おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.08.05column

永本ツカサコレクション「団扇を彩る銀幕のスターたち」展始まっています!

先月まで開催していた刺青展では会場全体を黒い布で覆っていましたが、一転して今度の団扇展では明るい雰囲気で展示しています。

いま、見に来て下さっている男性は、「僕は日活や大映の作品が好きで見たからよく知っている。青春のシンボルや。人気があった女優さんは団扇の数も多い。この時代の女優さんの美しさは別格や。」と興味津々にご覧になっています。「じゃ、この団扇に描かれている女優さんはわかりますか?」と「私は誰でしょう?」のコーナーへ。32枚の団扇に描かれている女優さんが果たしてどなたか見極めができなくて、そんなコーナーを設けました。でも、残念ながら「うーん、わからんなぁ」とギブアップ。昔はギャランティーがとても高かったので、写真ではなく絵の方が費用は安くつきました。

日曜日の東寺ガラクタ市で陶器の“招き兎”を見つけたので、早速コーナーに置きました。「お客さん、いらっしゃい、いらっしゃい!」と。団扇の裏は商店の広告です。私もガラクタ市でいくつか入手しましたが、和洋酒類・たばこ・食料品を扱う店だったり、宇治茶の商いをしている茶舗、化粧品屋さんもあります。基本的に無料で配るものですから費用は押さえたいのが本音。ノベルティーとしては写真より絵の方が良かったのでしょう。紙製品で脆いものですが、綺麗な状態で残っていて、これも映画資料として貴重です。東京の永本ツカサさんが蒐集されて、今回が初披露です。お送りいただいたのは約150点ですが、その内100点を壁一面に飾りました。木工作業が得意な連れ合いの仕事ぶりもどうぞご覧下さいませ。

この展覧会に間に合わせて、永本さんのサイト「脱線王のメディアとしての着物 モダン着物ニ観ル風俗史」で番外編として、「紙広告の歴史」を詳しく書いておられます。ぜひ下記QRコードにアクセスしてお読みください。

8月1日展覧会初日の夕方、7月13日に知り合ったばかりの聾の若者、田村誠志さんが来館。彼の来館については「共に生きる会」のブログで書きましたが、簡単に紹介すると、アメリカのワシントンDCにあるギャロ―デット大学で学んだ後、同大学大学院を卒業し、8月に博士になるためにアメリカに戻り、5年間研究をするのだそうです。研究のテーマはハーバード大学とも連携しながら手話の文字化をすることだそうです。「アメリカで上手くいったら、次は生まれ育った京都の手話の文字化に取り組みたい」と話されたので、「それじゃ、谷進一監督の手話を守った校長先生の実話を描いた『ヒゲの校長』を見れば何かの参考になるはず」、とこの夜当館で映画を観ることを提案しました。ありがたいことに谷監督も仕事を終えて駆けつけて下さいました。

直ぐに二人は意気投合し、ズラリと並んだ団扇を眺めながら、すっかり打ち解けた様子。この日知ったことですが、彼の両親も兄弟もみんな健常者で、親族に聾者はおられず彼ひとり。神様のいたずらなのでしょうか?日々日本でもアメリカでも新しい手話が生まれていて、古い手話は消えていきますから、具体的なイメージが門外漢の私には見当もつきませんが、確かに消えていく手話を記録して残すことは意味あることだと思います。映画のアーカイブを活動の柱にしている私どもとも共通する思いです。これからの彼の研究が進むことを応援しています。

ふと「アメリカに団扇はあるのかしら?」と疑問が湧いてきて、ネットで検索してみました。19世紀後半のジャポニズムの時代に、日本をイメージするグッズとして団扇を絵に描いた作品はありますが、団扇で扇いで涼を得る風習はないようですね。これから海外から来られたお客様に団扇について聞いてみようと思います。日本土産に団扇は軽いし、手ごろな価格なので良いアイテムだと思います。それを飾るだけでなく扇ぐ文化も広がれば良いのに、と思います。

2日に来館されたお客様は、「今は美容整形した人が多いので似たような顔ばかりだし、写真そのものも手軽に加工できる時代になったけれど、昔はそういうことがないので、本当に皆さん綺麗ですねぇ」と右下パネルに載せた往年のスターたちの写真を見て仰いました。今は立命館大学映像学部の学生さんたちが、課題のレポートのために見学に訪れてくれていて、どのスターさんを知っているかと尋ねるのですが、石原裕次郎さんですらご存じない。昨年の今頃は木下惠介監督展をやっていて、同じように「木下監督を知っているか?」と尋ねましたが皆さん首を横に振るばかり。驚いたのは小津安二郎監督の名前もご存知じゃなく「黒澤明監督の名前は聞いたことがあるかも」という反応。手話が年年歳歳新しく生まれるのと同様にスターも次々誕生しますので、こうした展示を通して往年の映画スターの記憶を継承していくことも大切だと改めて思う次第です。

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