おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.10.29column

明日開催!講演と映画『大魔神怒る』の参考上映!

今朝の読売新聞京都版に、明日開催する講演「大映映画作品を後世に伝えていくために」と映画『大魔神怒る』の参考上映のお知らせを書いていただきました。

 

こちらは、昨日付け京都新聞のお知らせ記事。近付いている衆議院議員選挙の記事で紙面が狭くなっている中、書いて下さったことに感謝しています。

私のコメントが誤解のないよう補足すれば、国立映画アーカイブは映画フィルムの保存に一生懸命取り組んでおられます。ですが、より一層進めていって貰いたいという希望を述べたのです。今の日本で国の重要文化財として保存されている映画は3作品しかありません。2009年、最初に文化財登録された『紅葉狩』(1899年)、2010年に登録された『史劇 楠公訣別』(1921年)、そして2011年に登録された『小林富次郎葬儀』(1910年)です。

一方アメリカの事例でみれば、1988年全米映画保存法が制定されました。作品公開から10年以上経ち、国民の文化的・歴史的・芸術的に極めて高い価値を持つと評価された映画・動画を永久保存するために選定し登録する制度で、1989年から施行されました。アメリカ議会図書館の一機関「映画保存委員会(NFPB)」が毎年25作品を選定し、同図書館の「映画・映像資材部門」で、修復された1本を議会図書館で保存すると同時に、元になった真正なバージョンを保持する者は、その映画フィルムを恒久的に保存することが義務付けられました。

昨年も25作品がアメリカ国立フィルム登録簿に加えられ、一番古い作品は1913年の『Suspense』(日本未公開)、一番新しい作品が2010年『Freedom Riders』(日本未公開)だそうです。これで800作品が登録されたことになります。

世界的に評価されている溝口健二監督、小津安二郎監督、黒澤明監督、成瀬巳喜男監督の作品であっても文化財指定を受けていないので、売上げに貢献できそうな作品は、今回の『大魔神』3部作のように企業がデジタル修復して保存していますが、採算がとれないと判断された作品は、どうしても後回しになります。

経済の沈滞が言われて随分経ちますが、その間にもフィルムが劣化するに任せている作品もあるでしょう。「映像は歴史の証言者であり、重要な人類の文化遺産である。映像の保存とアーカイブ施設のさらなる充実を求め、それらの映像の活用を促進することは、人類により良い未来への指針を教えてくれる」と考えますので、よく耳にする「百年経たなきゃ指定されない」という姿勢ではなく、後世に残す価値があると認められた作品は国の方でも保存するように変えていって欲しいものです。

さて、今展示している「大映京都の特撮技術『画合成』原画展」の中には、日本初の70㎜映画『釈迦』(1961年)や『大魔神』3部作のほかに『鉄砲伝来記』(1968年)のものも含まれていました。『大魔神』には特撮特殊合成「田中貞造」の名前があり、『鉄砲伝来記』にも「特撮合成田中貞造」とクレジットされていました。どのような仕事をされた方なのか、私どもでは今のところ分かっていませんので、ご存じでしたらお教えください。

これらのマット画で絵筆を駆使されたと思われるうちの一人、渡辺善夫さんに対して森田富士郎キャメラマンの信頼はとても厚かったようです。また、造形技術者の高山良策さんチームの仕事も森田キャメラマンは高く評価されています。

『映画撮影』№180(2009年)に掲載された森田カメラマンの「日本映画の時代劇作法第11回」によれば、一貫性がある映像にするため、相当な覚悟を持って本編と特撮の両方を担当することを会社に申し出て了解されています(『大魔神逆襲』では今井ひろしキャメラマンが本編班として加わり、連携を密にして撮影)。『大魔神』撮影について語っておられる一部分を紹介しますと、

……城門広場へ磔の2人に近寄る大魔神のロングショットがある。後景のロケを先行撮影、空の部分を固定マットで切り、赤い空の絵合成(オリジナル・ネが)にすり替え、そのフレームに合わせ大魔神のフル・ショットをブルーバックで合成、最後に砂塵をダブらせて完成している。絵合成に加えブルーバック合成を二段合成と呼んでいた。……

ぬいぐるみに入って3作品全てに出演された橋本力さんの努力も絶賛されています。

……風の表現にイモ粉を絶え間なく吹き飛ばすが、スタッフは防塵眼鏡でカバーする状況の中で、見開いた目は瞬きもせず懸命な姿は頭の下がる思いであった。……

眼だけが生身として写る橋本さんの力演をスクリーンで目を凝らして拝見しましょう。明日は上映しませんが、『大魔神逆襲』は、我が故郷富山県立山の地獄谷でロケされたことも知りました。テレビの台頭により映画界が斜陽化していく中で、新種として急遽3作品がたて続けに作られました。何とか打開しようと大映京都の映画スタッフが創意工夫し、心血を注いで作った強い思いがこもる特撮映画です。

昨日、お客様と話していて、ふと思い出し、アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)の辻研究員にお尋ねしましたら、ATACでも、渡辺善夫さんがテレビやCMで仕事されたときの絵を保管されているそうです。お客様から「マット画を東京などでも見られたら」という希望や「本にして欲しい」という声も寄せられていますので、KADOKAWAさんやATACさんなどと連携して今後面白く展開できたら良いなぁと夢見ています。

先ずは、明日の講演会と参考上映の成功ありきです。まだお席に余裕がございますので、ご都合良ければぜひお越し下さいませ。お待ちしております。

 

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