おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2021.10.09column

最近収蔵した本など

これは『アサヒカメラ』(1955年9月号)に掲載された1枚の写真。古本を購入したのは、京都新聞の記事に書かれていた「弁士」と「早﨑治」の2つのキーワードに興味をもったから。

物議を醸した東京オリパラが5日に終了した直後の9月7日と8日の二日にわたって京都新聞に「1964東京五輪ポスター秘話」が掲載され、その副題は「早﨑治とその時代」でした。1964年東京五輪のポスターとして思い浮かぶのは、6人のランナーが一斉に走り出す瞬間を撮った作品。通称「スタート」と呼ばれ、五輪史上に残る名作として今も讃えられています。

この写真を撮ったのが京都出身の当時28歳だった早﨑治さんという方でした。1962年3月、日が暮れた東京の国立競技場で撮影。迫力を出すためにコントラストを強くし、大部分のライトを逆光にしようと計画し、東京中のカメラマンに頭を下げて当時貴重だったストロボを借用して50台を揃え、スタートダッシュは20回以上に及んだそうです。

上掲写真は、その早﨑さんが立命館大学4回生の時の作品。『ヒロシマ』『筑豊の子どもたち』で知られる土門拳さん(1909-90年)のリアリズム写真、絶対非演出の写真論の影響を受けていたそうです。「大阪府寝屋川市の祭で、ちゃんばらか何かの映画を上映していた」と写真部仲間だった方が話しておられます。画面右方向にあるスクリーンに映し出される映像を皆が見つめています。カーボンマイクを握った弁士さんが、説明したり、声色を使って語ったりし、傍にある蓄音機でSPレコードを掛けていたのでしょう。

私が富山の田舎で過した子ども時代も、秋祭りになると神社の境内で即席上映会がありました。それぞれゴザと座布団を持ち寄って座り、スクリーンに見入りましたが、トーキーだったので弁士さんの記憶はありません。この上映会は、村中の楽しみごとでした。この写真からも楽しさが十二分に伝わってきますね。

今、ミュージアムでは、大映京都の特撮で用いられたマット画の原画展をしていますが、その中には1961年日本で最初に70㎜フィルムで撮影された『釈迦』や1966年撮影『大魔神』3部作で用いられたものが含まれています。大変に細かくリアルに描かれています。映画が写実的、リアリズムを追求する姿勢は、昭和を代表する名写真家の主張とも重なります。

こちらは7月に市内の中野さんから寄贈いただいた『懐かしい昭和の映画プログラム(京宝劇場と朝日会館)とブロマイド』(1992年4月4日、京を語る会発行)。同会の田中泰彦さんが編集・解説された立派な装丁本です。今年7月に発行した小冊子6『京都の映画館文化』で、執筆者の竹田章作・立命館大学教授が挙げた参考文献の中にも田中さん執筆「京を語る会」の本3冊が含まれています。

ご近所の辻さんから寄贈いただいた2冊。『黒澤明監督作品「乱」記録’85』(1985年4月15日、ヘラルド・エース発行)は、シェイクスピアの悲劇『リア王』と毛利元就の三子教訓状を元にした日仏合作の歴史映画。当時の日本映画で最大規模となる製作費26億円を投じた黒澤監督最高傑作の一つで、国内外で数々の賞に輝きました。

右は宮沢賢治作品集より『風の又三郎 ガラスのマント』(1989年)のプレスシート。伊藤俊也監督が、賢治のふるさと岩手でロケした作品。原作にはない主役の女の子「かりん」には早勢美里さんが、そして「又三郎」には小林悠さんと、7人の主な子役が3000人の応募者の中から選ばれたそうです。

そして、最後に新野敏也・喜劇映画研究会代表から寄贈頂いたUCカードマガジン『てんとう虫』2021年10月号。特集「エジソンは閃く」の中で、新野代表は「映画をめぐる仁義なき戦い」のタイトルで執筆。伝記でよく知られた“発明王エジソン”とはちょっと違うエジソンを紹介。見出しで言えば「映画産業ビジネス独占の野望を抱く」「特許権や使用権を主張し、ロイヤリティを要求」と訴訟王とも揶揄されたエジソンの映画先駆者たちとの死闘のあれこれを。その一面として

 ずばり「カネよこさな機材もフィルムもあかんで!」と脅したわけ。

と、何故かここだけ関西弁で書かれたあたり、正直ウ~ム!と唸ってしまいますけど。。。

特集とあって、科学技術ジャーナリストで作家の石川憲二さんが人物伝①「発明家へのステップとなった1冊の本」②「電球の発明は組織と資金力のおかげ?」③「エジソンにとって最大の発明とは」、そして「名言で読み解くエジソンの発明・発想の真髄」、さらに「生涯の友、自動車王フォード」と執筆が続き、途中で作家の新戸雅章ステラ研究所所長さんの「もう一人の天才発明家ニコラ・ステラ」と新野さんの前述寄稿文が掲載され、最後に栃木県壬生町おもちゃのまちのバンダイミュージアム内にあるエジソンミュージアムが紹介されています。コロナ前に同じ「壬生」の地名が付くバンダイミュージアムの存在を知って、いつか訪ねたいと思っていた施設、尚更行ってみたくなりました。

不勉強な私は、ニコラ・ステラを初めて知りました。現在の電力システムや無線システムは彼の発明を基礎としていて、1999年アメリカのLIFE誌が選んだ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に数えられているとありましたので、ネット検索すると彼は57番目。エジソンはこの1番目で、日本はただ一人、葛飾北斎が86番目に載っています。またもやウ~ム。ともあれ、新野さんが送ってくださった冊子のおかげで、ひとつ賢くなりました。

ここで紹介した本は、お声がけ頂ければご覧になれます。遠慮なく、どうぞ‼

 

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