おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2025.03.23column

壬生ミュージアムの最後と西陣ミュージアムの看板上げ(1)

諸々ご報告などが遅れていますが、3月19日午後、10年間活動した壬生のミュージアムの鍵を不動産屋さんにお返ししました。田舎の小さな小学校の卒業式で、廊下一つ隔てるだけの中学校へ進むというだけにもかかわらず、鼻の頭や目の周りを真っ赤にして、泣きじゃっくりをあげて別れの淋しさを全身で表現した涙もろい私ですが、不思議と込み上げてくるものは無かったです。自分たちにとっては厳しい家賃値上げが明確になり、ここでの継続が難しいと判断したときから、この日に向かっていろいろ交渉ごとを重ねてきたことが背景にあるからでしょう。「やることは、やってきた」という思いです。

今は、過去を振り返る時ではなく、新しい西陣での活動にひたすら取り組む日々です。老いているので遅々として進みませんが、4月4日再オープンを公言していますので、それに向かって自分たちにできる精一杯を費やしています。壬生の町家は、焼き鳥で京都で最初にミュシュランガイド一つ星を獲得された「鳥さき」さんが次の入居者に決まりました。嬉しいことに2月28日まで実施していたクラウドファンディングに応じてくださっただけでなく、これまでのブログを読んでいてもくださいました。「できるだけ(私どもの)思いに沿った形で、再活用できるようにデザイナーに依頼しています」と仰って下さり、本当に嬉しく思いました。

けれども、飲食店を開館するにあたり、張り巡らした電気の配線を確認する必要があること、玄関やトイレなども作り直されるようで、1階ホールの東壁面板壁を残すのみで、ほとんど家主さんの希望の通りに原状回復工事をすることになりました。致し方ありませんね。

3月15日(土)の壬生の町家に大工の津田さんが来てくださいました。10年前、開館時の工事を行ってくださったのが津田さんで、思い入れがいっぱいあることから、最初に原状回復工事を依頼したら「堪忍して」と強く固辞されました。けれども、施工時の状況をご存知なので、「どうしてもお願いします」と頼み込んで、引き受けて貰いました。奥に見えているのは、10年前バタバタの時に、テントを張って泊まり込んで作業して下さった映画美術春組の宇山隆之さん。

今回も、大学の春休みの間を縫って手伝いに来て下さり、大いに助かりました。津田さん同様に施工時のことをご存知なので心丈夫です。ここには友禅板を置いて、チラシなどを置いていましたが、その板も、腰板も撤去。

右でかがんで釘を丁寧に抜く作業をしているのが伊能佑有也さん。1月の展示棚解体と組立作業にも宇山さんの助手として来て下さいました。映画美術の世界で活躍をめざしている大阪芸大の学生さんで、宇山さんの指導を受けながら技術を身につけています。写真に写っている床のコンクリートを敷く時に宇山さんの助手として手伝いに来てくれたうちのひとりが松本真太朗さんで、彼は映画『正体』で、今年のアカデミー賞優秀美術賞を受賞‼ 最優秀賞獲得ならずは残念でしたが、この先を大いに楽しみにしています。宇山さんはもちろんのこと、伊能さんも同様に期待していますよ💗

板壁の後ろに配していた防音、乾燥、保温のための資材が徐々に剥き出しに。10年間一度も騒音の苦情がなかったのが幸いでした。

こうしてみると広いですね。展示や、講演、上映会などいろんな活動を展開してきました。津田さんは、板壁を外しながら「良い仕事してんなぁ」と自画自賛されていましたが、翌日宇山さんも同じ言葉を口にしていました。仰る通りお二人の「おかげ様」です。

伊能さんは、板壁を電動のこぎりでカットして運びやすく加工中。

これは、3月16日朝の様子。板壁はホール東面を除いて全て取り除きました。

たくさんの材木が役目を終えてひと固まりになっています。10年間支えてくれてありがとう‼

2階はすっからかん。開館中は上映の妨げになると天井の天窓を黒いごみ袋で覆っていましたが、取り除いた今では、天窓から燦燦と陽が射し込んでいます。このあと宇山さんと伊能さんが来て下さって、梁を取り除き、玄関脇の壁を取り除く作業に着手。

東面板壁はそのまま使ってくださることになり、それは嬉しかったですし、助かりました。写真は、照明器具を設置するだけでなく耐震にも役立つと取付けた4本の梁を取り除いているところ。今度は横に4本梁を置かれるのかもしれません。「この耐震壁がなければ」というのは私どもも同じでしたが、次はどんな施工になるのか楽しみです。

南側の出窓裏側の壁撤去に着手。

石膏ボードに漆喰を塗って、ヘラで波のような地紋を装飾していました。

仕事が正確で速い宇山さんだから、

私が来たときには、もう板壁はなくなっていました。

先日BSテレビで『影武者』を見たばかりでもあり、宇山さんのシルエットがそれを思い出させて、素敵。

この続きは、次回。

 

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