「丹下左膳余話百万両の壺」(1935)

(GHQの検閲によるカットされた場面)

脚本作品

「鞍馬天狗」(1929、橋本松男監督)

「右門捕物帖十六番手柄」(1931、仁科熊彦監督)

助監督時代

「からくり蝶」(1929、後藤岱山監督)

 

「鼠小僧次郎吉」(1933〈昭和8〉年、日活京都)は、大佛次郎が1931年に発表した時代小説を原作に、1932年衣笠貞之助・秋山耕作監督が製作した無声剣戟映画でしたが、その翌年に山中貞雄監督がリメイクしました。当館が所蔵するのは「鼠小僧次郎吉 中扁 道中の巻」の内、50秒ほどのおもちゃ映画として残ったもの。山中は、監督・脚本を手掛けています。大河内傳次郎が、鼠小僧次郎吉、長沢屋勘右衛門、大坂屋仁吉の三役をしています。

「国定忠治」(1935年、日活京都)では、原作を書き、監督をしています。脚本は三村伸太郎、主演は大河内傳次郎。この映像は、当館でも初めてお見せするものです。ローアングルに構えたカメラポジションが、山中のスタイルでした。短いながら、そのスタイルが分かります。

「大菩薩峠 第一篇 甲源一刀流の巻」(1935年、日活)は、中里介山の長編時代小説を稲垣浩監督、大河内傳次郎主演で描いた作品で、山中貞雄と荒井良平は応援監督。入江たか子がお浜を演じていますが、おもちゃ映画にはほとんど女優さんが出てきません。これもちゃんばらシーンのみです。

「関の弥太ッペ」(1935年、日活京都)は、長谷川伸の同名戯曲を稲垣浩と共同監督。主演は大河内傳次郎、お小夜は深水藤子が演じます。Wikipediaに「フィルムは現存しない」と書いてありますから、おもちゃ映画という断片ではありますが、貴重です。

「丹下左膳余話 百萬両の壺」(1935年、日活京都)は、山中貞雄監督、大河内傳次郎主演で描く、コメディ。2009年11月、キネマ旬報社が創刊90周年を記念して「日本映画・外国映画オールタイム・ベスト・テン」を発表した際、日本映画部門の7位に選ばれています。それまで丹下左膳の映画を撮っていた伊藤大輔監督が前年に日活を退社したため、三部作の予定だったトーキー版「丹下左膳」の最終作「尺取横町の巻」を山中が作ることになりました。彼は伊藤監督の丹下左膳をパロディ化して、コミカルに明るく描きましたが、原作者の未亡人から「丹下左膳のイメージに合わない…原作者を冒涜するものだ」と抗議を受け、「丹下左膳」の続編ではなく、タイトルに「余話」が付されました。当館所蔵おもちゃ映画には、GHQの検閲によってカットされた場面があります。2004年の京都映画祭で、この新発見部分の20秒を特別上映しました。

「鞍馬天狗」(1929〈昭和4〉年、東亜キネマ京都)は、監督が橋本松男、助監督が社堂沙汰夫(山中の筆名)、脚本が山中貞雄で、主役の鞍馬天狗は嵐寛寿郎。この断片には出ませんが、貫禄ある羅門光三郎の近藤勇が出る場面です。社堂は「影絵」を意味するつもりだったようですが、いつの間にか彼は「社汰やん」と呼ばれるようになっていました。

「右門捕物帖十六番手柄」(1931年、東亜キネマ京都)は、佐々木味津三の原作をもとに山中貞雄が脚本を書き、師事した仁科熊彦が監督をしています。主演は嵐寛寿郎。この年、嵐寬の独立と「嵐寬寿郎プロダクション」設立にあたり、仁科熊彦は山中を伴って移籍しています。

「からくり蝶」(1929年、東亜キネマ京都)は、後藤岱山監督、嵐寬寿郎主演の時代劇。この作品で山中は助監督を務めています。旗本の月影鉄馬は喧嘩がもとで入獄し、その間に許嫁は小堀仙八郎に嫁ぎます。無頼の生活を送る鉄馬は、女伊達のお仙と出会いますが、仙八郎がお仙に横恋慕。鉄馬は仙八郎によって冤罪を着せられようとします…。ちゃんばらシーンの連続で、嵐寛寿郎だけでなく、原駒子の立ち回りが見ものです。

お席はまだ余裕がございますので、京都の紅葉を楽しみながら、足を伸ばして、ぜひ当館にお越し下さいませ。交流会もございますので、テーブルを囲んで山中貞雄談義に花を咲かせましょう。

 

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