おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2016.01.20column

ドイツから届いた『吸血鬼ノスフェラトゥ』

スキャン_20160120 (2)ドイツの無声映画の伴奏家で、『何が彼女をそうさせたか』の作曲 と演奏をしてくれたギュンター・A・ブーフヴァルトさんから、DVD『吸血鬼ノスフェラトゥ』が届きました。1922年のドイツ映画、F・W(フリードリッヒ・ヴェルヘルム)・ムルナウが演出した作品です。ムルナウが創作した吸血鬼の元祖 ノスフェラトゥは、ヨーロッパ中にペスト菌を運ぶ鼠をイメージした異様な風貌をしています。船員がすべて死滅する無人帆船のダイナミックな映像は、より不気味さを盛り上げ、名シーンになっています。ドイツ表現主義映画の傑作の一つです。送っていただいたDVDは、昨年の3月17日に、彼の地元のフライブルグ劇場で演奏された時のもの。

彼は、イタリアのポルデノーネ無声映画祭やボローニア復元映画祭、ドイツ・ボン映画祭などの常連演奏家で、この分野の第一人者です。自らサイレント・ムービー・ミュージック・カンパニーを立ち上 げ、世界各地で演奏を行っています。

彼の伴奏は、仲間での演奏の場合はピアノを弾き、全体の指揮にあたりますが、一人で伴奏する場合は、ピアノとバイオリンを同時に奏でるという超絶技巧の離れ業を持っています。1999年に初めてポルデノーネで、『何が彼女をそうさせたか』を演奏してくれた時、ピアノ伴奏の合間に、どこからかバイオ リンの音色が聞こえてきました。観客がオーケストラ・ブースを覗き込むと、バイオリンもブーフヴァルトが弾いているというので、大変話題になりました。以 降、彼は映画祭の常連演奏家になったというエピソードがあります。

京都映画祭でも、初期は常連のように来てくれ、無声映画の復元作 品には必ず演奏してくれました。とりわけ、京都駅の大階段前で行った『メトロポリス』は、完全復元版の世界初上映演奏ということもあり話題になりました。前回来日した際に現在の京都駅ビルが完成していて、耳の傍で「メトロポリス・・・メトロポリス・・・」とささやくので、同駅ビルがメトロポリスのような未来的なデザインと面白がっているのかと思っていましたら、「ここで『メトロポリス』を上映しろ」という意味だと分かり、2001年の第3回京都映画祭で実現したものです。

今回の『吸血鬼ノスフェラトゥ』は、きっと彼の自信作‼  ひょっとしたら、「京都国際映画祭で演奏させろ」という意味なのかもしれません。

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