おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2025.04.12column

NHKスペシャル「シミュレーション」に出演した16㎜映写機「KAMIKAZE」

この写真は、今年3月4日(火)午後東映京都撮影所のスタジオで。石井裕也監督が撮影中のNHKスペシャル『シミュレーション』の撮影現場の脇にあったセットを撮ったもの。この日撮影中のカレンダーなのかわかりませんが、戦争中を描いた作品だというのは、聞いていたので、それに関する設えなのでしょう。副題は「昭和16年夏の敗戦」です。詳しくは先日公表されたサイトをご覧下さい。

今年は戦後80年ということで、先の戦争にまつわる催しや作品などが数多く発表されることと思いますが、この作品もその一つ。サイトの情報によれば、作家の猪瀬直樹さんのノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」を原案に、石井裕也監督が脚本と演出を手掛けた作品。「総力戦研究所」に集められた若手官僚、報道陣、軍人らは平均年齢33歳の選りすぐりの若きエリートたち。その彼らが構成する模擬内閣では、様々なデータを分析してこの戦争は「圧倒的な敗北」だという結論を導き出すのですが、その後の歴史の結末は、原爆投下以外のほぼ全てが、総力研究所の若手エリートたちが開戦前にシミュレートしていた通りでした。サイトの言葉を借りれば「戦争の時代に、理性を超えて人びとを突き動かしていく“危うい空気”の正体とは何なのか。これがこのドラマのテーマとなっています。なぜ、この国は無謀な日米開戦に踏み切ったのか。ドラマを通してこのことを考える機会になればと思います。

私が見に行った日は、前半の最も重要な場面の撮影だったそうで、何度もリハーサルを重ねていて、緊張感が漂っていました。主演は池松壮亮さんですが、他にも映画やテレビでお見かけするスターがたくさん出ておられて、「うわっ」と声をあげたい衝動を抑えるのに必死。大阪芸大出身の前野朋哉さんを見かけて、連れ合いと一緒に写真を撮りました。応じて下さって、感謝です💗

ところで、なぜ緊張感漂う撮影現場に見学に行けたかというと、うちが持っている「KAMIKAZE」という名前の16㎜映写機を撮影にお貸ししたことから。「KAMIKAZE」を用いての撮影が終了したと連絡を受けて、それを受け取りに行った折に、プロデューサーのご厚意で見学させていただきました。放送日はまだサイトに書いてありませんが、おそらくこの夏。今から放送を楽しみにしています。

実は神戸映画資料館の安井さんがお持ちのベル・アンド・ハウエルという映写機を使う予定だったそうですが、動かないことが分かり、石井監督から連れ合いに直接電話がかかって来て「うちには動くのがあるよ」と答えたそうです。

これが、ベル・アンド・ハウエルの映写機。ですが、「アメリカ製なので時代が時代だけにクレームがつくかもしれない」という懸念も頭をよぎりました。

「じゃ、ドイツ製のツワイスのイコン16㎜映写機は如何か?」と提案。

「もう一台、大阪で作られていたKAMIKAZEというのも動くよ」と提案し、結局このKAMIKAZEが採用されることになった次第です。

どの様な場面で、どなたが操作されたのかは分かりませんが、黒澤清監督『スパイの妻』で登場したパテ・ベビー(9.5㎜)のカメラ並びに映写機同様、良い小道具としてドラマ内で活躍できていることを願います。

左からアメリカのベル・アンド・ハウエル映写機、ドイツのツワイスのイコン映写機、そして日本製KAMIKAZE。ベル・アンド・ハウエルは、35㎜撮影機が有名で、日本映画でも「パルボ」派と「ベル」派に二分されたほどで、チャップリンの愛用機でもあった名機です。シルエットがミッキー・マウスを連想させます。ツワイスは、写真機やレンズで有名ですが、家庭用に映写機も作っていたのですね。そして、KAMIKAZE。大阪の会社が作っていました。本体の表示には、大阪市西淀川区佃町1丁目 MINAKAWA DENKI SEISAKUSHOと書いてあります。戦争の激化に伴い、映画は統制され、国産品の製造が重要になります。特に報道や記録用に開発され、小型映画も重視された時代です。アメリカ製が主体の中にあって、国産品にも映像の重要さが認識されていた時代でした。KAMIKAZEというと特攻隊を連想しますが、元寇の襲来を防いだ強風、国を守る「神風」から名付けられたものでしょう。

皆さん共々、8月の放送NHKスペシャル『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』を楽しみに待ちましょう‼

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