おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2021.09.17column

10月11日から京都国際映画祭2021

今日は“天才”と呼ばれ、多くの映画関係者から愛された映画監督山中貞雄の命日。『人情紙風船』撮影後に日中戦争に従軍した山中は、1938年9月17日河南省にあった北支開封野戦病院で戦病死しました。満28歳の若さでした。その死を惜しみ親友の小津安二郎監督が揮毫した山中貞雄碑文を拓本して軸装して掲示。ファンの方が忘れずに見に来てくださいました。

下掲写真は中国戦線での映像の1場面。1938年徐州会戦のものと推察していて、左下の人物が山中に似ているように思われて。。。

10月11~17日に開催される京都国際映画祭2021のプログラム『玩具映画で見た昭和―日中戦争―』(パイロット版)には、この山中らしき映像も加えています。いずれの機会に上映する完成版(90分)をご期待下さい。

この『玩具映画で見た昭和ー日中戦争ー』は、連れ合いが以前から着想していた念願のプロジェクトです。当館にある玩具映画の中には時代劇や動画映像以外に戦争に至るまでのニュース映像、プライベートフィルムの中には満州事変や昭和天皇の御大礼の記録映像もあり、これらをまとめることで、如何に悲惨な戦争に至ったかを検証する資料に活かせるのではないかと考えました。また映像を整理しているうち上掲の山中貞雄らしき姿を発見したこともあり、何とかこれを完成させ、多くの方に見ていただきたいと思っています。

残念ながらまだこの作品は完成していないのですが、少しでも皆さんに知っていただきたいと願い、急遽「パイロット版」として、京都国際映画祭2021に加えさせていただきました。これらの実写映画には、「映画の復元と保存に関するワークショップ」の時からサイレント映画ピアニストの柳下美恵さんにお願いしていたこともあり、今回も演奏をお願いしました。またオンライン配信ですので、海外の方にも本編の予告になると、英訳をアメリカのロチェスター大学ジョアン・ベルナルディ教授にお願いしました。

まだ内容などの紹介がされていませんが、京都国際映画祭の公式サイトが昨日立ち上がりました。追々お知らせが充実してくるでしょう。

コロナの影響で当館が担当するサイレント部門は、今年も全てオンライン無料配信となりました。本当は生の舞台でご覧頂くのが一番なのですが、仕方ありません。「来年こそ!」という思いを胸に、9月12日収録を行いました。この日の出演は活動写真弁士の坂本頼光さんと、ピアニストの天宮遙さん。ギャラリーには、映画祭名誉実行委員長の中島貞夫監督をお迎えし、運営中心の吉本興業から木村深雪さんと中村直史さん、それに8月25日~9月5日インターンシップに来てくれていた京都芸術デザイン専門学校生の直木稚夏さんと松田侑己さんが来て下さいました。撮影は黒瀬映像演出事務所の黒瀬政男さんです。

この日収録したのは

「レトロ京都」…高槻真樹さん寄贈の9.5㎜フィルムで、市民が撮影した1930(昭和5)年のホームムービー。丹後「天橋立」旅行風景/名士たちが楽しんだ「保津川下り」の様子/平安神宮をゴールとする「京都府駅伝」を撮った3作品。他に大正期に撮影した「四条通を走る」これは35㎜の玩具映画で、四条の大丸あたりから祇園までの今とは全く景観が異なる街の様子を見ることができます。

『当世新世帯』(1927年)…阪東妻三郎人気にあやかり、アメリカのユニバーサル映画と契約してできた阪妻ユニバーサル連合映画でしたが、阪妻は松竹キネマと専属契約があったことから彼が出演する作品は輸出できませんでした。スター不在の現代劇では興行力もなく、僅か半年で契約解除になり、阪妻映画世界配給の夢は潰えました。本作は35本製作した内の唯一現存する珍しい作品で、堀川浪之助、泉春子が出演する喜劇映画。昨年も紹介した作品ですが、演奏者が異なっています。サイレント映画は弁士や演奏者が異なるとまた違った印象で見ていただけます。

③『気弱なドライバー』(1925年)…監督はスティーブン・ロバーツで、主演のラリー・シモンらしく、列車、バイク、車でのチェイスから飛行機でのアクロバッティックなアクションまで、短くても見どころ満載の喜劇です。

④『狂える悪魔』(1920年)…原作はロバート・ルイス・スティーヴンスの小説『ジキル博士とハイド氏』。二重人格を研究するジキル博士は、薬を服用するうちに自らの人格が分裂し、破滅の道を辿ります。名優ジョン・バリモアが善良で慈悲深いジキル博士と、下品で残忍な欲望のままのハイド氏を演じ分け、その変貌ぶりが見もの。平成30年度国立演芸場花形演芸大賞金賞に輝いた人気活弁士坂本頼光さんの熱演を、どうぞお楽しみください。

以上の作品に天宮遥さんが、素敵な演奏を付けてくださいました。中島監督と記念のツーショット。

収録後、みんなで記念写真。天宮さんが「家族写真のようで嬉しいです」と喜んでくださいました。A3額を手にしている手前の女性が直木さん、後方の男性が松田さん。12月に予定している「ペン画で甦る日本最初の映画スター尾上松之助最晩年作『忠臣蔵』展PartⅡ」と裏面の「活弁と生演奏で上映する『忠臣蔵』」のポスターを作ってくださいました。タブレットを用いて、とても素敵な作品が出来上がりました。いずれ印刷をして配布しますので、その時ぜひお手にとってご覧下さい。私どもでは決して作れない若者たちの感性で、とても気に入っています。

インターンシップ終了後ではありましたが、ぜひ活弁と生演奏で上映する無声映画の世界を若い二人にも体験して貰いたいと見に来て貰いました。「12日にはとても貴重な経験をさせていただきありがとうございました。生で見る活弁は迫力があり本当に面白かったです」と喜んでくださいました。今どきの人たちは「チャンバラ」という言葉も、フィルムも知りません。そういう人たちにこそサイレント映画の“古くて新しい世界”を知っていただき、この活弁文化が末永く継続され、広がっていくよう願ってやみません。

頼光さんは、中島貞夫監督作品『日本暗殺秘録』(1969年)のDVDを持参して、サインを依頼されました。後で中村さんから「中島監督も 頼光さんの活弁に感激され、色々お話もできたことが楽しかったようで、戻りの車中でも色々とお話をされてました」とお聞きしました。もちろん頼光さんに即お伝えしました。

私も頼光さんにサインをおねだり。この日プレゼントして貰ったばかりの『ゲゲゲの女房の「長寿力」~等身大の自分でいい。100歳まで元気に‼~』(辰巳出版、2021年7月15日初版)。著者は漫画家で妖怪研究者水木しげるさんの奥様、武良布枝(むら ぬのえ)さん。お嬢さんから依頼されて、頼光さんは本文のイラストを手掛けられました。少年時代から水木しげるさんの作品を模写して、弟子入り志願して通い詰めていたこともある頼光さんにとって、何より幸せなご依頼でしたね。頼光さんの場合は、全て手描きの味で。どのイラストも、とってもお上手です💖

本当は収録前日にチャドクガに刺されて痒くて一睡もできなかったそうですが、無事に収録を終えて安堵の表情。生憎の体調ではありましたが、「フロックコートを身につけるとシャンとする」とはご本人の弁。声の張り、説明の巧みさ、豊かな知識と「流石プロの仕事」で楽しませていただきました。

他にも当館が用意するプログラムは、

⑤前述『玩具映画で見た昭和-日中戦争―』(パイロット版)

⑥『猛進ラリー』(1926年)

⑦『ロイドの其の日暮らし』(1919年)

⑧『ポールの空中工夫』(1923年)

⑨『ロストワールド』(1925年)

⑩『浄魂』(1927年)

⑪「レトロ京都1930」+大正期の京都「四条通を祇園へ」

⑫「京都ニュースで見る祇園祭」(1956~1989年)

前回はオンライン配信の期間が短く、また「登録が難しい」と諦めた方もおられたようですので、その反省に立って今回はサイトに直ぐ入れるよう改善し、期間も10月11日から1週間と延長されます。海外や遠方の方にも気軽にサイレント映画やクラシック映画の面白さを体験していただきたいです。

ぜひ京都国際映画祭公式サイト を時々チェックしていただいて、「映画もアートもその他もぜんぶ」を存分にお楽しみください。よろしくお願いいたします!!!

 

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