おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.10.03column

二つのポスター展

%e3%83%9d%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc%e5%b1%95%e3%81%ae%e4%b8%89%e4%ba%ba1日から「チャップリン・ポスター展+小津安二郎と松竹蒲田のモダン手書きポスター展」を開催しています。初日は、チラシに掲示した松竹蒲田時代の手書きポスターの所有者・竹田章作さん(右端の男性)と、その重要性にいち早く気付き、スキャンして保存資料化して下さった井上優さん(中央)が来館されました。

ミュージアムの建物に以前お住いだった方と親戚だった井上さんが、たまたま新聞記事を読んで6月4日に訪ねてくださいました。雑談をしているうちに、「若いころ映画館の看板の字を書いていたことがある」と話されてから、身を乗り出してあれこれ聞きまくり。「昔は映画館のショーウィンド―に、上映中や、次回上映予告の手書きのポスターを貼っていた。親方の家には、それがたくさん残っている」と言われたのが、そもそもの始まり。8月25日には竹田さんも来館。その時にポスター展開催を持ちかけて、今回の催しが具体化しました。

先日、アメリカのロビー・カード2枚を寄贈いただいた加藤博人さんに教えてもらって、ネットで1920年代lobby card を検索すると、よく似たサイズの映画のポスターがたくさん出てきました。今回のポスターを眺めていると、明らかにその影響が見てとれます。アメリカは昔から紙質にこだわり、広範囲への配布を考えて印刷していましたが、日本にはまだその技術がないので、手書きの一点もの(中には、2枚、3枚ある作品も僅かに含まれます)。描いたのは章作さんの祖父・竹田猪八郎さん(1901~76年)。23、24歳ごろ、勘亭流の字が書けることから大阪から招かれて松竹に入り、南座のまねきを書きますが、それは限られた期間だけの作業。それ以外の時間をスクリーンの裏で劇場の書き物の仕事をしておられました。

これらのポスターは、その当時のもの。大正末~昭和初期は第1回目の映画全盛期。次から次へと映画が公開されて、超多忙。やっただけの収入が入るので支配人より給料が良かったそうです。自分で書いて、自分で貼り、自分で剥がしたから残ったのでしょう。元は800枚ほどあったそうですが、猪八郎さんが始めた「タケマツ画房」を2007(平成19)年に閉めた後、欲しがる関係者に渡されたのか、現存するのは約600枚。その内の一枚が脚本家の依田義賢先生を経て我が家にもありました。今回の展示が契機になって、ほかの作品も見つかれば良いなぁと思います。

これら1928~37年に制作されたポスターで、映画の作品名を知るわけですが、映像が現存していないものがたくさんあります。タイトルは時代を写す鏡でもあり、色使い、字体など、今見てもモダンで、とってもオシャレです。モガ・モボが闊歩していたころの雰囲気が味わえます。自らフォントデザインをしておられる井上さんは「デザインをしている人は、これらのポスターを見るとショックを受けるだろう」と話しておられます。

会場には50点を展示。お二人とも「こうして並んでいるのを見るのは初めて。改めて凄いなぁと思う」とおっしゃっていました。今回は京都国際映画祭2016で、小津安二郎監督の「淑女と髯」、今回発掘されて話題になった「突貫小僧」を上映しますので、「小津安二郎と松竹蒲田」に焦点を当てて選びました。他にも、松竹下加茂、新興キネマ、第一映画など松竹資本の映画館のポスターがありますので、折りに触れ展示替えをして、多くの人に鑑賞していただければと思っています。

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もう一つのチャップリン・ポスター展も、京都国際映画祭で上映するチャップリン特集に連携して開催するものです。同映画祭では、代表作「街の灯」『黄金狂時代」「キッド」「モダン・タイムス」「独裁者」「ライムライト」「サーカス」などが上映されます。

ミュージアムで展示する大判のポスターは、サポーター会員になってくださっている川喜多記念映画文化財団様より寄贈いただいたものです。チャップリンは、1972年にアカデミー名誉賞を受賞し、20年ぶりにアメリカの地を踏みました。日本でも❝ビバ・チャップリン❞特集が組まれましたが、展示するのはその時のポスター群です。併せて、先ごろ正会員になってくださった河田隆史さんに、チャップリンのA3版ポスターと写真集をお借りしました。日本チャップリン協会員だと知ってお願いしましたところ、快諾。おかげで、賑やかな展示になりました。

今回のポスター展を記念して、15日18時から、ミュージアムが所蔵する「チャップリンの画工」「チャップリンの伯爵」「チャップリンの活動屋(道具方)」(以上は35㎜のおもちゃ映画とパテ・ベビーからの断片映像)、「チャップリンの舞台裏」「チャップリンの霊泉」などの短編映画を、鳥飼りょうさんの生演奏付きで上映します。いずれも日本ではほとんど見る機会がない彼の初期短編コメディです。題して「チャップリン初期映画祭」。今回思い切ってキーボードを買いましたので、この日が弾き初め。予算がないのでそれなりのものですが、「弘法筆を選ばず」とお願いしたく…。どんな音がするのか楽しみです。上映後には、交流会もあります。なお、準備の都合上、事前予約をお願いします(一般1500円、正会員1300円)。

以上、貴重なポスター展と演奏付き無声映画上映会のご案内まで。たくさんの方にご覧いただきたいと願っております。

 

 

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