おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2025.05.21column

友禅作家黒田庄七郎さんと染色家氣谷麻由子さんのギャラリー「京空間mayuko」訪問

5月16日に来館いただいた友禅作家の黒田庄七郎さんとパートナーで染色家の氣谷麻由子さん。

2つのフィルム缶を持参されたのですが、そのうちの1缶に「祇園祭山鉾巡行武者行列御輿」と書いてあったので「スワッ、お宝映像かも」とワクワクしましたが、残念ながら劣化が相当進んでいてデジタル化はできませんでした。「他にもある」ということでしたので、今朝黒田さん宅へ行って来ました。

蓋をしたプラスティック製衣装ケースの中に大切に保存されていたフィルム群は、一見して相当な劣化状況だと思いました。酸っぱい臭いと錆であたり一面満ちていましたが、少しでも救えたら良いと。

黒田さんは、明治3(1870)年創業の西陣織卸問屋「黒田庄商店」の7代目。今年創業155年を迎えられるのと、氣谷さんがやっておられる「京空間mayuko」が4月16日で満10年を迎えられたのを機会に、7月に催しを計画されていて、その時に披露できる映像があればとお声がけをいただきました。黒田さんと連れ合いが知り合ったのは、京都三条商店街にある古い京町家「ひより」さんでのことだそうです。それから10年経った昨年12月27日にご夫妻で移転前のミュージアムに訪ねて来てくださったのだそう。その翌日に「さよなら会」をしてミュージアムを締めましたので、再開館するのを待って5月16日に再訪してくださったのです。知り合った10年前に、こうしたフィルムの相談を受けていたなら、もう少し救えたかもしれないと思うと、残念で仕方ありません。

特別に出してあった先祖伝来の槍、長刀、弓矢、太刀と刀も見せてもらいました。流石、京都の古いお宅です。テーブルの上には16㎜や、パテ・ベビー(9.5㎜)のフィルム缶に入ったフィルムたち。衣装ケースの中にあったフィルムも含め、とりあえず持ち帰りました。

丁寧に中身についてメモ書きしてあるので助かりますが、酷く錆びているので、蓋を開けるのが一苦労。錆がたくさん落ちているのがおわかりでしょう。

このような状態のフィルムが結構ありました。リストを作ると、パテ・ベビーは昭和7年~昭和11年まで、家族の旅行や店員の運動会などを撮影したもので、11本はデジタル化に挑戦してみます。16㎜フィルムのほうは4本だけデジタル化に挑戦し、あとの26本は断念。他に空箱が14缶ありました。フィルムコレクターの人たちはご存じとは思いますが、お家に酸っぱい臭いを放ちながら放置している方々は、いずれこのような状態になるかもしれないことを覚悟しておいてくださいね。

さて、人形好きの私は黒田さん宅の端午の節句飾りを楽しみに拝見させていただきました。facebookを見ると5月5日までの予定でしたが、お客様からの要望もあって21日まで「創業記念祭四月〜ちょっと変わった武者人形と歴史画掛軸展」を延長されていて、そのおかげで、私は素晴らしい人形や掛け軸の数々を見せていただくことができました。

最上段左に源頼朝、右に頼朝の有力御家人畠山重忠。上から二段目中央に義経が、その下の段の向かって左に阿野全成、右に源義円。この二人の母は常盤御前。頼朝や義経にはたくさんの兄弟がいたようですね。

最上段左に神武天皇。

とても豪華で美しい人形です。「神ながらの道」を盛んに説いた明治時代のお人形。

その下にいたお人形さんの表情が好き💗

最上段に神功皇后。勇猛果敢な皇后らしく動き出しそうな造形が良いですね。その右に仕えているのが武内宿祢。

できることなら、このお人形を飾りたいと、惚れ惚れ。

武内宿祢が抱いている赤ん坊が、後の応神天皇に、と記紀神話ではなっています。

最上段と下から二段目に豊臣秀吉の人形。唐冠の兜をかぶっています。

このお人形さんの表情も好き💖

奥にあった蔵にも京都画壇の絵師によって初節句用に描かれた美しい掛け軸があり、中には神功皇后が赤ん坊を抱いている絵も。母性を感じさせて珍しい絵だと思いました。上巳の節句にはお雛様を飾られていたそうで、こんなにたくさんのお人形さんを箱から出して飾り、また仕舞う作業も大変だとねぎらいつつ、そのおかげでこんなに素晴らしいお人形さんを見ることができたことに感謝しました。6月には蓬莱山を描いた軸など「仙境図展」、7月は祇園祭の屏風祭をされるそうです。またうかがう楽しみができました。

要望があれば、「投扇」や「闘茶」の体験もできるそうです。「闘茶」という言葉は初めて聞きましたが、茶香服(ちゃかぶき)と同じようなものでしょうか。いくつかの銘柄のお茶を使って飲み比べ、種類や産地を当てる遊び。もともと中国で始まり、室町時代には茶会などでも行われていたそうです。

フィルムが契機になっての訪問でしたが、京都の奥深さを知ることができた訪問ともなりました。

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー