2022.11.23column
11月22日香港からのお客様
昨朝の京都鴨川の景色。撮影したのは龔 秋曦さん。愛称はAKIさん。宿泊したホテルから当館へ向かう途中目にした京都の秋景色だそうです。聞けばかつて同志社大学に留学されていたことがあるそうですが、紅葉を見る前に香港に戻られたので、初めてご覧になった秋色の京都。この後二条城周辺の紅葉も眺めながら10時に来館。
夕べ、彼女のスマホのセルフタイマーで撮った写真を送って貰いました。
記念に私も撮って。話をしているうちに、フィルムアーカイブを大切だと思う同志と思い、と同時に香港に素敵な娘ができたような嬉しい気持ちにもなりました。
彼女は香港電影資料館で活動した時期もありましたが、2018年仲間たちとREEL TO REELという非営利団体を創設されました。公開上映、教育プログラム、映画のデジタル化と修復プロジェクトをすることで、映画の保存を促進し、香港の視聴覚遺産へのアクセスを拡大することを目的としています。
その成果の一つが、A5版サイズの小冊子『影像溯源』の発行です。2021年の号には、今年夏に知り合った香港の大学で教鞭をとる陳 智廷さんの論考「何藩與六十年代香港實驗電影」も載っていました。香港電影資料館のように35ミリで撮られた名作を残す活動も大切ですが、アマチュアが撮影したフィルムの中にも優れた作品があると考えて、それらを発掘して保存する取り組みを日々されています。こうした活動をこの先も継続していくために、今回HONG KONG ARTS DEVELOPMENT COUNILから助成を得て、単独で調査活動に来日されました。
その調査対象は、日本の民営フィルムアーカイブ、フィルムを収集・保存・修復と公開をしている非営利の機関を訪問して、どのような組織をどのように維持しているか、さらに上映企画や復元の活動の考え方、やり方を聞き取り調査すること。その対象の中に、こんなちっぽけな施設も加えて訪ねて下さったことが先ずは嬉しいです。
この2年間は家賃確保ができているそうですが、その後のことを考えて不安に思っておられるのは全くうちも同じ。あと2年でこの賃貸物件の契約が切れるので、その先をどうするかがいつも頭を占めて悩む日々です。うちが抱えている悩みも打ち明け、お互いにそれでも何とか道を探って少しでも貴重な映像を次世代に継承する活動に頑張りましょうと励まし合いました。
その夜、Twitterの記事で東京現像所が来年11月30日で事業終了することをニュースで知ってビックリしました。
2017年8月25~27日東京を会場に実施した第12回映画の復元と保存に関するワークショップの折に、東京現像所の渡辺明男さんたちに大変尽力して頂いたことを思い出しながら、しみじみしました。写真はその時東宝スタジオを見学した時の一枚。この後東京現像所の試写室も見せていただきました。こうしたことを思い出しながら、「時代だなぁ」と淋しく思いました。
連れ合いは「東京現像所も東宝傘下で、デジタル化の流れは避けられないと考えていました。今はフィルム業務はIMAGICAの大阪だけですが、五反田も整理し、大阪をやめるという噂は以前からありました。もう海外のように国立のアーカイブが現像所を持つ時期になったのかもしれません。フィルムでの保存は世界的な傾向ですから。コダックもアーカイブ用フィルムは一般には販売せず、アーカイブに直接納品しているそうです。映画フィルムを保管している施設や団体が手を組み、国に訴える以外にないと思います。でもデジタル化が国策で、過去のものをきちんと保存することに関心がない政治家たちを説得するのは難しいでしょう。海外のアーカイブにしか映画フィルムが残らなくなるかもしれません。時代です。」と知り合いに書いていました。
ともあれ、DI(デジタルによる映画の色彩などの調整)、アニメ・テレビ作品の編集事業、映像デジタルアーカイブ事業は別組織が引き継ぐというのが救いです。有名な作品ばかりではなく、他のフィルムにも価値があると考えて、それらを発掘して保存しようと努力するREAL TO REALも同様でしょうが、これから先の楽観は許されない時代を迎えていると思います。
明後日はシンガポールに移動して取材を続けるというAKIさんに、この日京都新聞朝刊1面に載っていた東福寺の美しい紅葉を見せてあげたいと思いましたが、次の予定があるというので叶わず・・・ならばと、彼女の目の代わりに写真を撮ってきて見せてあげようと思って、別れを惜しみつつ見送ってから東福寺へ向かいました。その様子はこちらのブログで書きました。