おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.03.07column

出会いの楽しさ

慌ただしい日々が続き、今日は久々の休み。この一週間もいろんな人々との出会いがあり、とりわけ印象に残った人々との出会いを、思い出しながら書いてみようと思います。

◎2月28日午前中に来館されたMさんは、「京都のいろんなものを見てこよう」と東京駅を朝出発してきたそうです。「北野天満宮まで歩いていこうと思って」の途中で、ミュージアムの看板が目に入り、「何だろう?」と思い暖簾をくぐったとか。

「いくら若者と言えども、ここから北野天満宮まで歩くのはしんどいよ」と助言しながらも、20日に終えたばかりの石田民三監督に関するイベントのチラシ設置をお願いするため、何度も自転車でまわった北野・上七軒界隈で見つけた「ホッとできる素敵なランチのお店」を紹介。「カフェ・フロッシュ」も素敵だし、コタツで足をのばしてのんびりできた「ひだまり」も良いなぁとお勧め。いずれも食材にこだわり、文化とアートも楽しめる空間が魅力的な西陣の京町家を活かしたお店。自分で言いながら、「口コミは影響が大きい」と改めて思います。来館されたお客様に「どうやってミュージアムのことを知りましたか」と尋ねると、特に関東からのお客様から「いろんなところで、このミュージアムのことを聞きますよ」と返ってきて、嬉しく思うことがよくあります。こんな時は、「期待を裏切らないように、頑張らねば」と一層気が引き締まります。

Mさんは、今脚本の勉強中で、将来は自分で映画を作りたいのだそうです、ニューヨークにも勉強に行き、帰国した今は毎日のようにフィルムセンター通い。「ここは、何をしているところですか?」の質問から始まった出会いですが、ミュージアムの活動趣旨を説明すると「全く同感です」と共感していただきました。秋に東京で開催されるであろうイベントでの再会を約束して、見送りました。その後彼女からハガキが届き、メールで繋がり、一期一会に終わらない縁を紡いでいます。

◎Mさんのように「偶然通りがかって」という人との出会いは、結構面白いです。例えば昨年出会った別のMさん。出会った前日(7月18日)に90歳になられたおばあさまがおられて、彼女は70歳になった時に「これからは自分の好きなように生きる」と宣言して旅行に行き始め、世界中を旅しておられるのだとか。それに刺激を受けて、初めて無計画な旅をしてみようと試みて、京都に降り立ったのだそうです。そして三条商店街を歩いて、気ままに路地を散策していたら、ミュージアムの看板が目に入り、以下同じ。アニメの関係者とも懇意にしているという彼女は、復元・保存した戦前のアニメーションを見て、「少しも古くない!今見ても凄い技術がある‼」と感嘆しておられたのが忘れられません。

関心があるままに、あちこち見て歩くのが何よりも好きな私に、友人は「籠の鳥になっていないか?」と気遣ってくれます。ミュージアムの運営に携わるようになって時間が自由にならなくなり、彼女の「無計画な旅」という言葉は、しばらく後を引きました。

◎3月2日店仕舞いの片付けをしている最中に通りがかって暖簾をくぐった男性Sさんは、学生企業家。老舗の食品の食べ方をいろいろ提案して、海外の人をも含めてもっと食べてもらう活動をするのだと言います。新年早々出会った日本酒ソムリエの顔がすぐに思い浮かび、彼とのコラボを提案しました。彼も日本酒の美味しさを広めたいと話していたからです。今、その話は少しずつ動き始めています。

◎3日に来館された春から某市の学芸員になる男性は、年末に寄贈いただいたベビートーキーの視聴に立ち会い。蓄音機を見たこともないそうで、目を輝かせてご覧になっていました。初めて尽くしのついでに、5日午後5時からの活弁+生演奏付き無声映画上映体験を勧めました。当日は約束通り参加いただき、「楽しかった!」と言っていただきました。最近急速に加盟館が増加している「ちいさいとこネット」を紹介するだけでなく、某市で万一古いフィルムが出てきた時の連携もお願いしました。

◎4日にお母様と来館された男性は、休暇を利用してレバノンから帰国。危険な国なのではないかと想像したのですが、「海水浴もできる安全なところですよ」と笑顔で返ってきました。日本国内で報道されることは、随分偏っていると良く耳にすることですが、ステレオタイプは、いけませんね。連れ合いの顔を見た途端「NHKに写っておられましたね」と言。昨年と今年1月24日にも放送していただいたNHKが海外140か国に放送している番組『J-FLICKS』をレバノンでご覧になったのだそうです。海外で同番組をご覧になった方の生の感想をお聞きしたのは初めてでしたので、とっても嬉しくて、すぐプロデューサーの方に連絡しました。「制作者として励みになる」と喜んでおられました。海外にお住いの日本の方は、同番組を楽しみにご覧になっているそうです。

◎同じく4日に台北から来館された郭さんについては、とっても嬉しい出会いですが、別のタイトルで紹介することに。

◎5日のリハーサル中に来館いただいた男性は、先月まで開催されていた東京のラピュタ阿佐ヶ谷での上映を4回見に行き、おもちゃ映画ミュージアムに興味を持ったそうです。それで気を許したのですが、リハーサルが終わるまで、ずっとご覧になるとは思いもせず、本来は非公開を貫くべきところだと反省。一つ一つ経験です。

◎その本番中に文化庁芸術文化調査官の入江良郎さんがご案内くださったのが、日本映画史家・本地陽彦さん。民間が苦労しながら無声映画の魅力を伝え、フィルム保存の重要性を呼び掛けている様子を知っていただけたことは良かったなぁと思います。入江さんは、6日京都府立鴨川公園で開催された日本最初の映画スター・尾上松之助の銅像建立50年記念式典と続いて行われた懇親会の乾杯で、「映画の文化を愛してこられた京都の方々の地道な活動への敬意を表して」、おもちゃ映画ミュージアムの名前も挙げて挨拶されました。連れ合いのこれまでの活動を評価していただけたことを、とても嬉しく思っています。

◎5日と6日は、時代劇専門チャンネル『時代劇ニュース オニワバン』が取材。時代劇を紹介する番組のコーナーで、おもちゃ映画ミュージアムを紹介してくださるそうです。せっかく取材していただくのに、絵にならなければ申し訳ないと無声映画上映会への参加を呼びかける声を、いろんな方が受け止めてシェアしてくださいました。こうした連携が、とにかく嬉しかったです。当日参加の方が何人もおられ、「結果良ければ全てよし」。お忙しい中を参加いただいた皆様、快く参加を呼び掛けてくださった皆様に心から御礼申し上げます。制作担当の和田さんには、辛抱強く連れ合いの思いを聞いてくださり、感謝しています。この思いが、お茶の間に、そして映画に関わる人々の心に届けばいいなぁと願っています。

◎6日は、IMAGICAのアーカイブユニットで活躍する男性が来館。代表不在の中、素人の私が対応して申し訳なかったのですが、いろんなことをわかりやすく教えてもらって勉強になりました。日本ではデジタル一辺倒の様相ですが、今、ハリウッドでは、フィルムにこだわる作品が増えているそうです。例えば、公開中の映画『スティ―ブ・ジョブズ』は、1984年のイベントはきめの粗い16ミリフィルムで、1988年は35ミリフィルムで、1998年は高精細のデジタルで撮影されています。作り手が自分の思いを充分表現できるように、「いろんな選択肢を残してほしい」という思いで一致しました。体験的に、「アーカイブに関心を寄せる若者が増えている」という話は、とても心強く思いました。

ざっくりと、この一週間を振り返り、心に残った人々との出会いを書き連ねてみました。町家の運営は正直、「大変だな」と思うこともありますが、普通の主婦でいたなら出会えなかった人ばかり。潤沢な資金があれば、何でも思うようにお金で解決できるのでしょうが、そうでない私たちにとって、人との出会いこそが財産です。人と人が手を結び自分たちの夢実現に向かって協力する、これしかないと思っています。5日の公演会後の懇親会では、出演者も交えて賑やかな時間を過ごしました。いつも活動を応援してくださる心優しいお馴染みの顔もあれば、数十年ぶりに会った人、初めて参加した人もおられました。人と人が出会い、交流できる「場」にしたいという夢は、こうして少しずつ、膨らんでいます。

 

 

 

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