2025.06.03column
京都芸術大学文明哲学研究科・デザイン工芸研究センターの皆さん、ようこそ‼
今日の京都は、生憎の雨でした。暑くなったり肌寒くなったりとややこしい天候が続きます。庭のキショウブが咲き終わり、アジサイの花が雨に濡れて七変化。「しっとりと良いものだわ」と思っているうちに、京都芸術大学の三田村有芳准教授(上掲左から二人目)が来館。お名前の読み方から話が進み、代々江戸蒔絵師の家の生まれで、お父様が赤塚派十代目有純さんだと教えてもらいました。モノを知らない私は、「蒔絵といえば京都」と思い込んでいましたが、江戸蒔絵、京蒔絵、加賀蒔絵があるそうです。
「スワッ、ようやく、価値が分かる人と出会えた!」と雨も吹っ飛ぶ快晴気分。三田村先生は、置かれている家具を見ながら、「芝山細工」「厚貝螺鈿」「高蒔絵と平蒔絵」「象牙」「白蝶貝」「夜光貝」「黒蝶貝」等々固有名詞をスラスラ。東京藝大名誉教授のお父様も素晴らしいのですが、今頃ネットで検索すると、まだお若いご本人も数々の輝かしい受賞歴。お父様、井波で彫刻の勉強もされたというお兄様も一緒にぜひ改めておいでいただきたいとお願いしました。
京都芸術大学には、三田村先生が所属するデザイン工芸研究センターや、吉岡洋先生(前掲中央)が所長をされている文明哲学研究所もあり、今日は一緒に学外見学に来てくださいました。総勢21名と一気に賑やかな館内となりました💗吉岡先生とのご縁は昨年1月5日にお話をして頂いてからですが、以降すっかりお世話になっていますし、いつも気にかけてくださっていることがありがたいです。その流れで、学生さんたちに私どもの活動を授業で話して欲しいと依頼されたのですが、「教室よりも実際にモノたちに触れながら見て体験してもらう方が良い」と提案させていただき、この日の実施となりました。
中国からの留学生さんが幾人もおられて、時折、三田村先生が流暢な中国語で通訳されていました。中国各地の大学で日本芸術史、日本工芸史、漆芸史、漆芸技法を教えておられたそうです。写真は、おもちゃ映画と映写機について説明しているところ。皆さん熱心に耳を傾けてくださっています。もちろん、手回しのおもちゃ映写機で時代劇のフィルムを映写する体験もしていただきました。
写真は三色分解の話などをしているところ。所狭しと展示している光学玩具の数々に実際に触れて絵が動いて見える様子や、覗くと立体画像に見える道具たちを体験して頂きました。「知ってはいたけれど、実際に体験できるのが良い」とおっしゃってくださった学生さんもおられました。
2階では、フィルムアーカイブの重要性を話し、実際に保存した戦前のアニメーションをご覧いただきました。全体としては前のミュージアムより広いのですが、古い建物の2階なので、安全のため定員は24人程度としていますが、満席になった様子はなかなか良い眺めです。帰りに三田村先生と居原田遥先生に話しましたが、学生さんたちが作った作品を、ぜひこのスクリーンに映し出していろんな方々に見てもらえるよう活用して頂きたいです。最近では「課題で作って、お終い」という学生さんが多いようですが、それではもったいないです。居原田先生は芸術実践研究のほかアジア文化研究もされていて、以前ミャンマーのフィルムアーカイブのことに関わったことがあるとお聞きしました。そうした話を聞く場などにも活かせたらいいなぁと思います。
吉岡先生は“ダゲレオタイプ”など写真のコーナーに注目してくださったようです。学生さんの中には写真の勉強をされている方もおられたようです。上掲写真は、劣化したフィルムの臭いを体感してもらおうと、順次廻しているところ。「こうなる前に何とか救いたいので、『フィルムが見つかったけど、見る道具もないし、臭いし』と言っている人を見かけたら、『捨てないで。活かす方法があります』と声をかけてくださいね」とお願いしました。三田村先生は、吉岡先生の後方棚にずらりと並んでいる映画の箱に注目してくださいました。これらの箱は枚方市在住の水上浩様から寄贈いただいたもので、すべて水上さんの手作りです。詳しくは、以前ブログで書きましたので、お時間があるときにお読みいただければ嬉しいです。手作りケースから溢れんばかりの水口さんの映画愛が感じられることでしょう。
右の棚には幻灯機類、奥に小型映画も含めた映写機が並んでいます。右端に置いている撮影機は今も現役で使えます。連れ合いは、映画に関心がある若い人たちに、ここにある機材を用いて創作する支援ができたらと願っています。
手にして説明しているのは、大映の映画『大魔神』(1966年)で用いたマット画。とても精緻に描かれた絵は、実際に撮影した映像と絵合成して大魔神の大きさを表す特撮に用いたものです。今はCGでいろんな表現ができますが、すべて人の手で作り上げてきた先人たちの工夫の一端を紹介しました。
皆さんとても熱心に聞いてくださったので、こちらとしても大変嬉しい時間でした。モノづくりを志す若者たちに何らかのヒントになれば良いなぁと思います。
皆さん、ご来館誠にありがとうございました‼